第4話 鏡の中に映る制服の美少女?


 今度は一体何処だ? 



 ここは…一体何処なんだ!!



 またカーテンを通ったら別の場所に飛ばされた…。



 今度は顔の目の前に壁? いや木の板が見える。



 体の向きを変えると、また壁の様な板が見える。ただ自分が向きを変えても、最初の様に姿勢を戻しても、どうやらこの板側に身体が接触する。


 

 重力の向きが自分の背中側ある、つまり今度は自分は床にもたれている姿勢でこの場所に飛ばされたってことになる。



鏡の次は床って……



 それより一つ分かった。どうやら僕が無意識に身につけた特殊能力と言うべきか、自身にだけ自動で起こり得るイベントなのかは分からないが?



 カーテンを開けると、別の場所に転送されるらしい。


(まだ、確信を持てた訳じゃないけど……)



 しかし床と板の間って、一体どんな場所にいるのだろう?



 そう考えを巡らせていたら、上の板側の方から物音がする。気のせいだろうか? 少しギシッギシッと軋む音がした。



 もう一度耳を澄ますと、今度は何か声が聴こえてきた!!



 眼を閉じてその音に集中する、『カトリーナ、ンニャムニャ……』寝言だろうか? と言うことは、僕は誰かが寝ているベッドの下に居るということになる。


 ん?


 カトリーナ……


(何処かで聞いたような?)



 はっ! それってさっきの彼女の名前と同じじゃ!?



 危ない危ない、彼女の名前を聞いて思わず起き上がろうと顔を上げかけた。多分誰かのベッドの下なのだろう、幸い上の空間に余裕が有り、頭をぶつけずに済んだ。


 

 庶民ではこの様な大きなベッドでは眠れないだろう、恐らく貴族のだろうか?



 そおっと向きを変え、横ばいになりながらベットの下から這い出ると、

空には先程見た月が出ていた。



 彼女の家からこの場所に飛ばされて、時間はあまり経過していないらしい。


 

 部屋は何かの灯りで程よく照らされており、真っ暗では無かった。ちょうど蝋燭の炎のような淡い光で、部屋は優しく満たされていた……



 それにしても広い部屋だ!?



 さっきのカトリーナの部屋も広かったが、ここはその倍の広さが有る。




 お貴族様で間違い無さそうだが、無駄に広過ぎると思うのは僕が庶民の生まれだからだろうか?



 ベッドの方を見ると、どうやら寝ながらまだブツブツ言っている。夢の中で愛を語っているのだろう……



 思わずクスッと笑ってしまった。



 それにしても……綺麗な顔立ちをしている。

選ばれた遺伝子って奴だろうか?



 男の自分でも思わずポッとしそうだ。


 

 今は女の子の身体になっているので、もし直視したら余計にきまずい。家主がグッスリと寝てる間に部屋をお暇しよう。


 今度は何処に転送されるか?


 それは分からないけど、発動条件は理解した、ベランダのカーテンを利用すればきっと、また違う場所へ移動できるはずだ。


(多分……できるはずだ)



 窓際まで歩いてようやくある事に気が付いた。



 さっきから月が見えているこの部屋にはカーテンという物が無かったのだ。

考えが浅はかだったらしい(汗)


 どの家の部屋にもカーテンが有ると思い込んでいた。


 窓際に近付くとリングが仄かに赤く明滅した、これが彼女が話していた事か!! 指環から小さな光線が窓側に照射されると、何か薄い膜の様なものが出現する。薄くて透明なそれは外の景色を透過し、その為この部屋からも月が見えていたのだ。



 もし、カトリーナからこの話を聞いて居なかったら、そのまま触れていたかもしれない。これは防御魔法の一つで、インビジブル・レイメント(見えない羽衣)と呼ばれる。


         

          ━インビジブル・レイメント━

"王族また極めて王族に親しい身分の屋敷に仕える術者が警備の為、身分の極めて高い王侯貴族の部屋に設置する特殊防御魔法。欠点はこれを使える術者が極めて少ない"



彼女の家も子爵なので決して身分が低い訳では無いが、この魔法を操れるのは侯爵以上の貴族に仕える魔術士と言う。理由は上の説明の通りだ。



と言う事は、いま僕がいる場所は侯爵以上の屋敷に居る事になる……


 

 家主はもちろんのこと、警備の見廻りで護衛の兵に見つかったら偉いことだ。どうしようと思っていたら、突然背後に気配を感じた。



しまった!!



 指環が反応しなかったから油断していた。部屋に見張りがいてもおかしく無いのに……


 後ろから抱きつく様に捕まってしまった!!

 そして両腕がゆっくりと首の辺りを覆う。



 このまま僕は羽交い締めにされて、牢獄に連れていかれるのだろうか?



「おお我が愛しのカトリーナ……Zzzz」



 「えっ? 寝言」


 

 後ろを振り向くと、さっきまでベッドで寝言を言っていた男の顔が、一体どんだけ寝相が悪いんだよ(汗)



 自分に命の危険が無いため、指環も何も反応しなかったのか……



 それにしってっもっ重い!! て言うか普段なら別にここまで重く感じないと思うのだが、女の子の身体になったせいか? 力も弱くなっている。



 ビクッ!?



 想像だにしない彼の行動に萎縮してしまった。男の人に胸を鷲掴みにされるなんて思いもしなかった。



 はっきり言うが気持ち悪い。



 しかも寝てるままで触るとは、本当にコイツ寝てるのか? 思わずムカついて反射でデコピンをしてしまった。


 

 顔には生まれもって傷一つ無い、そのオデコの部分がみるみるうちに紅くなって行く。



マズイ、強くやり過ぎたかも(汗)



 向こうの世界では、友達は皆悶絶していた僕のデコピン。起きたらどうしよう、警備の兵隊に彼のおでこの色を見られでもしたら、言い訳など出来る筈が無い。



 さて、どうやって逃げよう?



 現実に自分の身に起こってる筈なのだが、何故か冷静と言うか、あまり深刻に考えていない自分が居る、恐らく異世界に迷い込んだっていう事実がそうさせるのだろう。



 コレって夢落ち何じゃっ? て思ってしまうのだ。



 心は冷静だったが、やばっ! て思って反射的に目を瞑って居たらしく、ゆっくりと眼を開けると彼と目が合ってしまった(驚)



 一言で表せば、”ギョッ!!” って奴だ。



 これはマズイ、非常にマズイ事態に陥ったぞ(汗)

考えろ、考えろ考えろぉ~~無い頭で考えろ。


          

 こう言う場合……どうすればいいんだ?



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