幕間 神代の終わり

この世を成立させた存在はただ一人。

全知にして全能、万能にして唯一。

この世の理を従える宙の主。


天主 ファイネス


天主が生まれたとき、この空間には何もありはしなかった。

ただ空虚と虚無が広がっていた。


これを見て天主は宙を開拓することにした。


まずは自分に忠実な三体の神を生み出し、従えた。


「創世神カイバツィヤ」

「輪廻神コバルト」

「破壊神バクラス」


そして天主は告げる。

「創世の時である。空間の渦黒孔を作り、星々を回転させ、自然を作れ。」

「輪廻の時である。永続不変、創世を超えた輪廻を理に刻め。」

「破壊の時である。万物は不可能を超える。壁を壊す破壊の意思を世の理に刻め。」


それぞれに”神託”を与えると、一瞬にして世界は世界足りえる構造を手にした。

望んだ世界が出来上がると、天主は宙に腕を上げる。

そしてそこから振り下ろした先に巨大な”惑星”を作り出した。

地獄のような赤い海、黒焦げた大地が荒れ狂う過酷な世界を生み出した。


だが、天主は満足しなかった。


「創世の時である。世は”これ”を心臓中心と定める。命が芽吹く箱庭を備えろ。」


「輪廻の時である。わたしはこの大地に生命の循環の法則を刻むことを許す。」


「破壊の時である。わたしは宣言する。万物には破壊が眠ると。そして破壊は輪廻に続くと。」


そうして神々は一つの星を作った。


そして名付けた。

「ナルダドダイ」


生命は星に芽吹き”妖精族”・”精霊族”・”龍人族”・”真人族”・”獣人族”が生きだした。その最後に”人間族ヤマストラフィス”が生まれた。


彼らは種族も倫理も違っていたが、根底にあったのは「互いを理解すること」だった。

神々は箱庭を眺める。

これは傑作だ、と。


しかし、そう眺めている時間もなかった。


この世を創造した天主の体躯には黒く不気味なヒビが駆け巡っていた。

砕けた部位から塵となって空間に溶けていく。


これを天主は”大罪”と呼んだ。


この世界を作ろうと思った”強欲”

この世界を作り出した”傲慢”

この世界を失わせないとした”嫉妬”

この世界に破壊を植えつけた”憤怒”

この世界の生命に愛された”色欲”

この世界を外から管理しようとした”怠慢”

この世界を弱肉強食に仕立て上げた”暴食”


天主はそのすべてを理解した。

ゆえに

天主はその大罪を七つに切り分け、神聖な黒い箱に封じ込めた。

そしてそれは世界に散らばった。


だが


天主の崩壊は止まらない。

それを見ていた三体の神は自身が持ちうるすべての神性を使って、天主の体をつなぎとめた。


天主としてもとに戻れたが、生み出した三体の神は力の大部分を失い、微量な力の欠片だけを残して地上へ落下していく。


天主は言葉を残す。


「そなた達と世界を見届けたくあったぞ」


そうして神代は250万年の時を掛けて終わりを告げた。

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