第二話 アバン子爵の別邸に向かいます
鏡のモンスター越しにメイデスと会話をした俺たちは、急いでアバン子爵の別邸に向かい、囚われているルナさんを助け出すことを決める。
どう言う訳か、俺の実力を確かめるために、メイデスはルナさんを攫うと言っていた。
何度も攫われて、ルナさんをピンチ姫する訳にはいかない。メイデスよりも先にアバン子爵の別邸に辿り着き、先にルナさんを救出しなければ。
「
「大体の場所なら分かるが、実際に行ったことはない。取り敢えずは別邸付近まで近づきつつ、後は聞き込みなどをしながら探し出すしかないだろうな」
「分かった。ならわたしの羽を使って空から向かおう。案内は任せたからね」
「ああ、頼んだ」
『あ、待ってよ! 僕を置いて行かないで!』
俺たちは急ぎ、祠から出ようとする。すると、魔力を封じる鳥籠の中に入っているマーペが、回し車の中で走って運動をするネズミのように、籠を押して転がしながら追いかけてきた。
もう、こいつと一緒にいる意味は殆どない。何せメイデスもアバン子爵の別邸に向かっている。そこでルナさんを救出しつつ、メイデスを倒せば奪われた龍玉を取り戻すこともできる。一石二鳥である以上は、もうこいつの道案内は必要ない。
『お願い! 置いて行かないで! 僕と一緒にいるとアバン子爵の別邸が分かるから! こんなところでポツンと居たら、寂しくって死んじゃう! うえええええええぇぇぇぇぇぇぇん!』
マーペの言葉を無視してそのまま走って置いて行こうとすると、彼は突然泣き始める。人形なので当然涙は出て来ないが、言葉で悲しい感情を表現している。
パーぺにそっくりな身代わりドールが一緒だから寂しくはないだろう。
そう思っていたが、祠から出たところでパーぺの言葉をもう一度思い出し、その場に立ち止まる。
「お前、アバン子爵の別邸が分かるって言っていたよな。それはどう言うことだ」
『僕の中に腕を突っ込めば、兄ちゃんの魔力線が分かるって前に言っていたよね。どうやら兄ちゃんは今、アバン子爵の別邸にいるみたいなんだ。だから、僕が一緒にいれば、アバン子爵の別邸にまでの道が分かるし、お得なんだよ!』
確かにマーペの言葉を信じるのであれば、こいつも一緒に連れて行ったほうが時間短縮にはなる。だけど、こいつは最初から敵だ。俺たちの捕虜のような扱いになってはいるが、決して仲間ではない。
メイデスの配下の魔物である以上、俺たちの到着を遅らせる罠の可能性だって十分にあり得るんだ。そう
ひとまずは試しにマーペを使ってみるべきかもしれないな。
「分かった。一応はお前の言うことを信じてみよう」
横になっている鳥籠を持ち上げると、扉を開けて中にいる人形型モンスターを取り出す。そして腕に嵌めると、帯状のものが目に映る。
方角的にはアバン子爵の別邸がある場所を指しているな。完全には信じることはできないが、今のところはマーペを利用しても良さそうだ。
「完全に信じることはできないが、一応お前も連れて行こう」
『これだけ一緒にいるのに、まだ一応なんだ。僕って信用がないな』
「当然だろう。信頼関係が壊れるのは一瞬だが、築き上げるのには相当な時間がかかるものだからな」
マーぺを鳥籠の中に戻し、籠を掴むと空いている方の手をメリュジーナに差し伸ばす。
「道案内は俺がする。頼む、俺をアバン子爵の別邸にまで連れて行ってくれ」
「任せてよ。
メリュジーナが俺の手を掴む。すると彼女の背中から妖精の羽が現れ、羽ばたくと空中に浮かび、徐々に高度を上げていく。
「それじゃあ移動をするよ。どっちに迎えば良い?」
「あっちだ。ひとまずあっちの方角に向かって飛んでくれ。目的地に近付いたら、細かい指示をする」
東の方角に指を差し、飛行ルートを伝える。するとメリュジーナは東に向かって移動を始めた。
空中移動を始めてから、休憩を挟みつつも数日が経過した。時間を費やしたものの、ようやくアバン子爵の別邸がある小島に辿り着く。
「あれだね。でも、上空からでは建物が見えないね」
「そうだな。もしかしたら何かしらの力で見えないようにしているのかもしれない」
上空から見た感じだと、山火事などは起きていない。どうやらメイデスよりも先に来ることができたみたいだ。後はどうやって別邸を見つけ出して、中に侵入するかだよな。
「Iご
メリュジーナが船着場を見つけ、そちらに顔を向ける。
「本当だ。船の帆にはアバン子爵の家紋がある」
船を観察していると、船から人が次々と降り始める。
どうやらアバン家の人たちとその関係者のようだな。
船から降りる人々を見ていると、突然こちらに向かって火球が飛んで来る。
「メリュジーナ! 回避だ!」
俺の腕を掴んでいるメリュジーナに火球を躱すように言うと、彼女は横に移動して火球を避ける。しかし回避した後も次々と火球や水球、氷の塊などの魔法が放たれてきた。
これは単なる威嚇射撃ではないな。確実に俺たちを倒そうとしている。
島に近付く謎の正体を排除しようとしているのかもしれないが、こんなことで引き返すことなどできる訳がない。
「メリュジーナ、敵の攻撃を避けつつ、上陸することは可能か」
「任せてよ。わたしはフェアリードラゴンだよ。
自信満々に言うメリュジーナだが、その余裕が慢心に繋がらなければ良いのだが。
少しだけ不安になりつつも、彼女は敵の攻撃を避けつつ島に近付く。そして砂浜に上陸することができた。
どうやら俺の杞憂だったようだな。
「お前たち、一体何者だ! ここが我らアバン子爵の保有する島だと分かっての侵入か!」
砂浜に足を付けると、一人の男が声を上げる。
もしかして、あの人が。
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