一輪の悪魔

コタルト

第1話 プロローグ

明日、一人の男の死刑が執行される。

中村蓮、30歳だ。

殺人を犯したのだ。


薄暗い独房の中、鼠色の天井を見上げながら涙を浮かべ、愛する嫁と息子との思いでを振り返っていた。


(そういえば鈴と付き合って、初めて俺に作ってくれたハンバーグ、少し焦げてたな。恥ずかしかったのか頬を桃色に染めながら、色んな言い訳をしてきて可愛かったな。そんな鈴を見て決めたんだよな、絶対結婚するって。

で、あっという間にときが流れて紫苑が産まれたんだよな。あんなに小さかった紫苑も、もう2歳か。来年には幼稚園か。見たかったな、紫苑の制服姿。

でも、もうそんなことも叶わないのか。こんな夫で、こんなパパで本当にごめんな。一生恨まれるんだろうな。まぁ、無理もないか。俺が犯した過ちのせいで2人はこれから死ぬまで、沢山の人から白い目で見られ続けるんだもんな。本当にクズだよな、俺。なんでこんなになっちまったんだろうな。

って、それもこれも全部あいつのせいだ・・家族を壊したあいつのことは・・マジであいつだけは・・あいつだけは死んでも許さねぇ。また地獄で会おうな、悪魔さん)


その10時間後、死刑が執行された。


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