転生錬金術師の地球出戻り聖女譚

ノエル・フォン・シュテュルプナーゲル

第一章 地球へ

1 少女は錬金術師になる

空泳ぐ雲を追って、色褪せた大地を歩いた


闇照らす月を追って、僅かに視えた道をなぞった


世界が少しでも色づく様に私は水を捧げる


華は天高く咲き誇り道しるべとなる


往く果てにアナタが迷わぬ様に


往く果てにアナタとまた会える様に



-----------------------------



 リリシュタイン大公国、大公王家に一人の少女が生を享けた。

 彼女の名はノルン・フォン・リリシュタイン、蝶よ花よと育てられた。


 15歳を迎えた朝、ノルンは公都の聖ノエル神殿へ赴いた。


 この世界では15歳を迎えた少年少女は必ず神殿へ足を運ぶ。


 それがこの世界の慣わしだ。


 ノルンも物心ついた頃からそう教わり、「そういうモノなんだろう」くらいには思っていた


 この世界では15歳で成人と扱われる。

 やれ恋だ!遊びだ!とまだ大人の入口で足踏みをする者も多いだろう。

 そんな思春期真っ盛りとも言える少年少女達が何故、神殿へ足を運ぶかと言えば――


「おお!!アダムプレヒトくん!君は【剣聖】のスキルを授かった」


 神殿の中間管理職の様な壮年の人は少年に伝えた。

 彼は公都の神殿に何人かいる内のなんてことない司祭である。


「リューナリス伯爵のところの次男坊か」

「ふむ剣聖とな、我が国の抑止力となろう」

「これは我が国としても快挙だぞ」

「陞爵もあり得るな」


 辺りはざわめく


 それもそうだろう、この国では際立った戦闘スキルを賜ったものはいないのだ。


【剣聖】

一騎当千の如く剣を操り敵を切り伏せる文字通り剣士系統の最上位スキルだ


 話の流れから察する通り、15歳となった少年少女は女神ノエルからスキルを賜る

 

 と古くから伝えられている


 ちなみにジョブではなくスキルだ


 ランダムなのか女神の気まぐれなのかはわからない

 彼の様に最上位の【剣聖】を一つだけ賜る者もいれば――


「アナスタシアさん、君は【僧侶】と【魔法士】のデュアルスキルを賜った」


「この組み合わせは【賢者】と同義ではないか?」

「剣聖に続き賢者まで!!」



 将来の国力となる若人を一目見よう!


 そんなセリフを口にし儀式を見に来る者も多い


 主に暇な貴族だけが……


 そして今日はそんな暇な貴族だけではなく、そこまで暇でもない貴族や他国の来賓も訪れていた。その理由は


「リリシュタイン大公第一王女 ノルン・フォン・リリシュタインです。本日はよろしくお願いしますね。」


 大公王女殿下、即ち国の姫であるノルンが儀式を受けるからだ。

 礼拝堂の席は満席も満席、外から覗く者もいる。


(待って……この中でスキル賜るの?私、外れ引いたらどうしよう……)


 ノルンはビビり散らしていた。


 そんなノルンの不安な感情は誰にもわからない。司祭は姫だろうがなんだろうが儀式を淡々と進める。少し待つと壇上の水晶が輝いた。

 どうやら壇上の水晶に『スキル』が表示されるらしい。


「ノルン姫様、貴女は……こ、これは……!あ、その……」


 司祭はどこか歯切れが悪く、ノルンと水晶にを交互に見る。少し戸惑っているかの様で難しい顔をしている。


(やめて!!私も【聖女】とか【魔法剣士】とかそういうのがいい!!)


 ノルンにとっては長く感じる程の間が置かれ……司祭がようやく口を開く


「……失礼しました。貴女は【不老不死】と【錬金術】のスキルを賜りました」



(へ……?)


 騒めく堂内


「もう一度……」


「姫様、貴女は【不老不死】と【錬金術】のスキルを賜りました」


――不老不死……?


 それはスキルなのだろうか?

 一体どういったものなのだろうか?

 『不老老けない』『不死死なない』はわかるがフワッとしすぎてよくわからい。


「では……これにて本日の分は終了となります」


(え、ちょっとまって!?)


 やり直しはできないのか?聖女や魔法剣士そういうのがいい!彼女は、結果を受け入れられてない。


 ワンモアワンチャンス!ワンモアチャンス!心の中で彼女は叫ぶ。


 そんな願いとは裏腹、儀式はノルン姫という大トリで締められた。


 ふと辺りを見渡せば、皆ノルンをみていた。


 それもそうだ、姫は聖女だろう、剣姫っていうのもいいななんて期待されていたノルンだ。まあ姫である故におべっかを使われていただけだ。それが【不老不死】と【錬金術】だ。錬金術に限っては残念なスキルでもないが、錬金術を極めるにはちょっと勉強して練度をあげたとしても時間がいくらあっても足りない。

 10年や20年で成果を出せる様なスキルではないのだ


 だからだろう


 ズーンと音が鳴りそうなくらい落ち込むノルン。

 俯き黙っていた彼女だが、ザワザワしたこの空間で貴族の誰かがボソボソと話している内容を聴きとってしまう。


 彼女は聞こえなくても良いことに関して恐ろしいほどに耳が良い!


「不老不死って斬っても斬っても死なないってことか?どこまで?」

「歳をとらないってことじゃないのか?でも不死?死なないのか?」

「いや気にはなるが……」


 誰が話したのかはわからない。

 だがその後、先ほどまでは残念な目を向けていた彼らが、今度は別の目をノルンに向けていた。


 彼女はこれを知っている。


 奇異の目だ!


(こわ……!!)


 自分の扱いこの先どうなってしまうのか?そんな不安に支配されそうなった彼女だが賜ったものは仕方ない、無理矢理そう考えることで感情の帳尻合わせをし、平静を装っていた。


 城に帰ったノルンは家族に賜ったスキルの内容を伝えた。

 そこでも向けられたのは奇異の目だった。


 元々、大公王家に生まれた女、則ち姫である。故に政治の道具として扱われていると彼女にとっては逆に意外だった。

 剣姫などの最上位スキルでも賜っていれば何か違ったのかもしれない。


「この子ももう少し身長が伸びてくれたらね……」なんて彼女は母にも言われていた


(このまま絶対変な国に嫁がされて政治の道具にされて人生終わっちゃうんだ……)


 そう彼女が悲観するのは『良いスキルで政治の道具にされるのは勘弁してもらおう作戦』が絶望的となったからだ。更には奇異の目も相まって落ち込んでいたものは恐怖へと変異する。


 自室に戻り、藁にも縋る想いでスキルを調べた。


――ステータスオープン


 これは【ステータス】

 この世界、惑星ノエルに生きている全ての生物に与えられた恩恵。

 自分の能力、強さを数値化したものだ。

 魔獣で溢れるこの世界を生き抜く為に人類が女神から賜った機能というのが通説だ



ノルン

HP10 ※不老不死により固定

MP100

力:10 ※不老不死により固定

防:10 ※不老不死により固定

魔攻:102

魔防:100

魔力抵抗値:1

理力:9999 ※鑑定にも表示されません

スキル:「不老不死」「錬金術」


 貧弱ね……と言わんばかりのステータスである故に今日賜るスキルに彼女自身も期待していた。


 更には不老不死を賜ったことで、ただでさえ貧弱な物理ステータスが一部固定されてしまった。

 例え筋トレしたとしてもそこに効果はないということなのだろう……

 とはいえ彼女は自堕落な部分が多少あり、筋トレなどしたこともないし、固定化されなくてもする気はなかっただろう。


 【理力】という欄は9999なのだが誰にも視えない。彼女にもなんなのかもわからない。使えないものに期待しても仕方ないしこれは置いておこう。

 彼女はそう考え不老不死について調べ始める。


――「不老不死」ディテールオープン


 不老不死の内容を細かく表示する


不老不死:

 超回復。死なない、老いない


 魂核ソウルコアに刻まれた魔素フラッピングエーテルを理力によって活性化、前世の記憶を回復することが可能

 一回限り使用可能、元に戻すことは出来ません。


 前世の記憶を復元しますか?

 YES/NO



(前世の記憶?)


 不老不死の機能?と疑問はあるが、なりふり構ってられない彼女だ


 少しの間を置いて


「YESに決まってんだろ〜!!??」


 そう叫び応えた




〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ここまで読んでくださりありがとうございます!


ノルンの活躍をもっと見たいぞ!


という方は

★評価とフォロー、♡ください!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る