グリフォン討伐

 耳を澄ます必要も無い。ドシドシとこちらに1歩ずつ近づいて来る音。


 時折聞こえてくる他の生き物の声は悲鳴のようだ。もう既にレインと感覚を共有しているから直ぐにどこにいるかは分かった。






 感覚共有について少しわかったことがある。




「山の神との戦いの時の感覚共有は私の魔法ではなく一成さんの魔法です。」




「そうなのか?使った覚えが無いんだが……」




「恐らくあの戦いの時無意識に発動したのだと思いますが、1度発動さえしてしまえば次は頭に思い描くだけで簡単に発動できると思います。」




「マジ?」




 俺が感覚共有を強くイメージするとまた前と同じように一瞬レインと繋がった感覚がし、共有が成功した。




「意外と簡単だな。」




「最初が難しいのです。魔法は生まれた時潜在的に人間が持っているものですが、なにかのきっかけで自発的に発動しない限り一生眠っている能力なんです。」




「これってレイン以外とも共有出来るのかな?」




「実はその共有、発動している間半分は私が魔力を供給している状態みたいなんです。なので私のように互いに心を許しあえた者同士でしか長時間の使用は暫く難しいかと……」




「そうだったのか……」




「ただ、一成さんの魔力量が増えれば場合によっては強制的に共有したり、相手の五感を奪ったりも可能かと思います。」






 考えようによっては最強の魔法かもしれないが今の段階で俺ができるのはレインとの共有のみ。


 今は少しづつでも相手の体力を削って持久戦に持ち込むしか勝つ方法は無い。レイン頼りのゴリ押し戦法ではあるが、目の前にもう既に相手がいる以上戦うしかない。




 とりあえず弱点らしい弱点はないかグリフォンを観察してみる。正面から見てもそれらしいものは見当たらない。


 ふさふさの毛皮を身にまとったタカとライオンを混ぜたような生き物だ。足にはご立派な鉤爪、背中には翼が生え頭はタカというRPGでよく見るいかにもなグリフォンの風貌をしている。




「で……デカイな……」




 足1本で俺と同じくらいの高さだ。胴体や首を合わせると俺より3倍近くある。




 観察しているとグリフォンが何かを感じ取ったのか周囲を見回しはじめる。




「マズイ……レイン逃げろ!!」




 完全にこちらの方向に照準を合わせ、背中の翼を大きく開き羽ばたこうとしている。




「なんでバレた!?」




 怯み逃げようとするこちらを大きく開いた瞳で確認した後、こちらに向かって羽を羽ばたかせとてつもない突風を起こす。


 その突風により周囲の草花や木々はなぎ倒され、こちらに向かって飛んでくる。




「一成さん!!」




「あそこだレイン!!」




 俺たちは近くの岩陰に走った。


 ギリギリ間に合い、岩を盾に何とか最初の一撃を凌ぐが、周りの木々は軒並み倒されているので俺たちの位置はグリフォンから見れば丸分かりだ。




「なんて馬鹿力だ……」




 攻撃力が違いすぎる。人間がかなうような相手では無いことを肌で感じた。




「一成さん後ろ!!」




 俺は咄嗟に後ろを振り向くが時すでに遅し。


 岩の真裏まで迫っていたグリフォンの前足の一撃が岩をも破壊し、その一撃で俺は吹き飛ばされ、倒された木々に激突してしまった。

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