第九話 ガラポン洞窟の最奥にて

「うひゃー、でっけぇのがいる! どうするよルイン」


 扉を開けると、その先……目の前に、とてつもなくでかいけろりんがいた。


「どうするっていっても、もう戦うしかないだろ……思いっきりメルザの方みてるぞ」

「ぱみゅー! ぱみゅぱーみゅ」


 扉に入ってしばらく進んだところで、すごい水音を聞きながらその奥を進む。

 

 最奥部にそいつがいる。先ほど倒したけろりんの五十倍はあろうかという巨体。

 しかもそいつが見える距離に近づいた途端、こちらを向いて

ドシンドシンと飛び跳ねだしたのだ。

 

 どう見てもかかって来いと合図しているように見える。

 逃げるにしても扉が閉まってたら、細い通路で戦う事になるし不利だ。


「メルザ、土斗で防御する場所を何か所か造ってくれ。さっきの奴みたいに水鉄砲を

撃ってくるかもしれない。

あと、頭のいい個体は歌で魅了してくるかもしれないから気をつけろ! 何をどう

気を付ければいいかはわからないが」


 メルザは頷くと、ばらけた範囲に土斗で固めた場所を造る。

 俺はその後ろに隠れながら、でかけろりん……に攻撃できる隙を伺う。


 でかけろりんの水鉄砲はかなりの威力で、メルザが造ってくれた土斗の防壁を

一発で破壊してしまう。

 ただ、連発はできないのか一撃撃ってからの間がある。

 俺はその間に次の岩場へと移動する。

 メルザは土斗で防御壁を造るのに手一杯で、奴には一切攻撃する暇がない。


 奴がメルザの方を向いているのを確認し、俺は燃斗を放つ。

 数発ヒットさせたが、奴の巨大な葉から降る雨のせいで、あまり効果があるようには見えない。

 やはり至近距離からの直接攻撃を行うしかない。


「メルザ! 最初のけろりんみたいにまた奴を挑発できるか?」

「任せとけ! やーいやーい! お前なんかへなちょこだー!」

 「ぱみゅぱみゅっぱみゅー」


 メルザはまた同じように挑発行動をとる。

 それを見てパモも真似しているようだ。

 でかけろりんは明らかに怒っている……あれで怒るってどんだけちょろいんだよ! 


 俺は横からでかけろりんの様子を伺うが、でかけろりんがこちらへ特攻する気配が感じられない。

 しばらくして奴は突然叫びだした! 


「ごっけけぇーっげっこげこげっこっこーゅごけーっこげこげこげっこっこー」


 まるで炭坑節のように奴は歌いだす。

 前世で小さい頃に聞いたような……懐かしい。

 いや懐かしんでいる場合じゃなかった! 歌っているが俺はなんともない。


「げっここーげこげこーげっここーげこー」

「げこぉー!」

「ぱこぉー!」


 おいお前ら! 一緒にやってる場合か! と叫びたくなったが……あれ? もしかして

メルザもパモも魅了されてるんじゃ? 

 無茶苦茶歌っているでかけろりんは隙だらけだが、放置して攻撃していいものか……まぁいいか。

 厄介な葉っぱを切れれば直接燃斗を当てることもできるし。

 メルザとパモが俺を攻撃してきても困るしな。


 ささっと距離を詰めて近づくと、でかけろりんの持っているつるを切り落とした。

 ぽとりとでかい葉っぱが落ちて降っていた雨もぱたりと止む。


「ゴ、ゴケェ!? ゴケゴーケー!?」


 こいつ、なんで歌が効いてないんだ? とでもいいたげに俺の方を見る。

 俺はそのまま容赦なく奴の腹に燃斗を叩き込みながら、シミターを振りかざした。

 でかけろりんは「けごぉー!」と怒り、水鉄砲を俺に向けて放った。


 距離が近すぎる……俺は両手を交差させて受け止めるが、勢いで後ろに吹っ飛ばされた。


 「ゲッゲッゲッゲッ」と、俺に一発くらわせたのが嬉しかったのか、奴は笑っている様だった。


 痛みはそれほどでもない。シミターを構えて燃斗を打ちつつ左周りに近づいた。


「横凪ぎ!」 


 こっちに意識をそらすため、俺は少し恥ずかしいが、叫びながらシミターを振るう。


「げっこぉおおおおおおおお!」


 俺の方を向いて再度水鉄砲を撃とうとしたでかけろりん……は水鉄砲を

撃たずその場に倒れこんだ。


「ナイスだメルザ!」


 メルザは腰に手をあてて、「にははー!」と笑っている。

 パもも「ぱみゅー」と可愛らしく踊っている。


 俺たち三人の連携プレイで圧勝だったな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る