転校してきた金髪ギャルは、昔結婚すると誓った幼馴染だった!?
空翔 / akito
第1話 まさかの再会
次のような経験をしたことがある男子は意外といるのではないだろうか。
『将来、〇〇ちゃんと結婚するよ』
『僕が〇〇ちゃんの旦那さんになる!』
このような発言をした経験だ。
つまり、幼馴染という存在と将来の結婚を誓い合うということだ。
無論、こう言う僕、早見
金沢花蓮――僕が物心つくころから一緒にいた女の子。
茶髪でボブヘアという髪型はその幼さをより引き立たせていて可愛かった。
家は隣で互いの両親が昔からの付き合いということもあり、僕たちは基本的に一緒に時を過ごした。
そして小学校低学年、一年生の最初の頃だったろうか。
「僕。将来花蓮ちゃんと結婚する!」
「私も! せいちゃんの立派なお嫁さんになるよ!」
いつも通り一緒に帰宅している最中、僕からプロポーズなるものを行った。
しかし、二年生に上がるというタイミングで花蓮は引っ越してしまった。
初めて花蓮の口から『引っ越すことになっちゃった』と言われた時は、帰って枕に顔面を押し付け数時間泣きじゃくった記憶がある。
今思えば、まだ互いのことしか異性として知らない男女が結婚しようとか言い合うなんてそこまで意味を成すものではないと思う。
だけど当時の自分は相当ショックだったのだろう。
花蓮と離れてから、初めのうちは花蓮といつか会える日を夢見て生活していた。
スマホなんていう画期的なものはまだ無かったから、連絡を取り合うことはなかったけど。
でも所詮は僕も男子だ。
中学生になって思春期が本格的に始まる頃は普通に他の女子を好きになる事なんてざらだった。
まあ、今になっても彼女という存在は出来たことはないけど。
そんなこんなで現在は高校二年生になった。
たまに花蓮のことを想う時はあるものの、別にだからといって何かあるわけではない。
それにもう会うことはないのだから。
そう思っていた……はずなのに、彼女は再び僕の前に現れた。
しかも、昔とは似ても似つかない姿で。
☆☆
「んじゃ行ってきまーす」
玄関を後にし、僕は学校へと向かう。
学校までは徒歩で向かうのが日課だ。
自電車を使えば早く到着できるが、それはしない。
「おはよう!
本を読みながら少し前方を歩いていた銀色の長髪の女子に声をかける。
「おはよう。早見君」
白銀千鶴――高校に入学してから知り合ったクラスメイトの女の子。
とても物静かで、ほぼ無口。
だけど自分の根はしっかりと持っているような印象がある。
紛れもなく僕が一目惚れした女子だ。
自電車に乗らない理由はまさにこれである。
「それ、何読んでるの?」
「最近出た新作のラブコメ。従姉妹と恋しちゃうって話なんだけど……」
「あれかぁ。僕も読んだけど面白かったなぁ」
僕は生粋のオタクだ。
ていうか、オタクだったからこそこうしてクラスで一番美人と謳われている白銀さんと話せているいるのだから。
こうして白銀さんと話すようになった原点は高校一年生の時にクラス内で委員会決めを行う時だった。
着々と各委員会のメンバーが決まる中、最後は図書委員の番だった。
誰もが興味無さそうにする中、白銀さんが立候補したのだった。
図書委員はクラスで一人でも十分だったのだが、入学式の時から一目惚れしていた僕は『自分も!』と挙手して図書委員となった。
これできっかけは作れた……そう思っていたが、彼女の雰囲気からか図書委員の仕事中も話しかけづらく、なかなか言葉を交えることは出来ずにいた。
そんな中、ある日図書委員としての仕事中に休憩がてら図書室にあったラノベを読んでいる時だった。
「早見君ってラノベ読むの?」
先に声をかけてきたのは白銀さんだった。
それ以来共通の趣味の話題で話すことが多くなり今に至る。
同時に、いつか思いを伝えようと思い早一年が経過してしまったとも言える。
運よく今年もこうして同じクラスになれた。
程なくして僕たちは教室に到着した。
「今日も一日頑張ろうね」
「そうだね」
白銀さんは不器用に笑顔を作って返事をしてくれた。
初めて会話したときから比べると、よく笑うようになったよな。
そうしてそれぞれ自分の席に向かう。
「おっはよう! 朝から白銀と仲良さそうでなによりだ!」
席に着いた途端にからかってきたのは僕の後ろに座っている
こいつを一言で表現するなら『イケメン陽キャ』に尽きる。
成績はそこまでだが身体能力は高い……それでいて何故か帰宅部。
簑島とは中学校で出会ってからずっと一緒にいる。言わば親友のようなものだ。
赤茶色で光沢を放つ簑島の髪は夜型の自分にとっては眩しい。
「そりゃどうも」
適当に返事をしておく。
「そうだ! ゴールデンウィークの課題まだ終わってないんだけど貸し……」
「はいよ」
僕は言われる前に簑島に宿題のプリントを渡す。
「流石ぁ! 分かってるねえ」
付き合い始めて五年目ともなれば互いのことは何となく分かるようになる。
少し長めの休暇とかで宿題を課された暁には、必ずといっていいほど簑島は僕に答えをせがんでくる。
半ば呆れつついつも通りだなと思いながら待っていると、チャイムが鳴りホームルームが開始され、いつも通りに授業が始まった。
☆☆
キーンコーンカーンコーン。
帰りのホームルーム終了を知らせるチャイムの音。
それは学生を苦痛から解放されたような気分へと錯覚させる。
「この後どこ行く?」
「これなんだけどさ」
クラスメイトが互いにこの後の予定を語り合っている。
「じゃあまた明日な早見」
「じゃあな」
簑島は先に帰ってしまった。
別にどうってことはない。
この後は一、二週間に一度の図書委員としての仕事を全うしないといけないのだから。
「行こうか。白銀さん」
「そうだね」
僕は一人ポツンと座っていた白銀さんに声をかけ図書室へと向かった。
その後はいつも通り仕事をこなす。
気づけば時刻は夕方過ぎ。
外はそろそろ日の明かりが消えようとしていた。
「じゃあまた明日。白銀さん」
「またね。早見君」
分かれ道で白銀さんと別れ、僕は自分の家に帰る。
「ただいまぁ?」
家に到着して玄関で靴を脱ごうとした時だった。
見覚えのない靴が一足だけあった。
サイズ的に女の物だろうか。
疑問しか浮かばなかったが、数秒後それに応えるかのようにそれは現れた。
「おかえり! せいちゃん!」
「ただい……ま。って、せいちゃん?」
リビングへと続く扉が勢いよく開き、目の前に現れたのは面識のない金髪で長髪なギャルだった。
「久しぶりだね! せいちゃん!」
俺の脳内が目の前の女子を金沢花蓮だと認識するのに、時間は要さなかったことは言うまでもない。
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