04 廃村
その地域には、人が住まなくなった家がたくさんあった。
とある事故で、人が住める環境ではなくなっていたからだ。
原因は、ガスだ。
夢の資源を求めて地面を掘り進めたが、出てきたのは有毒ガスだった。
最初に作業をしていた作業員が倒れ、近い場所から遠くへと避難の知らせが出された
風が吹いていなかった事から、当初はすぐに解決できると考えられていたが、数分後に天候が急変。
吹き荒れる暴風が、死の風となって人々に襲いかかった。
それは計画が立てられた当初は、地域の発展を進めるはずの夢のプロジェクトだった。しかしたった数分で、人々を不幸にする悪夢へと変わってしまったのだった。
ガスは次から次へと噴き出して、なかなか止まらない。
だから、そこに住んでいた人達は逃げなければならなかった。
避難が行われたのは夜中で、荷物をきちんとまとめる時間もなかった。
全員が無事に逃げるられたわけではなかった。
逃げ遅れた人達が何人も餌食になり、最終的には全国でニュースになるほどの規模に膨らんだ。
その災害で死んだ者達は、幽霊となってしまった。
死んだと認められない者達が多かったためだ。
災害が起きた時は、あっという間の事だったため、死んだ事に気づかない者の方が多かった。
そういった者達は、幽霊となった後でも変わらず生活し続けている。
この世ではない世界で、ずっと成長する事もなく、姿形をかえることもなく。
同じ一日を繰り返していた。
しかし、どんな事にも永遠はない。
ある日、とても強い力を持った除霊士がその場を訪れた。
無事に災害から逃げられた者達が、依頼を出したためだ。
「いつまでも、知り合いをこの世に彷徨わせておくわけにはいかない」という善意の気持ちで。
依頼者のそんな願いを受けて、除霊士は現場を訪れる。
きちんとした装備をまとい、ガスの発生場所からは適切な距離をおいて。
人のいなくなったその地域で、除霊士はさっそく自分の仕事を行う。
普通の人にはない超常の力を行使し、幽霊たちに干渉しはじめた。
すると、みるみる霊達に影響が出ていく。
それは依頼者たちにとっては嬉しい事だった。
しかし幽霊たちにとっては恐ろしい事だった。
ただの日常を過ごしていた死者達は、身の回りで人が消えていくのを見て恐怖した。
何が起きているのかわからず、混乱しているうちに、多くの人……だと思い込んでいる死霊達が消えていく。
それは、かつてガス災害が起こった時、生き延びた者達が感じた恐怖と同じだった。
「友達がいきなり倒れたんだ! 誰か助けてくれ!」
「よせっ、そっちの方向へ行くな。危険だぞ!」
「きゃあああっ、お母さんしっかりして!」
そんな阿鼻叫喚はキレイに消えていく。
誰も知ることなく、聞くことなく。
跡形もなく。
除霊士の力と、生者の願い、そして善意によって。
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