第52話 邪魔しなくてよかった。マジで。③

「すぅぅぅぅ。はぁぁぁぁぁぁ」


 美優は深く息を吸う。

 そして、吸い込んだ空気を全て吐き出した。

 同時に、自分の中へと意識を沈めていく。


 魔力というものは正直よくわかっていない。

 探索者になれば知覚できるようになるが、それだって、『ダンジョンGo!』があるおかげだ。

 『ダンジョンGo!』については魔力よりもわかっていないのだが。


 完全には理解されていないが、わかっていることもある。

 魔力は胸の奥深くにある『魂』と呼ばれている部分で生成されている。

 『魂』と呼んではいるが、これについてもよくわかってはいない。

 どうも、ここからダンジョンや『ダンジョンGo!』の栄養となる感情が生み出されているみたいで、感情を生み出すところなら『魂』でいいだろうということになり、『魂』と呼んでいる。

 回復系の上位職になるとわかるようになるらしいが、この『魂』は探索者じゃない人にもあるようだし、あながち間違いではないんじゃないかと思う。


 その『魂』に溶け込むような形で『ダンジョンGo!』が存在しており、レベルが上がっていくとどんどんと溶け合い、混ざり合っていく。


 美優は初めてこの話を聞いた時は正直少し気持ち悪く思った。

 自分に何かわからないものが溶け込んできているのだ。

 気持ち悪いと考えるのは普通だろう。

 だが、探索者として生きていく以上、これは避けられないものだ。

 美優のように代々探索者をやっている家系であれば探索者にならないという選択肢はない。


 それに、探索者の重要性を美優はよく知っていた。

 探索者がいなければダンジョンが世界中で大発生して地球が住めない場所になってしまう。

 誰かがやらないといけないのだ。

 それなら誰かに押し付けるんじゃなくて自分でやる方が美優の性分にあっている。

 他の誰かにやってもらった場合、その誰かが知らないうちに辞めてしまうかもしれない。

 そんなことをしないと思えるほど親しい友人にはあまり危険なことをしてもらいたくない。

 もし危険なことをするなら、自分も一緒にやって危険を分かち合いたい。


(これだ)


 美優は自分の奥深くにある『魂』を知覚する。

 そして、それと一緒に存在する『ダンジョンGo!』の本体も。


 『ダンジョンGo!』の本体からは今も魔力が発生している。

 これは美優の魔力だ。

 美優はいつもこの魔力を使ってスキルや魔法を発動している。


(……雄々しく。猛々しく。まっすぐに)


 美優は自分の中にある『ダンジョンGo!』を猪俣の本家で修行した時のように調整していく。


 自分の魂と溶け合った『ダンジョンGo!』はある程度操作することができる。

 というより、『ダンジョンGo!』が感情の影響を受けており、人間は自分の感情をある程度あやつることができるというべきか。


 怒りによって今まで使えなかったスキルや魔法が使えるようになるなんて話はよく聞く。

 これは自分の感情を吸収することで『ダンジョンGo!』が一時的に成長したためだ。

 『覚醒』だって同じ原理で起こる。


 そして、探索者は長い歴史の中で自分の感情を最適化する方法を編み出した。

 その成果の一つが『相伝スキル』だ。


 『相伝スキル』は『魂』の形を初代に合わせることで、初代が使っていたスキルを使うというものだ。

 時間が経つごとに改良が重ねられていき、実際初代が使っていたスキルとは全くの別物になってしまっているらしいが、『ダンジョンGo!』はどこかで繋がっているらしく、現代で同じスキルを発動すれば大体同じ効果が得られるようになっているらしい。


(……いける)


 美優にはスキルなど細かいことはわからない。

 『相伝スキル』を使うために講義を受けたが、難しすぎて途中で眠ってしまった。


 だが、スキルの発動準備に入り、これなら狐モンスターを倒すことができると自信が持てた。

 探索者において、自信が持てるということは重要なことだ。


 特にCランク以上になるとモンスターとの自信の押し付けあいになってくる。

 お互いが『ダメージを与えられる』という自信と『ダメージを防げる』という自信をぶつけ合い、買った方が事実となる。


「グルルルルルル」


 そして、美優が自信を持ったことは狐モンスターにも伝わったみたいだ。

 今まで美優のことは気に求めていなかったのに今は美優の方に意識を向けている。


 これは悪いことばかりじゃない。

 狐モンスターが美優の方に意識を向けたということは、美優が今から使おうとしている『猪突猛進』は少なくとも狐モンスターにダメージを与えられるということだ。


(……あと少し)


 まだスキル発動までは少し時間がかかりそうだ。


 この時点でモンスターに溜めていることがバレるのは想定の範囲内だ。

 『相伝スキル』や魔法スキルのように溜めが必要なスキルは発動直前になると発動することが敵からもなんとなくわかってしまう。

 だから、こういう大技を使うのは難しい。


 だが、その点は問題ない。


「お前の相手は俺だよ! 『暗殺』!」

「!!」


 サグルが攻撃したことで再び狐モンスターの意識が美優からサグルへと戻る。


 美優はサグルなら絶対に時間を稼いでくれると信じていた。

 そして、サグルが稼いでくれた一瞬でスキルの準備が終わった。


「『猪突猛進』!」

「!!」


 美優は『相伝スキル』を発動した。











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