落ちこぼれアイテムハンターの俺、現世に転生してゴミアイテムが高値で売れることを発見して億万長者に成り上がり、今度は金をばら撒く絶対的支配者になる

※以下、「日本不審者情報センター」より引用


(兵庫)神戸市中央区相生町3丁目付近で物品譲渡 2月12日夜

https://nordot.app/997648971237113856?c=134733695793120758


兵庫県警によると、12日午後7時45分ごろ、神戸市中央区相生町3丁目付近の路上で女子高校生への物品譲渡が発生しました。(実行者の特徴:中年男性、身長高め、黒色ジャケット、ボーダー柄Tシャツ、ジーンズ)


■実行者の言動や状況


・信号待ちの女子生徒らに声をかけ、ゴミ入りのビニール袋を渡した。


・「神戸駅から梅田まで何分かかるの」


・「これ換金したら400万円当たっとるから」


■現場付近の施設


・神戸駅[JR]、ハーバーランド駅[神戸市交通局]、高速神戸駅[阪神・阪急]、西元町駅[阪神]、大倉山駅[神戸市交通局]など



〜〜〜



 俺は億万長者だ。

 元の世界では落ちこぼれだった俺が、だ。


 転生した俺だが、元の世界ではありふれた物でも、この世界で売れば高値で買い取ってくれることが分かったのだ。


 ようやくこの世界にも慣れ、まわりを見渡す余裕ができてきた。


 今度は俺が街ゆく人たちに施しをしてやるんだ。そして、あわよくば、人気者になって、金も女も権力も手にしてやる。


 女子高生を見つけた。俺は彼女に近づいて、声をかけた。


「神戸駅から梅田まで何分かかるの」


「え……?」


 女子高生は戸惑いながらも答えてくれた。俺はそのお礼に袋を渡す。


「これ換金したら400万円当たっとるから」


「は? ゴミじゃん」


 女子高生の顔が鬼の形相になる。元の世界のゴブリンより恐ろしい。


 その後も道行く人に声をかけるが、誰も袋を受け取ってくれない。


「ちょっと、おじさん」


 背後から声をかけられる。警官が2人立っていた。


「ゴミを渡そうとしてるってのはあなたですか?」


「これはゴミじゃない! ウラマンタイトという俺の世界じゃありふれた石っころなんだよ! でも、ここじゃ高く売れるんだ!」


 もう1人の警官が溜息をつく。


「あのね、おじさんね、異世界転生なんてないの。いい加減現実を見なさい。で、人に迷惑かけないように」


「俺はモーダンティアから来たんだ!」


 俺は走り出した。


「あ、こら、待て!」


 追いすがる声を振り切って、どこかの路地に座り込んだ。


 袋の中を見る。

 スナック菓子のゴミが詰まっている。


 違うんだ。

 俺は本当に──。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る