千年後の兄さんへ。

音佐りんご。

18。

 おはよう、兄さん。久しぶり! 元気にしてる? ……って、そりゃ元気にしてるよね! その為に兄さんとお別れしたんだもん。ねぇ憶えてる?

 ――あの日のこと。

 まぁ、兄さんにとっては昨日のことかも知れないけど、私にとっては半年前のことだからさ。

 でも憶えてるよ、忘れられない。

 一月の末に、兄さんが突然倒れて、それで『あの病気』だって分かって……。

 突然だったよね。うん……、突然だった。

 私、はじめて聞いたときこれが本当に兄さんに、ううん、私達の身に起きてることって分からなかった。だって、そうでしょ?

 映画じゃん。

 馬鹿でしょ。ほんと馬鹿。ありえないって。

 でも、どれだけ馬鹿って言ったって、分かってた。だから、決めたの。私が。

 ごめんね、兄さんが嫌がってたの知ってた。父さんと母さんも迷ってた。兄さん、たぶん今、すごい戸惑ってると思う。もしかしたら怒ってる、よね?

 ごめんね、本当に、ごめん、ごめん…………。

でも、仕方がね、なかった。……から、私を恨んでよ。兄さん。

 えへへ、兄さんをそんなにしたのは私! 私なんだから!

 誰も悪くない。

 そう、兄さんは絶対に、悪くない。……えへへ、うん、ごめん、ごめんね。

 大丈夫。兄さんはもう大丈夫。私が保証するから。

 うん、嘘、多分お医者さんが保証してくれると思うから。

 色々、話したいことあるけど、それ全部喋っちゃうと、兄さんが起きちゃうから。


  動画が切れ、次が始まる。

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