第22話

どうやら、誕生日会的なのは細々としていたらしい。俺が鈍感すぎて気付いていなかっただけ。


来年から祝日として俺の誕生を祝ってくれるらしい。申し訳ない気持ちがあったが、祝ってくれる人達にもリターンがあるから気にしなくて良いかな?と思った。


最近、俺の周りに少し変化があった。


「なんか、最近外の人が増えた?」

「多分、ダンナ目当てね。」

「正確には、ダンナの子種目当てよ。」

「あと、絶倫も。」

「なんでまた?」

「多分、あの日にダンナと私達のお楽しみを外に伝えた人が居たのかも。」

「大変なことになった。」

「ダンナ、1人になっちゃダメよ。子供達だけでもダメよ。」

「心配し過ぎな気がするが分かったよ。…そういえば、さ。なんでこの都市に男が居ないんだ?」

「「「…」」」

「教えてもらえるか?」

「…ダンナ、聞いても私達を見捨てない?」

「何を言ってるんだ?お前達を看取るまで離れないぞ。子供達が独り立ちして心配いらなくなるまで居るぞ。…時折、外の人が来てる時にソワソワしてたのはそういうことを心配していたのか?」

「そうよ。いつか、ダンナに見捨てられるんじゃないかって。そんなことはないと思っていたわ。でもね、この都市にいた男はある日突然何処かに消えたの。」

「行先言わずに?男が何処かに行くなんて注目されて消えるなんて有り得ないだろ。」

「でも、本当にある日突然煙のように消えるの。」

「…誘拐されたとは?」

「もちろん、そう考えて信用を失ってでも外の人の車や船を搜索したけど見つからなかった。その時のことがあって商人には足元を見られてかなりの金額で購入させられているわ。」

「お前達を疑ってはいないが、商人がかなり怪しいな。嫌な思いしたからってそんな商売しなくても良いのに。ちなみに、その商人は何処の国の者だ?」

「分からないわ。」

「分からない?」

「金髪白人であるのは分かるわ。でも常にサングラスをしていて瞳の色が分からない。言葉も何故かこちらの言葉を流暢に話すの。いつも、帽子を被っていてダボついた柄物のシャツを着ているけど私達のように古いものではない。下は作業用のスラックスに革靴を履いているわ。第一印象は胡散臭いわ。」


何処の武器商人だよ。関わり合いたくないなぁ。


「あ、俺関わり合いたくないわソイツと。」

「そう言ってくれて安心した。」

「謎は残るが分からないんじゃ仕方ないよな。」


そんなことを話した数日後に、胡散臭い白人の女に遭遇した。聞いていた通りの格好してやがった。


麦わら帽子、サングラス、大きめのアロハシャツ、白っぽい作業用スラックス、不釣り合いな革靴。


俺は足の速い子供に彼女達と他の大人も呼びに行ってもらった。俺、鉄壁の防御力だけど力がないし技術ないから取り押さえられたら即終わりだ。だから、早く来て!


「你好」

「何語だ?」


女商人が話しかけてきたが何語か素で分からなくて即答しちまった。ん?ニイハオ?あ、中国語か!え、俺中国人に見えたの?女商人の目、節穴!


女商人は俺の反応が良くないことに首を傾げつつヘラヘラしながら


「안녕하세요」

「ナマステー」


ふははは!アホみたいに固まってやがる!韓国語で挨拶したのに返しがまさかのナマステーだとは思わなかったよな!ははは、バーカバーカ!


「…まさか、そちらの国の方だとは思わず失礼しました。」

「いんや?俺は何処の国の者でもないぞ?そっちが勝手に勘違いしただけだろ?」

「随分とソマリ語が聞き取りやすいですね。」

「そりゃあ、数十年暮らせば普通に喋れるだろ。それより俺に何の用だ?俺、アンタみたいな胡散臭い女嫌いなんだよな。」

「私が何か気に触るようなことをしましたか?」

「俺の問題だから気にすんな。アンタには関係ないね。」

「そう言わずに、今日このように出会えたのも何かの縁ではないでしょうか?そうだ、あちらに私の船があります。あちらで少し話しませんか?」

「話すことがあるなら今すぐ、簡潔に分かり易く此処で言えば良いだろう。回りくどいのは俺は好きじゃない。それとも、連れ込まないと出来ない話か?それなら二度と話しかけんな。」

「…アナタねぇ、私が優しく言ってるうちに従った方がイイわよ?」


おー、めっちゃ怒ってますよアピールしてやがる。前世では面倒臭い女の代表格だったが今世でも同じじゃないのか?


「怒ってもいないのに、アピールしていても面倒臭い女だと思われるぞ。」

「…」


あらら、フリーズしちまった。追い討ちかけるか。


「それと、友好的な態度じゃない相手に自分のテリトリーに誘うのは自分が不審者と思われても良いってアピールか?変に粘って悪印象を与えてもお互いにイライラすることになるだろ。人付き合いが下手か?もしくは、変な勧誘をされた経験がないのか?アレ、経験するとアンタみたいなのは要警戒対象になるんだけどな。…分からないか。はぁ」

「…」


言いたい放題言ったけど、女商人が黙ってるのが不気味。


「…アナタ、欲しいものはないかしら?」

「欲しいものか?それなら、アンタを今すぐ消す方法かな?でも、アンタを消すのに核ミサイルあっても消せなさそうだけど。」

「私、普通の人間よ?流石に死ぬわ。」

「どうだかな。中身空っぽのを用意しそうじゃん。」

「…」

「図星かよ。他に欲しいものはないな。物は価値が変動するし。人は一生ではないし。じゃあな。二度と会わないことを願うよ。」

「待ちなさい。」


女商人に背を向けて帰ろうとしたが呼び止められてしまう。なんなんだよ、ったく。仕方ないので顔だけ女商人の方に振り返ると、女商人は銃口を俺に向けていた。


「…そんなおもちゃ出さないと何も出来ないのか?」

「おもちゃかどうか、試そうかしら?」

「おう、試してみろ。ほれ、撃ってみろよ。」

「え、本物よ!当たったら痛いどころじゃないわよ!」

「だから?そんなことで俺がビビるとでも?んなおもちゃでどうこう出来ると思ってんならアンタ、相当のバカだな。そんなので従うのは1部の弱者だけだ。今まで、そうやって好き放題していたのか知らんが俺には通用しないぞ。バーカ」

「言わせておけば!」パァン!


本当に撃ちやがった。バカ女は俺の脚に一発当てたようだが、俺無傷。ノーダメージ。当たった瞬間も何か当たった?くらいしか感じなかった。


「やっぱりおもちゃだったか。アホらしい。」

「そ、そんなはずは!!」パァン!パァン!パァン!


信じられないものを見たというような表情をしたバカ女が乱射してきた。


腰、背中、左肩と出鱈目にしちゃ正確に当ててくるバカ女。射撃の腕は一流だな。


「知っているか?中国の秘境には銃弾を完全に防ぐ方法があるというのを。俺のは見様見真似で本来のものとは明らかに弱い。お前がそんなおもちゃで遊んでる間にも中国の達人達は今も最強の兵士を作ってる。こんなところで油を売っていていいのか?」

「…」


はい、口からのデマカセだよ!バーカ!だが、俺という存在がいるから嘘とは思えないよな?ふふふ、さぁどうする?俺的にはしばらく来んな。


「…用事を思い出したわ。邪魔したわね。」

「本当にな。二度とアンタとは会わないことが俺唯一無二の幸せだ。」

「…」


めっちゃ渋い顔して去っていくバカ女。騙されてやんの!ははは


「…ダンナ」

「なんとかなったぜ。」

「無茶しすぎよ。」

「撃たれた時、心臓が止まるかと思ったよ。」

「心配させて悪かったな。」


バカ女が完全に居なくなった時に近くで俺とバカ女とのやり取りを黙って見ていた彼女達が現れた。


流石に、銃持ったバカ女と俺との間に彼女達を立たせるわけにいかないからな。何はともあれ、バカ女はしばらく来ないだろう。というか、二度と来んな。あとで塩まいておくか。

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