第七話 宝箱の中身は

 俺はけろりんが落とした薄い板を拾い上げた。


「おぉ、それをはめると開くのか!? けどその前にこいつを焼いて喰おーぜ! 久しぶりの肉だ!」


 そういうとメルザは「肉肉ー」と歌いだす。

 これ、本当に喰うつもりか? 

 カエルなら食用だが……そういえばさっき何かが見たときに、レインフロッグって見えた気がしたけど。

 宝箱を持ち上げて少し動かすと、 けろりんは完全に宝箱の下敷きとなり、伸びていた。

 メルザは土斗で土をコの字に固めて中央にけろりんを置き、そのまま焼こうとしている。


 急いで止めて、先に洗うように指示した。

 メルザは渋々指示通りに動いてけろりんを洗い、燃斗でけろりんを丸焼きにした。 

 全然香ばしくない香りがする。


「ルイン、その板っきれちょっと貸してくれよ。それに乗せて喰うから」


 俺はメルザに板を渡すと、メルザが喰うのを待っていた。


「ん? ルインは喰わねーのか? 美味いぞ肉! ちょっとぷよぷよしてるけど」


 そういいながら口の中いっぱいにほおばった口から少し足が出ている。

 やめてくれ……少女の口からカエルみたいな足って誰得なんだよ。


「ふー、うまかった。この板っきれ渡すからよ。宝箱開けてくれ!」


 メルザはそういうと、俺に板を渡して燃斗と氷斗を上手く使って水を飲んでいた。

 俺も少し水を貰って飲む。


「それじゃ開けるぞメルザ。何が出るかはわからないから一応用心してくれ」


 メルザは「おう!」と言うと、少し離れたところから何が出てもいいように右手を前に出す。


 宝箱のへこみに板をはめたらぴったりのサイズだった。 

 カシャという音がなり、ゆっくりと宝箱の蓋を開く。


「ぱみゅー! ぱぁっぷ!」


 すると、中から突然白い綿菓子のような奴が飛び出してきた。

 綿菓子に足が生えているような存在。

 いや足というにはあまりに短い。脚がない。足だけだ。しかしこれはなんとも可愛い奴だ。


「うわ、なんだこいつ! ひっつくな! あ、でも柔らかいしあったけーな。お前。

こいつはけろりんみたいに襲ってこないな」


 謎の白い綿菓子生物はメルザにすり寄っている。

 そして俺の足下にも来て、すり寄ってみせる。

 宝箱に閉じ込められていて出れずにいたから、お礼を言っているのだろうか? 


「メルザ、こいつどうしよう。一応お宝……なのか?」

「わかんねーけど喰えそうにないし、せっかく手に入れたんだから持って帰ろうぜ。

白くてふわふわもふもふしててぱみゅーとか言ってるから……パモフ……パモだな!」


 さすが少女、言葉遣いに似合わず可愛らしい名前をお付けになるな。パモか。


「わかった。お前は今日からパモだ、よろしくな!」


 そう言いながら俺はパモを持ち上げる。

 本人も理解しているのか気に入ったようだ。

 しかし本当にふわふわで柔らかいな。足はあるから歩けるのか? 


「ぱみゅー」


 パモが入っていた宝箱には、まだ幾つかの物が入っていた。

 そういえばさっきけろりんを視ていた時のやり方で

これらを見れば情報がわかるのか……? 

 宝箱の中に意識を集中させてみる。


宝箱

様々な用途に使用できるものが入っている事がある

大抵は複数

何もせず開く物もあるが

大抵はキーとなる物が必要

トラップがある場合もあるので注意



 宝箱を見たつもりはなかったが、トラップがある場合もあるのか。

 気を付けないと。改めて中身に意識を集中する。


シミターキャット製シミター(燃斗付与II)【セミユニークウェポン】

剣歯虎製の三日月刀

絶滅種のため価値は高い 

幻燃斗が付与されている

扱うには曲刀の適正と修練が必要

使用するたびに付与魔法の効果は薄れる


ブレインブレスレット 【マジックアイテム】

身に着けたものの知力を高めると言われる装飾具

腕にはめると適したサイズに変形する

壊れやすいので扱いには注意が必要


水かけおりのネックレス 【ノーマルアクセサリ】

レインフロッグお気に入りのアクセサリ

水への耐性がわずかにあがる

可愛いと評判の一品だがありふれているので価値は低い

扱いが悪いとすぐ壊れる



幻薬(極小)

対象をわずかに癒すが効果は非常に小さい

使用すると無くなる




 宝箱には以上のものが入っているようだ。


 俺は改めてこの能力に驚く。

 これはもしかして誰にでもできるものではないのでは? 

 前世から現世まで視力を失っていた俺に出来ることなのかもしれない。

 メルザに聞いてみたが、メルザも驚いていた。やはり特別な力なのだろう。


「ルイン、お前すげーじゃねーか! 物の価値とかいろいろわかるんだろ? 

これなら俺たちお宝探し放題じゃねーか! にははっ」


 メルザはとても喜び俺に抱きついた。

 それを見ていたパモも飛びついてくる。


「二人ともちょっと落ち着けって! このブレスレットはメルザが付けてくれ。

パモはこの水かけおりのネックレスを。

俺はこのシミターで何かあったら戦うようにするから、使わせてもらうぞ」


 それぞれに道具を渡すと、シミターを軽く振ってみる。

 適性が無いと使えないって情報だったよな。それに燃斗が付与されてるって。

 使おうとして使えなかった燃斗……これで使えるようになるのか? 

 試しにシミターを構えて念じ、シミターを振るってみると……。

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