7.モモ批評会

  

 

「女性というものは、案外とサッパリした顔立ちなのだな」

「書物に寄れば胸と尻が異様に膨らんでいるそうだが、モモ嬢は違うみたいだぞ」

「髪だって長くてツヤツヤだと聞いていたのに、これほど短いとは」

  


 鼻血を出したことが恥ずかしくて、

 そのまま倒れたフリをしてみたのだが。


 気付けば誰かに抱きかかえられ、

 そのまま別室で寝かされてしまったワケで。


 いやあ、まさかそこで私の批評会を始めるとは思いもしませんでしたわ。しかも、悲しいことに低評価。のっぺり顔で寸胴、髪もボブと言い張ってみたいけど実際はおかっぱザンバラで申し訳ないっ。


 あっ、それよりも。

 全世界の女性達にも謝っておかなくては。

 

 ごめんなさい。


 私が女代表になってしまったせいで、明らかに男性よりも女性の方が劣っている感じになってしまいました。でも、この人達に容姿バトルで勝つなんて絶対にムリでしょ?!だって、王族や高位貴族の血を引いたサラブレッドなんだよっ。容姿端麗なんて、そんなの標準装備に決まってるし!


 というか、この状況がいつまで続きますか?いい加減、ひとりにして欲しいんですけど。ったく、それにしてもこのベッド、とんでもなくフカフカだな。村の仮住まいに設置されていた簡易ベッドと比べれば、そりゃもう各段に…



「すぴー、すぴょぴょぴょ」


 


 寝た。

 ええ、私ってば寝てしまいました。

 

 緊張感が足りないと、笑いたければ笑って。


 うーん、でも、こんな急激に眠くなるなんておかしいような。もしかして、村からこちらへ転移したとき妙に揺れたから、あれで酔ってしまったのだろうか。おかしなことに意識はハッキリしていて、なのに、身体だけがグッタリとして動けなくなっている感じなのだ。



「おい、まさか寝てるのか?」

「ぷぷっ、どうやら熟睡みたいだぞ」

「じゃあ、鼻血だけでも拭いてやろう」


 どうやらこの部屋には、

 うら若き乙女と若い3人しかいないらしい。


 それもどうかと思うが、そもそもこの中の誰かと私をくっつけるのが目的だから、咎める人がいなくて当然なのだろう。


 ん??

 ちょっと待って!!


 鼻血を拭くということは、近距離まで接近するということで。まさか、この負け犬の顔をじっくり観察したりしませんよね?!


「…ちいさい」

「全体的にこじんまりと纏まっているんだな」

「あはは、すげえ!手足がメチャ短いぞ」


 ひどい。なんだか小学生の女児に対する感想にしか聞こえないんですけど。


「なあ、…俺はやっぱり遠慮しておくよ」

「何を言うんだ、アーサーヴェルト!王族に近いお前の血こそが優先して残されるべきなのに!」

「そうだよ、どうせなら侯爵家の出自であるこのオレを真っ先に除外して欲しい」


「違うんだ、クロノスゾネス。この棒切れみたいな女をどうこうするなんて、想像つかないんだよ」

「それは俺もだ。むしろ、お前やニールニアロウの方を抱けと言われた方がシックリくる」

「同感だな。ははっ、お前達の方が魅力的に映ってしまうなんて、オレもヤキが回ったもんだ」


 まったく容赦ないな。一見、譲り合っているように見せながら、その実、押し付け合ってるよね?くそう、これでも向こうの世界では結構モテてたんだぞ!私に告白してきた麻生くんと松ケ下くんに土下座して謝れ! 


 ふごふご。


 どうやら誰かが鼻血を拭いてくださっているらしい。その力加減があまりにもソフト過ぎて、擽ったい。暫くしてドアが開き…どうやら3人とも出て行ったようだ。


 それから数分後、誰かが戻ってきた気配がして。

 突然、頬に温かな手の感触が。


 ──優しく優しく撫でてくれる、

 貴方はだあれ?


「ふふっ、本当に可愛いなあ。大好きだよ、モモ」


 好き…なの?

 あんなに酷いことを言われていた、この私を?


「ああ、もう時間だ。また後で会おう」


 待って、行かないで。

 貴方が誰なのか教えてよ。



 バタン。



 無情にもドアが閉まる音がして、

 私はそのまま眠りの世界へと落ちてしまった。

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