1−12 魔法使いとの再会

 でも人の言葉が喋れるようになったのなら、これはチャンス!自分は本当は人間で、呪いにかけられて蛙にされたことを伝えなければ!ついでに沢山感謝してもらえれば、いずれ元の姿に戻れることも……!


「あ、あの……ケロケロッ‼」


 言葉を話そうとした途端、またしても蛙の鳴き声に変わってしまった。


「ケローッ‼」


(そんなーっ‼)


「ケロケロ?!ケロケロケロケロ!ケロケローッ‼」


(嘘でしょう?!何でなのよ!どうしてよーっ‼)


 再びケロケロとしか鳴けなくなった私を見て首を傾げるのはクロードと庭師さん。


「あれ?おかしいな……ついさっき人の言葉を話していたと思ったけど……」


「はい、私も人の言葉を聞いた気がします」


クロードと庭師さんが相談を始めた。


「でも今はケロケロとしか鳴かないなぁ」


「ええ、妙ですよね。空耳かも知れませんね」


『空耳のはず無いでしょう?!ほんとに人の言葉を話したでしょう?!」


「うん、やっぱりベンの言う通り空耳だったんだ。大体人の言葉を話せる蛙がこの世にいるはずないしね」


 庭師さんの話に納得してしまうクロード。


『ええっ!嘘でしょうっ!何で空耳でまとめちゃうのよーっ‼』


 半ば怒りを込めてケロケロと鳴くと、再び余計なことを言う庭師さん。


「クロード様。蛙さんが餌を欲しがっているようですよ?」


「あ、そうだ。ペンダントを見つけてくれたら、とびきりの餌をあげるよと約束していたっけね。よし、それじゃ白蛙さん。ここで待っていてくれるかな?餌を持ってきてあげるよ」


『確かに餌は欲しいけど、私はそんな事言ってないってば‼」


「クロード様、私も行きましょう」


「うん、そうだね。2人で行こう。それじゃまたね。白蛙さん」



「ケロッ‼ケロケロケロッ‼」


(ちょっと‼それより感謝してよ‼)


 しかし私の願いも虚しく、クロードと庭師さんは私に背を向けると談笑しながら去っていく。


『こらーっ‼勝手に行かないでよーっ!!』


 思わずケロケロと叫んだ時――。



「やぁ、サファイア。元気そうだね?」


 突然真上から声が降ってきて、気づけば目の前の景色が一瞬で変わった。




「え?」


 気づけば私は高い木の枝の上に乗っており、目の前にはあの怪しげな魔法使いが同じく枝の上に乗っていた。

 そのあまりの高さに身の毛がよだつ。


「きゃーっ‼高いっ!怖いっ!って……あれ?!」


 何と驚くべきことに、今私の口からは人の言葉が発せられているではないか。


「良かったね?サファイア。ようやく人の言葉が話せる蛙になれたんだね?」


 黒マント姿の胡散臭い魔法使いは私を見て、口元に笑みを浮かべた――。

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