第3話


「おっはよー!!」


 元気な声を出して颯希は教室に入った。


「おはよう、颯希ちゃん!」

「はよー、颯希。今日も元気だね~」


 颯希の元気なあいさつに友達である新海 美優しんかい みゆ御影 亜里沙みかげ ありさが返事をした。


「おはよー。みゅーちゃん、あっちゃん」


 フワフワの肩まである栗色の髪をしていてどこかおっとりしているみゅーちゃんこと美優に、黒のストレートロングの髪をしたちょっとミステリアスで大人っぽいあっちゃんこと亜里沙。二人とも小学校からの友達でタイプは三人とも違うが気が合う友達だ。颯希がパトロールをしていることも知っていて、応援してくれている。


「昨日もパトロールしてたんでしょう?お疲れ様。クッキー焼いてきたからお昼休みに三人で食べようね」


 美優がそう言ってラッピングされたクッキーを見せる。


「わ~!ありがとう!みゅーちゃんのクッキー美味しいから好きなのです!」


 颯希がキラキラした目でクッキーに釘付けになる。


「まぁ、美優のクッキーは美味しいからね。……って、颯希!食べるのは今じゃなくて昼休みまで我慢なさい!!」


 颯希が袋から出そうとしていたので、亜里沙がそれを制止する。


「えー……、だってぇ~、美味しいクッキーを目の前にしてお昼休みまで我慢なんてできないのですよ~……」

「でも、昼休みまで我慢なさい!」

「あっちゃんの意地悪~……」


 メエメエと泣きながら、クッキーを手放さない颯希に亜里沙が無理やり取り上げる。その二人のやり取りに美優は微笑みながら見ていた。



 朝の授業が終わり、昼休みに入ると三人で机をくっつけてお弁当を広げる。三人で仲良くおしゃべりしながらお昼休みを過ごしていると、突然廊下にどよめきが起きた。


「……あれ、一組の斎藤さいとうだよな?」

「今日は学校に来たんだ……」

「あの髪、校則違反じゃないの?」

「なんか、ヤンキーになったって話だけど……」

「こっわ~……」


 あちこちからひそひそ声が聞こえる。

 

「……どうしたのですかね?」


 颯希が声を発する。


「……あぁ、一組の斎藤が久々に学校に来ただけよ。なんか、不良になったって話だけどね」


 亜里沙が特に興味のない感じで言葉を綴る。


「……ちょっと、見てくるのです」


 颯希はそう言って席を立つと廊下に出た。


 廊下に出ると、一人の先生が斎藤と呼ばれる生徒に怒りをあらわにしている。颯希にはその生徒の後ろ姿しか見えない。でも、昨日の少年に似ている気がする感じがした。でも、確信がない。後ろ姿では前髪を一部メッシュにしているかどうかが分かりにくかった。


「……とにかく、職員室に来い!」


 斎藤と呼ばれた生徒は、先生に連れていかれた。



 職員室では先生と斎藤が向き合いながら話をしていた。といっても、先生が注意しても斎藤はそっぽを向けて何も答えようとしない。いわゆる黙秘状態だ。


「……一体、何があったんだ?やっと学校に来たかと思いきや髪は一部染めているし、ヤンキーになったという話も出ているんだぞ?お前はそんな生徒じゃないだろう……。どちらかというと真面目で明るい性格じゃないか……」


 先生の言葉に斎藤は何も反応を示さない。ただ、黙秘しているだけでしゃべろうとしない。


「親御さんに聞いても、何があったか分からないというし……。先生は心配しているんだ。一体何があったんだ?」


 先生が何とか前の斎藤に戻って欲しい一心で必死に何があったか聞くが、やはり斎藤は黙秘したまま何も言わない。



 その頃、颯希は美優と亜里沙の三人で次の教室に移動するため、廊下を歩いていた。


「はぁ~、やっぱりみゅーちゃんのクッキーは美味しかったのです」

「それは分かるけど、一個食べるたんびに美味しい光線出してるんだから笑えたわね」

「それくらい美味しいということなのですよ!」

「ふふっ、ありがとう。また、作るね」


 そうおしゃべりしながら職員室の前を通りかかった時だった。



 ――――――ガラっ!



 職員室のドアが開いて、少年が出てきた。少年の顔を見て颯希が声をあげた。


「あーっ!!やっぱり昨日の……!!」



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