第50話 邪魔しなくてよかった。マジで。①

「美優は『必中』効果のついたスキルって持ってるか?」

「『必中』……」


 目の前の狐モンスターのような身代わりスキルを使って攻撃を回避するモンスターやスライムのように核にダメージを通さなければ倒せないタイプのモンスターはたまにいる。

 そういう特殊なタイプのモンスターへの対処は決まっていた。

 その一つが『必中』効果のついた攻撃などスキルが『絶対に当たる』と保証してくれている攻撃をするというものだ。


 身代わりや核を移動させて相手の攻撃を通さなくするというのはほとんどの場合は小手先の技術にあたる。

 そのため、ダンジョンのルールで決まっているスキルの効果の方が優先されるのだ。

 たまに技術がパッシブスキルに昇華している場合もあるが、それでもアクティブスキルの効果の方が優先度は高い。


 ランクの差が大きければそれも覆されてしまうが、Dランク最高位のサグルや美優ならCランク最下位の目の前のモンスターとほとんどランクの差はない。

 スキルの効果を覆すほどの実力差はないとみていいだろう。


 何より、同じランクなら基本的にモンスターよりも探索者の方が強い。

 探索者がモンスターのスキルを技術で対処するなら可能性はあるが、逆なら大丈夫なはずだ。


 どうやら、サグルは必中系のスキルで相手にダメージを与えていくことにしたみたいだ。


 サグルも『必中』効果を持ったスキルは持っていそうだ。

 サグルは盗賊系のジョブに見える。

 盗賊系のジョブは攻撃力こそそこまで高くないが、『必中』や『防御貫通』などの特殊効果付きのスキルを多く持っている。

 多くのスキルがあるため、相手に合わせてスキルを変える必要があり、攻撃に頭を使わないといけないので結構大変なのだそうだ。

 美優にはあまり向いていないジョブだといっていいかもしれない。


 それでも美優に必中系のスキルを持っているか聞いてきたのは美優の戦いたいという気持ちを汲んで攻撃を譲ってくれるつもりなのかな?


(いや、攻撃できるスキルがあるかどうか聞かれてるだけで、攻撃を譲ってくれるとはいってないか)


 サグルは美優に攻撃方法があるか聞いてきただけだ。

 まだ、攻撃を譲ってくれるとはいっていない。


 パーティであればどちらが攻撃をするかは大した問題にならないが、サグルと美優はパーティを組んでいない。

 パーティを組んでいないと経験値や報酬はラストアタックをした方の総取りになってしまう。

 お金やドロップアイテムは後で分配することはできるが、経験値はそうはいかない。

 後で再分配するにしてもお金やドロップアイテムについても実際にどれだけ手に入れたかを証明することはできないし。


 かといって今からパーティを組むことは多分できない。

 パーティの結成などのいくつかの機能は戦闘中だと使えないのだ。


 だから、美優が有効な攻撃を持っているかを聞いてから自分がラストアタックを取れるように説得してくるつもりなんだろう。


(でも、うまくモンスターの意識を惹きつけられる自信はないな)


 スキルを使うだけでいい攻撃と違って、相手の攻撃の対処は技術で何とかする必要がある。

 そのため、ダンジョンでの戦闘の場合、攻めるより守る方が難しい。

 美優は守りの方を任されると困ってしまう。


 もともとパーティ内での役割も、美優がガンガン攻撃して周りのメンバーがサポートをするという方針で戦っている。

 その時も防御はあまり考えていない。

 攻撃して相手をノックアップさせて相手に攻撃させないという戦法をとっているからだ。

 美優が習得しているスキルも、ノックアップ効果のついた攻撃スキルがほとんどになっている。


 猪俣の人間はそういう戦法を取ることが多い。

 『押して、押して、押しまくる』というやつだ。


 自分より格下のモンスターが相手であればそれで十分だった。

 だが、その戦法は目の前の狐モンスターのような格上相手には通じない。

 ノックアップ攻撃も格上相手では効果を発揮しない場合が多いのだ。


 本家の人たちはその辺を気合いで何とかしてしまうそうだが、美優はその域まで達していない。

 そのため、いつも使っている戦法で時間を稼ぐことはできない。

 そうなれば、スキルに頼らずモンスターの注意を引いて逃げ続けるしかなくなってしまう。


(でも、この状況に陥った原因は私にあるんだもんね)


 今の状況の原因は美優だ。

 少し大変だが、サグルが攻撃をできるくらいの時間は頑張って稼ごう。


 最悪、死ななければ何回かダメージを喰らってもいいのだ。

 Cランクのモンスターの攻撃だから美優たちのパーティでは回復方法がない。

 Dランクの回復スキルではCランクモンスターから受けた傷は治療できないし、Dランクでドロップするポーションでもそれは同様だ。


 しかし、隠れ里には治療できる回復職の探索者がいる。


 もしかしたら、優子の呪いを解呪する回復職の探索者と知り合いになれるいい機会かもしれない。

 そう考えれば、目の前のモンスターを倒すために時間を稼ぐくらいなら美優でもできるだろう。


 美優はサグルを葬るために攻撃を仕掛けたことをすっかり忘れてしまっていた。











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次話は来週月曜日の7時ごろに投稿します。


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