No.001 Under Sea

 太陽の陽が届かない海底に、第二次世界大戦(大東亜戦争)時に就役していた伊号特大型潜水艦伊400の残骸やズタズタになった長門型戦艦の1番艦長門ながとの残骸がある中、同じく旧式潜水艦の姿をした潜水艦がソナー音を海底に響かせながら静かにしていた。


 その詳細は、全長808メートルで最大全幅162メートル。そして、高速な水上帆船や沢山の大砲を積んだガリオン船でも相手以上の火力を誇る62口径14センチ連装砲塔を前部甲板上1基と後部甲板上に1基装備している。


 それにこの世界では珍しい魚雷という水面下を航行し敵船にダメージを与える兵器を艦首部に8管と艦尾部に4管装備している。


「艦長、水上に音紋確認」


 モニターをじっと見つめていた少女が、艦長席に座る少年に顔を向けて報告した。


「何処の所属だ?」


「おそらく、ジゼラーセル帝国かと」


 少年は腕を組み「ふむ、そうか。意外と早かったな」と感嘆し、天井を見上げた。


 その後、ヘッドホンをしていた別の少女が声を上げて「ん? 何かの物が、こちらに接近中!」と顔を上げた。直後、艦内の接近警報器が一斉に鳴り響き出した。


 副艦長席に座っていた少女が横目で「どうするの?リラム」と、聞いてきた。


 リラムと呼ばれた艦長帽子を深く被っている少年は、目を見開き「戦闘配置、さぁ。仕掛けようか?」とその場にいる全員に聞こえる声で言った。


__________


 海上には剣と薔薇をあしらった旗を掲げた、ジゼラーセル帝国所属のガリオン船の姿があった。


「メザリア伯爵夫人様。船長が助け出されました。 しかし、ずっと何かに怯えています」


 船員の一人が敬礼をしながら、報告をしていた。


「そう。分かったわ、他の生存者は?」


「いえ。 その船長が唯一の・・・」


 言葉を濁した意味がわかったメザリア伯爵夫人は、目を伏せながら「分かったわ。 ご苦労ね」と言い再び穏やかな海が写る窓に向いた。


わたくしの夫の船団が、たった2日で・・・。 ありえませんわ」


 その後、引き上げられたすべての水死体を水葬用の木箱に入れて船縁ふなべりから投下した。


「祝砲を上げろ!」


 旗船のジゼーラ号に乗っていた兵士たちが火縄銃つつを空に上げた時、マストから周囲を双眼鏡で見ていた兵士が指を刺しながら大声で「気泡を発見!」と声を上げた。


 その報告で、一瞬船内が慌ただしくなったが、メザリア伯爵夫人の「静まりなさい!」という声で静まった。


__________


 海中では、リラムの指揮と副艦長の指揮の元、忙しなく艦内を走り回っている少女や女性乗員達の姿があった。


 発令所内では「ベント弁、開け。深度10まで、浮上」や、「潜望鏡用意!」という声が飛び交っていた。


 赤毛で容姿端麗な航海長が後ろに聞こえるように大きな声で、「現在深度まもなく10メートル、潜望鏡用意」と目の前に広がる機器を操作しながら言った。


 その声に合わせるように艦長席から立ち上がると潜望鏡に向かって歩き、艦長帽子のつばを反対に回して覗き口を覗き込んだ。


 潜望鏡の先端が海面に静かに顔を出すと、水葬中のガリオン船の姿があった。


 無言で潜望鏡横にある降下スイッチを押すと、「水雷長エザリカ、魚雷戦用意」と帽子を直しながら発令した。

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