第25話 いつから隠れ里で自由に探索できると錯覚していた?①

「これは。思ったよりも大変だな」

「そうですね」

「まさかこんなふうになるとは思わなかったよ」

「この先どうしよっか?」


 隠れ里についた翌日。

 俺たち四人は共同寮の食堂に集まっていた。

 まだ昼前だから、この時間なら本来ダンジョンの探索をしている。

 だが、俺たちは昼前にはすでにできることがなくなっていた。


「ダンジョン探索するのに順番待ちがあるなんて思わなかったね」

「そうだな」


 隠れ里内ではダンジョン探索の時間が結構きっちり決められており、俺たちは満足にダンジョンに潜ることができないでいた。

 雅がツテを使って予約をしてくれたのだが、その予約だってまだ少し先だし、探索できる時間も決まっている。


「まぁ、仕方ないんじゃないかな? ここはCランクダンジョンで、上級探索者候補生からしたら格上のダンジョンだ。だから、探索できるエリアは里側が管理している部分に限られる。探索できる場所が限られているなら、探索できる機会も限られるのは当然のことだ」

「雅さーん」

「そうなんだけどさぁ……」


 雅のいうとおりだ。

 このダンジョン内では探索できるエリアが限られる。

 それは、里側が管理できているエリアが限られているからだ。


 いろいろな装置を使ってそのエリアだけ出てくるモンスターをDランクレベルまで下げているからだ。


 管理エリアの外に出れば出てくるモンスターのランクがCに上がる。

 Cランクのモンスターは上級探索者になっていない俺たちでは対処できない。

 そのうえ、このダンジョンはCランクの中でも比較的強いダンジョンらしく、未覚醒の状態では管理エリア外に出るのはかなり危険なのだそうだ。


 だが、朱莉と京子が情けない声を出す気持ちもわかる。

 修行をするためにせっかく隠れ里まで来たのに、その修行が順番待ちになっているのだ。

 ちょっと勘弁して欲しいと思うのは当然だろう。


 特に俺と朱莉は深刻だ。


 雅は生産スキルを使って武器や防具の生産依頼があり、京子も回復スキルを使って治療をする依頼があるのでレベリングすることができる。

 隠れ里での依頼は材料がCランクのアイテムなので、生産スキルだけでも覚醒のきっかけを掴むことができるらしい。

 治療依頼についても、怪我はほとんどがDランクモンスターにつけられたものだが、稀に出現するCランクに傷をつけられる場合があるらしく、その治療で覚醒する回復職は結構いるそうだ。

 効率は悪いそうだが。


 それ以前に、京子はすでに覚醒済みだ。

 無理をしてダンジョン内で修行する必要もない。


 だが、俺と朱莉はそういうわけには行かない。

 俺は戦闘しかできないし、朱莉は罠の解除なんかはできるが、それだってダンジョン探索ができないのであれば、スキルを使うチャンスはない。


「瞑想でもするかい?」

「うーん。それも予約が取れるのかどうか」


 隠れ里には瞑想や座学みたいな講義も存在する。

 だが、それらを予約するのにも所属組織の仲介が必要になるらしい。


 組織の仲介を依頼できない俺たちではそれらの予約すら取ることができない可能性がある。


「大槌家の先輩経由でどこかの組織に参加できれば良かったんだが。すまないね。まさかこんなことになるなんて思ってなかったよ」

「色々とやってくれたのに無理だったんだから仕方ないよ」


 ダンジョンや座学に予約が必要なことなどについては、雅が面識のある大槌家の先輩から教えてもらった。

 その先輩は大槌島に居住しているらしく、俺たちが大槌島にできたCランクダンジョンを駆除したことにめちゃくちゃ感謝してくれた。


 それもあって、俺たちのために自分のいる組織含めて幾つかの組織に俺たちを売り込んでくれたり、手を回してくれた。

 だが、結果は芳しくなかった。


「あの嫌がらせの効果がこんな形で出てくるとはな」

「そうですね」

「純血主義者かぁ」


 どこの組織も俺たちを引き受けることに難色を示した。

 その理由が俺たちが純血主義者たちに目をつけられているからだ。


 俺たちに嫌がらせをしてきた奴らは純血主義者と呼ばれる「全てのダンジョンは組織によって管理されるべき」と考える連中らしい。

 どこの組織にも一定数いるのだとか。


 そのため、どこの組織も自分の自分の組織の純潔主義者を刺激することを恐れて俺たちを受け入れることを躊躇した。


「これまでこんなことなかったのに」

「この隠れ里では純潔主義者が外よりも幅を利かせてるみたいだからからね」

「そうなのか?」

「あぁ」


 純血主義者になるような連中は血筋くらいしか誇ることのない連中だ。

 そういう連中はこの隠れ里で足踏みしやすい。

 Dランクまではパワーレベリングとアイテムや武器でゴリ押しすることができるが、Cランクからは自力で『覚醒』する必要がある。

 覚醒が思ったようにできず、何年も隠れ里に通う純血主義者は多いらしい。


 隠れ里には上級探索者候補生しかいない。

 ほとんどの上級探索者候補生は一年で抜けていくので、その中で何年も隠れ里に通うということは、その分、純血主義者は隠れ里内で割合が多くなる。

 その上、何年も隠れ里に通っているため、隠れ里についても詳しくなる。

 純血主義者の会合みたいなのもあり、そこで情報共有も行われているらしい。

 なんでも、純血主義者しか知らない秘密のフィールドもあるのだとか。


 そういう理由もあり、隠れ里内での純潔主義者の影響力は結構高いのだ。


「面倒なことになったなぁ」

「そうですね」


 俺たちは深いため息を吐いた。










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