10 第十話
「これで、最後……!」
今の一体で辺りにいた魔物は一通り倒し終えたようだ。
一応まだ増援が来るかもしれないし、短刀は抜いたままで警戒は怠らないようにしておこう。
それにしても……まさか特級の魔物でさえワンパン出来るとは……。
鑑定スキルでもあれば魔物のステータスも覗き見出来るんだが、生憎俺はそんな便利スキルは持ち合わせていない。
とは言え細かいステータスなどはわからないままだが割と簡単に倒せることはわかったんだ。
それは喜ばしいことじゃ無いか。
それからも道中に現れる魔物をなぎ倒しながらダンジョンの奥に進んでいく。すると大きな扉が現れた。
重厚な金属の扉であり、まるで何かを封印しているかのような物々しさを感じる。
「……ゴクッ」
これまでとは比べようも無い程の強い緊張感が体の奥底からやって来る。
いや、心配し過ぎる必要は無い。落ち着け俺……。
ここまでに何体もの特級魔物を倒して来たんだ。自身を持て。
もう今の俺は今までのような最弱では無いんだ……!
扉を開けて中に入ると、そこはこれまでの造りとは違う魔術的な加工が施されていた。
そしてその中心にはやや露出の多い服装の少年が立っていた。
「ほう、よもやここまで来る者が存在するとはな。それも人間と来た……ふっ面白い。余が相手をしてやろう」
「その姿は……」
頭から生えている鋭利な角に、背中から生えている巨大な翼。見たことは無いが知識としては知っている。
「魔族……か?」
「一目で見抜いたか。だがそれを知ってどうなる? 力の差は歴然であろう。だからハンデをくれてやる。余は片手で勝負してやろう」
「……随分と余裕何だな」
魔族と戦った事なんて無い。と言うか存在するとも思ってはいなかった。
おとぎ話の中での存在でしか無かった。そんな存在が、今目の前にいる。
少しでも強気に答えなければ威圧感に飲み込まれてしまいそうだ。
「人間相手には片手で十分だからな」
「そうか。それならその気遣いに感謝して……!」
「ッッ!!」
先手必勝だ。ヤツは俺が人間であることから油断をしている。
その油断に付け込めば有利に立ち回れるはずだ。
「速いッ!? グヘァッ」
「……は?」
俺の振り放った短剣はヤツの脇腹にクリーンヒットし、そのまま吹き飛ばした。
「よもや人如きにこれほどの攻撃を受けるとは……だが良い。実に良いぞ!」
盛大に吹き飛ばされたと言うのにヤツは軽快に笑っていた。
魔族としての余裕なのだろうか。あるいはただ単に戦闘を楽しんでいるのか。
だが俺には関係ない。隙があるのなら狙うまでだ。
「おっと、その攻撃はもう見切っている」
「ならこれはどうだ? ……ファイアアロー!」
ヤツが短刀を避けるのを見越して魔法攻撃の準備をしていたのは正解だった。
「ぐっ、この火力……まさか上級魔法のヘルフレイムか……」
どういう訳かヤツは俺の放ったファイアアローを上級魔法と間違えている。
上級魔法どころか中級魔法すら使えないんだがな……。
とは言え勘違いしてくれているのならそれを使わせてもらおう。
「ああ、聴いただろう? だがそれだけじゃない。まだまだ色々使えるぜ?」
もちろん上級魔法なんて使えない。
だがハッタリを信じてくれればヤツの行動を制限できるかもしれない。
「それほどの近接戦闘の腕を持ちながら魔法の才もあるとは……面白い……面白いぞ貴様ァ!」
どうやら信じてくれたようだ。ただ、警戒とかはしてくれる様子は無さそうだ。
「ふむ、殺してしまうのは惜しいな。よし決めたぞ。貴様、余の部下となれ」
「……は?」
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