第二幕 神殺しに会う

神殺しに会う(1)

 次の街へ、徒歩で向かうわたしと遥。

 以前であれば、電車で十五分で着く街なんだけど今は機械人形に見つからないよう身を隠し、おまけに瓦礫だったり倒壊した建物の残骸だったり崩落した道を避けての移動、そのため半日を掛けてようやく到着。


「疲れるわ……」

「まあ、仕方がないよ」


 日が沈み辺りは暗くなり始め、とりあえず倒壊していない建物の中へ。懐中電灯を持ち、明かりが外へ漏れないよう奥の方へ警戒しながら進む。

 どうやらここはホテルのようね。二階へ続く階段を使って上がっていき、使えそうな部屋を見つけ中へ入りそっと扉を閉める。


「使えそう?」

「うーん、たぶん?」


 質問を疑問で返す遥。

 ボロボロのカーテンに割れた窓、ベッドはひっくり返り窓辺に倒れ、これが風除け代わりになっていた。これなら明かりが外に漏れにくいわね。

 でも、油断は禁物とランタンの上から薄いタオルをかけ、明かりを足元だけに照らせるように工夫する。

 わたしは、リュックからグミ(食後のデザート的に)と水の入ったペットボトルを取り出す。


 ここへ来る途中に家に入らせてもらい、水道が出るか確かめ水が出ると空のペットボトルに入れていおいたの。

 他にも缶詰やカップ麺などを見つけ拝借。

 今晩の食事であるカップ麺に水を注ぎ、遥が蓋と底に両手で触れ水だけを沸騰させる。


「はい、三分待って」

「ありがとー。スープがあるだけで助かるわ」

「だね」


 それから三分後に蓋を取り割り箸で食べる。


「いただきまーす」

「いただきます」


 ズズッ、とシーフード味のカップ麺を啜りスープも一口飲み、一言こぼす。


「美味しい!」


 遥も、味噌味のカップ麺を啜りスープを一口飲み「ふぅー」と息を吐く。

 そして思う。お米が食べたいと、しかしお米は今だと手に入らない。

 ライフラインは生きている地区と、そうでない地区でまばらでこのホテルは生きてなかったわ。まあ、雨風を凌げるだけありがたいのだけど。


「遥、何味がいい?」

「グレープ」

「グレープね。はい」

「ん」


 カップ麺を食べ終わったあとはグミをもぐもぐ食べる。

 明日は、二つ先の地区へ向かう予定。そこの町の名は、神山町。

 悪神が降臨した町であり、崩壊の始まりの地でもある。そこなら神殺しが見つかるかもしれない、そんな希望と期待を寄せ寝袋に入り身を寄せ合って眠る。


「おやすみ、遥」

「ん、奏もおやすみ」




     ◇◇◇◇◇




 翌日の朝、陽光の眩しさに目を覚まし朝食はお菓子。

 うすしお味のポテチの一袋を二人で分け合い、遥にいつもしてもらっている髪をとき三つ編みにしてもらう。

 朝食を済ませ、日が沈む前に辿り着きたいからさっそく行動に起こし壊れた街を歩く。


「転びそう」

「怪我するから気をつけて」

「遥、手を放さないでよ」

「放さないよ。ここ、凹んでるから」

「うん」


 凸凹して歩きにくい道、機械人形に見つからないよう瓦礫や建物など障害物さえも使って隠れながらの移動。これ結構、足にくるから本音を言えばもっと楽に移動したい。

 そうなると、地下鉄なんだけど……。使えば楽に移動できるし、機械人形の心配もせず済む。けれど、どこの地下鉄も逃げ込んだ人たちがコミニュティーを作り、迂闊に近づけば怪しまれたり警戒されたり、最後は拒絶され使わせてもらえない。

 よそ者に厳しい、というか人を増やしたくないってことなんでしょうけど。

 そういうことだから、こうして危険と承知の上で地上からの移動しか手段がないわけ。


「まあ、わたしと遥なら機械人形の相手なら問題ないけどね!」

「どうしたの急に」

「何ていうか、口にしたくなって」

「奏って時々、そういうこと口走るもんね」

「だって、事実だし負けないし」

「大群でなければ、確かに対処可能だよ」

「でしょ!」

「はいはい、分かったから行くよ」


 遥と他愛もない会話をしながら晴れた青空の下を歩く。

 休憩を挟みつつ進むけど、やはり倒壊した建物や家なんかの瓦礫が盛り上がり進路を阻み、道路には大きなクレーターができ邪魔をして辿り着くには至らず、また誰かの家にお邪魔することに。

 奥の和室を借り、畳の上に座り込み文句を吐く。


「明日こそは、神山町に着いてやるんだから!」


 そんなわたしの言葉に、


「辿り着くといいね」


 と、他人事のように呟く遥だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る