第6話
「「……は?」」
颯希の言葉に来斗と雄太が同時に声をあげた。
「不躾なお願いをしているのは分かっているのです!でも、私も心配なのです!だから、お願いします!私も一緒に連れて行ってください!!」
颯希はそう言葉を綴ると、深々とお辞儀をした。その様子に来斗と雄太が目を合わせる。
「どうする?」
「まぁ、僕は構わないけど……」
「でも、急に女の子が来たら拓哉さん驚かないか?」
「うーん……。でも、タバコのこともあるし、実際にその場にいた結城さんに来てもらうのも有りかもしれない……」
そうして、来斗と雄太は考えた結果、颯希も連れて静也の家に行くことにした。
来斗と雄太に颯希が付いて行くような形で三人で静也の家に行く。
道中、来斗と雄太に静也のことをいろいろ教えてもらった。
静也はどちらかというと、明るくて真っ直ぐな性格であり、育ての親である拓哉ともとても仲が良い。育ての母はいないが、拓哉がしっかりと静也の面倒を見ているという。よく来斗と雄太も交えてみんなで静也の家でバーベキューをしたりしていたこと。拓哉は来斗と雄太にもすごく良くしてくれる人で二人ともこんな父親だったらいいなと憧れたこと……。
そんな話を聞くと、根はとても素直な子で悪い子ではないことが如実にわかる。
しかし、だからこそなぜ急にあんな風になってしまったかがますます分からない。
「着いたぞ」
そんなことを颯希が考えているうちに、静也の家に到着した。
ピンポーン――――。
来斗が呼び鈴を鳴らす。
しばらくすると、玄関が開いて一人の男性が顔を出した。
「こんにちは、拓哉さん」
来斗と雄太が挨拶する。
「来斗くんに雄太くん……。それにそちらのお嬢さんは……?」
「初めまして、結城颯希と言います」
颯希がそう言って深々と頭を下げる。
そして、拓哉は三人に家に上がってもらい、リビングに通した。
「あの……、静也は……?」
来斗が口を開く。その言葉に拓哉は表情を暗くした。
「まだ、帰ってきていないよ……。夜遅くにならないと帰ってこないんだ……」
項垂れるように拓哉が言う。
「拓哉さん、静也くんと何かあったんですか?やっと学校に来たと思ったら髪も染めてるし……。静也君の性格上、そんなことをする子じゃないことも分かっています。一体、何があったんですか?」
「……私にも分からないんだ」
雄太の問いに拓哉が苦しい表情をする。そして、更に言葉を綴った。
「本当に突然だったんだよ。前日まではいつも通りだったんだ。あの日、私が仕事から帰ってきて――――」
拓哉はその日も仕事を定時で終えて家に帰ってきた。静也の読みたがっていた漫画を買い、夕飯の材料を買っていつも通りに帰ってきた。
しかし、家の前まで帰ってきて家の明かりが灯っていなかったので不思議に思い、静也に何かあったかもしれないと思い急いで家に入った。
「静也!大丈夫か?!」
拓哉は大声で静也の名前を呼んだが、返事がない。心配になり、静也の部屋をのぞいたが静也はいなかった。
最初は何かで帰りが遅くなっているだけかもしれないと思い、心配しながら静也の帰りを待っていた。
夜の八時頃になり、玄関の開く音がしたので急いで行くと、そこには髪を一部だけ赤く染めた静也がいた。
「し……静也?」
静也の姿に何も言葉が出てこない。
「ど……どうしたんだ?なぜ、髪を染めるなんて……」
拓哉が我に返り、ようやく出てきた言葉はうまく言葉になっていなかった。そして、静也は何も言わずに拓哉の横を通り過ぎる。拓哉は呼び止めたが、静也は拓哉を睨みつけるだけで何も言わないまま部屋に入っていった。
そして、その日を境に静也は学校にも行かなくなり家にもあまりおらず、帰ってくるのは夜遅くになってからだった……。
「……だから、私にも何があったかが全く分からないんだ」
沈痛な面持ちで拓哉が手を顔に当てる。その様子に颯希は静也がタバコを吸っていたことを話していいのかどうか悩んだ。そして、今はそのことを言わない方が良いと思い、そのことについては話すのをやめた。
「じゃあ、静也に一体何が起こってるんだ……?」
来斗が言葉を発する。
静也の行動がただの思春期の反抗ではないということは分かる。でも、原因が全く分からない……。
恐らく静也の中で「何か」があって、あんな風になったのは分かる。だが、拓哉ですらその理由が分からない。
颯希の中である想いが浮かぶ……。
静也がとても苦しんでいるのではないかということが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます