第7話 マンションまでの帰路とメアリー

 バスが発車し、大通りから右へ曲がり雑踏とした街中を通ると、かつての商業ビル群だったが現在は倒壊してそのままになっているビルが多くなっていく。ここらへんはまだ開発が放置されたままの地域だ。


 その道路上のがれきは最低限取り除き、割れた道路を土などである程度平らに舗装した道を、がたごとと土埃を立てながら走り、倒壊したビルとビルの谷間をバスは通る。


 途中途中のバス停で降車ボタンが鳴らされ、様々な人々が乗り降りしていくが、降りる人間の方が多く乗客が段々減っていく。なにせこの先の終点は「壁」のゲート前で、そう用事があって行くようなところではない。


 そう窓の外を見ているといつの間にか俺に俺の住まいである「マンション」が車窓から見えてきた。俺は降車ボタンを押し、バスはしばらくすると止まり扉を開く。

 


 走り去るバスを後ろに、倒壊した真っ黒なビル群が両脇に立ち並ぶの中で、焼け焦げで真っ黒く変色し、ところによっては数千度の洗礼を受け鉄筋が溶け出した部分があるビル群の谷間を歩く。


 そして周囲よりはかなりマシな状態な、倒壊せず補強や多少リフォームがされてる俺の住まいである「マンション」に、割れたプラスチック板で無理やり補強している扉を開いて入る。


 ヒビの入ったところどころ危なっかしい階段を上り4階の自分の部屋へと戻り、「登山」用の作業靴を脱ぐ。


 スリッパに履き替え寝室に入ると、疲労がどっと出たようで、急に身体が重くなったように、ベッドに倒れるように寝ころんだ。


 それにしてもあの家庭用ロボ、30万は堅いと思っていたのに、20万とはちょっと買い叩かれたかなと失敗したとか考えていると、そういえばここのところ仕事の後やってた到達度テストを見ていないなと思い、「メアリー、ステータスオープン」と声をかける。


 「ピレネー、仕事の方おつかれさま。結果は結構良かったわよ?」という言葉とともに、首に付けているチョーカー型個人端末が俺の脳神経とリンクする。


 連動させているスマートコンタクトレンズで擬似的に空中に投影されたスクリーンにメニューが開き、「トレーニング」の項目に目を合わしさらに「ミドルスクール」を視線で選ぶと、今の学習の進捗状況と、この前の定期テストの結果が表示された。


 一応は手ごたえがあったので自信はあったが、評定はBプラスが4つ、Aマイナーが1つで、報酬として11ポイントが得られた。


 また目標に近づけたと嬉しくなって喜びを隠せないでいると、バディAIであるメアリーから「おめでとうございます、ピレネーはすごく頑張っていましたものね、良かったわ」と祝い褒める言葉を言われ、さらに有頂天になった。


 「ピレネー、Cプラス判定の『現代社会A』についてもう一度学びますか?個人的には学び直すのをおすすめします。そうすれば再試験できるし、今度こそAプラスを取りましょう?」とメアリーが言う。


 俺は「そうか、それじゃ頼むよ」と頼んでDiveすると、講義をメアリーはし始めた。

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