#50 遭遇
翌日の火曜日。
朝から荷物を纏めて、自転車でヒトミのマンションへ向かった。
着いて早速これからの共同生活のルールみたいなものを話し合った。
食費は折半。
お菓子やジュースは自分の分は自分で用意する。
洗濯物は一日一回午前中に回す。
裸でウロウロしない。
夜更かししない。
夜寝る時はクーラーは切ること。
友人などを呼ぶのは禁止。
ミキだけは呼んでも良いけど、この部屋では如何わしいことはしない。
とりあえずの期限は、夏休みが終わるまで(3週間ほど)。
その他、etc。
お互い概ね納得すると、ヒトミからスペアのキーを渡された。
因みに、土日は自分のワンルームに戻るつもりで居る。
部屋の様子をたまには見ておきたいし、ミキとのお泊りも楽しみたいし。
歩いて直ぐの所にお蕎麦屋さんがあったので、ちょっと高く付くがお礼も兼ねてご馳走することに。
席に案内されて向かい合って座ると、天ざるセットを2つ注文し、料理が来るまで雑談をしていた。
このお蕎麦屋さんは、ヒトミ曰く「前から気になってたけど、高そうだから今まで入るのを
食事を終え会計を済ませてお蕎麦屋さんを出ると、そのまま二人で歩いて近所の100均ショップへ向かった。
100均ショップでは、俺用の食器や服を掛けるハンガーにタオル等を購入。
因みにミキと二人で買い物する時と違って、店内に入ると直ぐに別行動だった。 以前よりも関係が改善されたとは言え、兄妹では買い物を楽しむのが目的じゃないし、お互い必要な物を自分で選んで自分の分は自分で会計すればいい話なので。
100均ショップの後にスーパーにも寄ったが、俺の部屋から日持ちしない食料品を結構な量持ってきていたので、ココではカレーのルーとお好み焼きの粉とドリンクを購入しただけだった。
ヒトミの部屋に戻ると、持ってきた荷物や食料品を片付け、買って来た食器を洗ったりの作業をして、後はヒトミとお喋りしながらスマホやノートPCのwi-fiの設定をしたり、ミキや他の友達連中にメッセージ送ったりして過ごした。
正直言うと、妹のヒトミと二人きりの共同生活に身構える気持ちもあったけど、実際にこうして1日過ごしみると直ぐに慣れたし、ヒトミの方も特に気にしている様子もなくリラックスしている様だった。
翌日以降は、毎日の様に日中はミキが遊びに来て3人で過ごすのがほとんどだったけど、特に3人で遊びに出かけたりすることも無く、ミキが料理したり、3人でゲームしたり、ゴロゴロしながらテレビやネットの動画を見たり、ストーカーに関しての相談をしたりして過ごす日が続いた。
◇
そうして、俺がヒトミのマンションに避難してから最初の週末。
丸四日間留守にしていたワンルームに1度戻ってみることにした。
目的は、留守にしている部屋の様子を確認したり、郵便物等の回収をしたり、あとは週末くらいはヒトミに迷惑掛けずにミキと二人だけの時間を過ごすことで、土曜の午前中にミキと一緒に自分の部屋へ行く予定でいたが、当日になってヒトミも付いてくると言い出した。
最初「そんなにも俺たちと一緒に遊びたいの?」とノー天気なことを考えたが、ヒトミはお盆休み中に侵入されて以降の部屋の様子を見ていないので、現場検証をしたいとのことだった。
じゃあ折角だから3人で行ってみようってことで、ヒトミのマンションから3人とも自転車に乗って俺のワンルームへ向かった。
到着すると自転車置き場に3人とも駐輪して、まずは1階の郵便ポストを確認。
2~3通封書が来ていたので回収して、ついでにお隣さんのポストも覗き込むが、中は空っぽだった。
この数日お隣さんは、夏休み中も在宅の様だ。
何となく3人とも無言のまま2階に上がり俺の部屋の玄関扉前に立つと、実家から戻って来た日に侵入者の痕跡に気付いた時の背筋が凍る様な感覚を思い出してしまい、俺一人だけ緊張していた。
そっと鍵を差し込んで開錠し、音を立てない様に静かに扉を開いた。
呼吸するのを忘れて、息を止めたまま静かに扉を開く。
そっと中へ入り視線を足元に落して靴を脱ごうとした瞬間、俺の後ろに居たミキが叫んだ。
「誰か居る!ベランダベランダ!!!」
ミキはそう叫ぶと俺を押し退けて靴を履いたまま室内へ駆け込み、ベランダの窓の鍵を素早く開錠して勢いよく窓を開けるとベランダに踊り出た。
続く様にヒトミも俺を押し退けて、ミキを追い駆ける様にあとに続いた。
俺は靴を脱ごうと前かがみになってた体勢で二人に後ろから押された為に、その場で脚を
転んだ状態から何とか上体を起こして視線をベランダに向けると、ベランダの囲いによじ登ろうとしている不審者をミキが後ろから抱き着いて引きずり下ろそうとしており、ヒトミは二人にスマホを向けていた。
脚を
不審者の顔を見たら、やはり隣人の飯塚シズカだった。
ミキに後ろから羽交い絞めにされ激しく暴れながら「離して!離して!」と叫んでいる。
長身で長年バレーボールで鍛えてきたミキに対して、不審者の飯塚さんは身長は低く体格的に見てミキには到底及ばないので、手足をバタつかせるだけだった。
俺は無我夢中でベランダまで来た上に
「話聞くから落ち着いて。ミキも離してあげて。 飯塚さん、観念して大人しくして。もう逃げられないから」ハァハァ
「しっかり動画にも残してるので、逃げても無駄ですよ」
俺に続いてヒトミがトドメを刺す様に引導を渡すと、漸く飯塚シズカは大人しくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます