第27話

 春……。

 春といえば桜。桜といえば京都である。

 そんな訳で私達は今、京都に来ている。

「いや、それはちと唐突過ぎやあらへん?」

「そう? いつもこんな感じでしょう」

 春休みを利用して私達は旅行に来ている。

 私と橘君と鷲羽先輩とセバスチャン。それに、新たな旅の仲間がもう一人……。

逢坂 薫。私の従兄妹である。

「わいの説明、雑過ぎちゃう? もっと構ってぇな」

「あなたは今回、メインキャラじゃないのよ。それに、語り部は私よ。あまり出しゃばらないで頂戴」

「そんな酷いで~、美和子」

「……何を訳の分からんことを言っておるのだ」

 先輩が怪訝な顔で私と薫を窺う。

「な、何でもないわ。こっちの話よ」

 気を取り直して……。

 私達は大阪にある薫の家を拠点にしつつ、京都や奈良の寺社仏閣巡りをしている。三泊四日の旅行だ。

 交通費などの旅費は、全額私持ちである。旅費が各自自腹だったら、貧乏性の先輩はおそらく同行しなかった。

 まあ、旅費程度どうってことはないけれど。

 ……彼らが楽しんでくれたら良いと思う。

「最初は清水寺に行くんだよね! 楽しみだなあ」

「……そうね、楽しみね」

 橘君って、こんなキャラだったかしら。いつもは冷めた声でツッコミを入れるだけなのに。

 そういえば、彼は仏像鑑賞に釣られてこの研究会に入ったのだっけ……。

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