取り締まり強化
危険走行が多発し、警告をしても改善されないため、警察は全国で自転車の取り締まりを強化した。
危険走行を確認できたら、その場で違反切符を切る――、自転車も立派な車両だ。
そして、取り締まりを始めて一時間もしない内に、問題が起きた。
……手が足らない。
見えるのは長蛇の列だった。
自転車、自転車、自転車……、車道にはみ出て車の通行を邪魔してしまうほどの違反者が続出したのだ。
公園を貸し切り、広い場所に移っても、想定以上の違反者が次々とやってくるため、準備した広い場所からはみ出てしまう。
数人では列を整えられないため、十人以上の警察が出動し、違反者の列を整備している……全国で、だ。
そして警察も人間だ、目を盗んで逃げる違反者もいるが、それに気付けない時もある。気づいたところで、追えば、並んでいた別の違反者が逃げるのを許してしまう……、分かっていても列の整備から抜けることはできなかった。
「……人が足らない。人員を増やすことはできないのか?」
「無理です、どこも手一杯で――全国各地で強盗や万引きが多発しています。
警察が出払っているのをいいことに、各地で犯罪者が羽を伸ばしてしまって――」
普段は腰を上げない重鎮が現場に出ているらしい。
手が足らな過ぎる……。
「……なあ、まだかよ、もう帰ってもいいか?」
「ダメですよ、違反したんですから、切符を切って、警告文書をお渡しして――」
「取り締まるのはいいけどさあ、この調子じゃあ、どんどん出てくるぞ? この長蛇の列をさばけるのか? もうちょっと違反の基準を下げてもいいんじゃないか?
……これだけ続出している時点で、違反であることが周知されていないってことじゃねえか。まずはそこを強化してからだろ……。
別に、信号無視をしたわけじゃない……そりゃまあ、危険な運転だったかもしれないけどさあ……、車やバイクみたいに、ちゃんとルールを固めて周知させてからやってくれ。
急に言われても、こっちだって癖ってものがある。そう簡単にハンドルは切れないんだよ」
長蛇の列が減っていた。
ただし、それは警察が列をさばいたわけではなく、逃走を許したということだ。
そして、警官の一人が違反の基準を下げた……、
新たな違反者が捕まらなければ、列は増えたりしない。
「取り締まるのが早かったんだろうな」
「誰かが亡くなってからでは遅いんですよ……っ!!」
「なら、早くルールを固めるんだな。結局、動ける隙間があるから違反者は腕を伸ばすんだ。腕も伸ばせないくらいぎゅうぎゅうに固めてしまえば、違反なんて起こせないんだよ」
… …
「できるからやるんだ、できなければやらない――他人の良心に期待するなよ、誰もが楽をしたがるし、自分だけ甘い蜜を吸いたいって思ってるんだから」
―― 完 ――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます