第19話 水の都散策

 わたしはヴェネツィア市街の中心地、リアルト橋のそばに安いホテルを見つけ、チェックインした。

 ホテルの窓から小さな運河が見下ろせた。

 あらためてここが「水の都」であることを実感する。

 ヴェネツィアは島である。

 イタリア本土とリベルタ橋で結ばれている。

 ヴェネツィア島は177の小さな島の集合体で、150の運河で分割されていて、400の橋で結ばれている。

 島内には自動車が走れる道路はなく、自転車の通行すら禁止されている。移動方法は徒歩か船に限られる。歩くのに疲れたり、長距離移動をしたい場合は、水上バスかゴンドラと呼ばれる手漕ぎボートを利用することになる。

 わたしはヴェネツィアの路地歩きに夢中になった。

 迷宮のような街を歩いていると、美味しそうな食堂や可愛くて綺麗なヴェネツィアングラス店や金細工店などに出会える。店の装飾に天使や仮面や月やハートがぶら下げられていたりする。ウィンドウショッピングが楽しい。

 建築物はゴシック、ルネサンス、バロックと各種様式が揃っていて、マニアなら狂喜するにちがいない。わたしは人工建築物にはあまり興味がないのだが、それでも街を歩いていて、はっとすることが多かった。曲がり角の向こうに丸屋根の教会があり、その前の運河にゴンドラが浮かんでいる。美しさに息を飲む。

 ゴンドラにも乗ってみた。舟代は高いが、この街でそれを惜しんで運河に浮かばないのはもったいない。

 ヴェネツィアはかつて、海の上に浮かぶ無人の湿地帯だった。

 周辺に住むウェンティ人がフン族に追われて、やむを得ず5世紀に移り住んだのが、その歴史の始まりだ。

 その後、海上貿易でのし上がり、ヴェネツィア共和国は領土を広げ、強大な海軍国家となる。

 ライバルはイタリア北西部にあったジェノヴァ共和国だったが、14世紀には戦争に勝ち、全盛期を迎える。

 暗雲が垂れ込めるのは、15世紀半ば頃から。オスマン帝国が勢力を拡大し、地中海の制海権を押さえ、ヴェネツィアは衰退していく。ガラスやレースなどの工芸品を生産することで、なんとか生き延びていくことになる。

 1793年、共和国はナポレオン・ボナパルトに侵略され、ついに崩壊する。

 しかし、ヴェネツィアはイタリア屈指の美しい都市として、いまも繁栄している。

 現在の問題は、気候変動により増えてきた高潮の害。

 イタリア政府とヴェネツィア市は、モーセプロジェクトと呼ばれる巨大な可動式の水門の建設を進め、街を守ろうとしている。

 ヴェネツィア2日目の夜、わたしはリストランテに入った。

 鯵の冷製マリネ。

 海の幸のリゾット。

 アドリア海の魚貝類ミックスフライ。

 ヴェネツィア風イカスミとポレンタ。

 白ワインを飲みなから、絶品料理を味わった。

 デザートはティラミス。


 ヴェネツィアで41,300円使った。

 移動費10,100円。

 宿泊費9,500円。

 食費15,300円。

 その他6,400円。

 これまでの総支出854,900円。

 旅費残金9,145,100円。  

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