第3話『魔法少女ミラリス、誕生?』
「まずさ、魔法少女になったら何か面倒に巻き込まれたりしない? やだよ? 政府とかが飛んでくるとか。いや覚醒した魔法少女は任意で選べるのは知ってるんだけどさ」
何度も言うが僕は男である。
魔法少女になった場合、魔法省の人が飛んでくるというのは流石に嫌である。ただでさえ、男なのに魔法少女って。
まあ、その辺りは大丈夫……だと思いたいが。そもそも覚醒したからと言って、強制的に魔法省とか政府に行かされる事はないのだから。
魔法省に所属するかはあくまで任意だし。本人の意思が尊重される。魔物相手に戦える魔法と言う力は強力だが、悪用でもすればすぐにそれ専用の魔法少女部隊が飛んでくる。
因みに所属した場合と言えば、破格の優遇を受ける事が出来る。国がバックについてくれる訳だからサポートとかも充実している。当然、命をかけて戦うのだからそれ相応の報酬ももらえるし、普通の社会人と同じように給料をもらう事も出来る。
その魔法少女の家もそれなりの支援を受ける事が出来る訳だから。
「別に何もしなくていいよ?」
「え?」
「ただ契約してくれるだけでもいいよ。無理に戦わせる事はしないし、気ままに暮らしたいならそれでもいいし。まあ、すぐ目の前とかに魔物が居たら流石に戦ってもらうかもしれないけど」
「それ、魔法少女になる意味ある?」
「まあ、ぶっちゃけ魔法少女になって戦ってもらうというのは本来の目的じゃないんだ。これはお互い自分を守る為でもあるんだよね」
「守る為?」
「そうそう! わたしはさっき言ったかもしれないけど”
「え、厨二?」
「ち、違うよ!? 勝手に名付けられたの! それで、普通の妖精とは……自分で言うのもあれだけど格が違うんだ。だから、わたしの力を悪用されないように基本的には表に出てなかったんだけど……」
格が違うと言われてもイマイチぴんとこないけど、普通の妖精とは違うって事かな。魔物で言えばレベルEとレベルDみたいな感じ?
「魔物を例えにするのはあれだけど、まあそんな感じ」
「それなら尚更、僕と契約しない方が良くない?」
そうである。
それなら契約なんてせずに、今まで通り過ごせばいいんじゃないだろうか。
「そうなんだけど、保険が欲しいんだよね。契約した妖精は契約相手以外の干渉を受けなくなるから、自衛にもなるんだよね。一応、こそこそしながらいい人とか居ないかなぁと探していたのもあるし」
「あーなるほど」
「キミなら大丈夫って直感に従ってる」
「……えぇ」
「それに、どの道、一旦魔法少女に完全に覚醒しないと元の姿に戻れないよ、キミ」
「……」
「今の状態は非常に不安定だし……何らかの拍子でプログラム動いたりしたらまた変な例外が発生するかもしれないし。突発型って言う博打に賭けるよりかは契約型の方が安牌だと思うよ~」
「確かにそうだけど……」
ってか元に戻れるのか。
「そりゃ戻れなかったら魔法少女じゃないでしょ……」
「そ、それもそうか。いやだって男が女になるっておかしいだろ」
「これもまた一つの例外かもねえ」
「何でも例外で済ますなし。そうとしか言えないけど」
仕方がない。これは状況を動かす為にもなるしかないか。
「分かった。覚悟を決めたよ。ミラさん? 契約してくれ」
「その言葉を待ってた! あ、あと普通に呼び捨てでいいよ。じゃあ、名前教えてくれるかな」
「そう? じゃあ、ミラって呼ぶ。……そう言えば名乗ってなかったか。僕の名前は彼方。
そこ、女っぽいとか言わない。
別に彼方って男でも使えるだろ! 確かにちょっと気になっているのは事実だけど、折角もらった名前だし、嫌いにはなれない。弄られたりしたけどな!
「おっけー。じゃあ、今から言う言葉を自分の名前に置き換えて復唱してね。”わたし、妖精ミラは柊彼方と契約する事に同意する”」
自分の名前に置き換えて復唱って事は……。
「”僕、柊彼方は妖精ミラと契約する事に同意する”」
これでいいのかな? ふと、ミラを見れば小さな手でグッジョブしつつこちらを笑って見ていたのだった。
■■■
「これで契約完了だよ。名前はそれでいいの?」
「まあ、見た目的にも、な」
「確かに」
契約完了と同時に、魔法少女としての名前を決める事になったのだがそんなほいほいを思い浮かぶはずもなく、何となくで作った名前が意外にもしっくり来たのでそれで決定した。
「――魔法少女ミラリス」
由来と言うか元は今の自分の見た目とミラの名前を合体させた感じ。ほら、今の僕の姿って信じたくないけど不思議の国のアリスにそっくりなので、そのアリスとミラを合わせた感じ。ミラアリスだと何かあれだったので。
ラとアは同じ母音だから2つくっ付けると変になるんだよね。そんな訳で、魔法少女としての名前はミラリスとなった。
まあ、魔法少女として活動するかは別として。
「で……戻るにはどうすれば?」
「はい。これ」
「何これ? 手鏡?」
「手鏡なのは間違いないけど、変身する為の道具だよ」
「あー……なるほど。でもなんで鏡?」
「それはわたしが鏡の属性を持つ妖精だから。そしてキミ……彼方も鏡の属性だよ」
「鏡の属性……?」
「まあ、一般的な属性ではないのは確か。そこは追々説明するとして、その手鏡を握って”リリース”と言えば解除されるはずだよ。でも今はまだ解除しない方がいいかも」
「え? あ、そう言えばまだ結界内だったか」
「そう言う事~」
結界内に居るって事は魔物と出くわす可能性が高い訳なので危険である。
「ってか、今回の結界長いな……結構時間が経ってる気がするんだけど。気のせい?」
「気のせいじゃないね……向こうに強力な魔物の反応があるよ」
「え!?」
強力な反応ってまずくないか? 魔法少女はまだなのか?
「それと魔法少女の反応もあるけど、苦戦している感じかも。相手が相手だし……結界も時間の限りがあるしこのままだと解除されるかもしれない」
「それまずくないか?」
「……はっきり言って危ないかも」
「……」
結界内は安全……正確には、結界内で起こった出来事は現実世界には反映されない。だけど、そんな凄い結界でも限界というものがある。
結界を維持させるには当然だけど、魔力が必要になる。基本的には貯蓄されている魔力を使用して発動しているのだが、魔力がなくなれば結界は消えてしまう。
魔力の貯蓄はかなり膨大な量があるとは思うが、その魔力を一つの結界に使い続ける事は出来ない。魔物が何も一回に一度しか出現しない訳ではない。
複数の場所に魔物が出る事だってある訳だ。幸い、日本にはマナエリアと呼ばれるホットスポットが複数存在しているので結界に使用する魔力には大分余裕があるが、それでも無限ではない。
リソースの分配も大事で、同時に複数の場所に魔物が出現した場合は基本的に両方に結界を発生させるようになってる。
リソース不足になった場合は、優先度……レベルの高い魔物の方が優先となりそれ以外に対しては現実世界での戦いになる。昔はそれが普通だった訳だが。
それぞれの地域では目安となる時間と設定しており、それを超える場合は別の対策が必要となって来る訳だ。
基本的にはリアルタイムで監視しているので、その辺は大丈夫だろうけど……まあ、長引くのはあまり良くないって事だ。
限界が来れば結界は消える。結界が消えた場合、どうなるかと言えば魔物が現実にやって来る。どれくらいの被害が出るか分からないが、まあ強いやつだったら結構な被害を出すかもしれない。
幸いにも魔物が一気に複数の場所で連続して出た事はここ最近ではないので余裕はあるだろうけど。
長引いてるという事は魔法少女達が苦戦しているという事でもある。
「……」
さて、どうしたものか。
「行くの?」
「行った方がいいかなって。でも、僕はなったばかりだしよく分からないんだよなあ。自分の力とかが」
何処まで通用するのか確認はしたいが……こちとら男である。そしてなったばかりの魔法少女である。力の使い方すら分かってないルーキーだ。
「本当は色々と教えつつ慣らして行こうかなって思ってけど……まあ、彼方なら相性も良いし大丈夫かも。ただ保証は出来ないけど……それでも行く?」
「……この結界がなくなったら自分の家も被害に遭うかもしれないし、近くで魔法少女が死ぬとか言うのもあれだし……うん。行ってみる。危なかったらすぐ逃げる。申し訳ないけど」
「それが正しい判断だから大丈夫。じゃあ、移動しながら説明するから頑張って理解して」
「了解」
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