第26話 武官オリオンとアメリア ⑥

 ハンネスとエルフィンはマジックミラーの窓から、教団に駆け込み、助けを求めてきたというふたりの男女の顔を注意深く、しばらく黙って見つめていた。

 やがてエルフィンが、静かに言った。

「女性のほうは知りませんが、男性のほうは帝国軍の武官でオリオンと言う者です。

 マルデク情報省長官オスカー・フォン・ブラウンの右腕と言われる男で、文武両道にたけています」

 そして不思議そうな顔をして、ミカエルに聞いた。

「なぜ彼が、ここに?」


「女はそのマルデク情報省長官オスカー・フォン・ブラウンの婚約者で、ふたりは恋仲で、地球へきみたちと同じように、駆け落ちをしてきたそうだ。

 そして我々に保護を求めている」


 ハンネスとエルフィンは驚きながら、互いの顔を見た。


「オスカーに婚約者がいたなんで、まったく初耳だ。

 オスカーは、エルフィンにぞっこんで、会うたびにいつもにお前にプロポーズしてたよな?」

とハンネスはエルフィンに言った。 そして、


「マルデクでは、オスカーは私の親友だったので、彼の好みは良くしっているつもりですが、彼女が婚約者だと聞いても、何かしっくりこないのが、本当の気持ちです」

と、ハンネスは言った。


「彼女はマルデク王朝の血を引く、王女の称号を持つ女性だそうだ。

 政略結婚を親に迫られたのだろう」

と事も無げに、ミカエルは言った。


「武官オリオンは、実直で心から信頼出来る同僚でした。

 戦場では随分、助けられた。

できれば、助けてあげて下さい」

とエルフィンはミカエルに言った。



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