悪役令嬢は父を殺す
気絶したマリアンヌは自分の部屋で目を覚ました。
「お目覚めですか、マリアンヌ様」
そう言ったのは、元男爵令嬢であったが父親が不正と汚職に手を染めて挙句の果てに内乱を起こそうとしたため一緒に処刑されるはずだったセリカであった。
彼女は処刑されそうになった所をマリアンヌに助けられ、心の底からマリアンヌを信頼して慕っている忠実なるメイドである。
少なくともマリアンヌはそう思っており、常にセリカを側に置き重宝していた。
また、セリカは重宝するに値する程の非常に優秀な人材であり、様々な学問に精通し、戦闘能力に演技力も高く。果ては非常に優れた発明能力まで持っており、これらの能力を活かしてマリアンヌ主導の元、いくつか商会も営み大成功を収める程の商才も持っていた。
「ああ、起きたわ。にしてもあの気絶薬凄いわね。簡単に気絶出来たわ。また何か機会があれば使えそうですわね。まあ今はいいわ、それよりもセリカ、計画は順調かしら?」
「はい、計画第一段階は成功しました。マリアンヌ様が気絶した後、クソ王子≪第二王子・カイセル≫と脳筋≪騎士団長の息子・マッシュ≫とで口論になり、それを火に油を注ぐ感じで他のハーレムメンバーが口を出し、更に醜い口論を始めました。
これにより第二王子派閥及びその他のハーレムメンバーの信頼はがた落ちとなりました。そのスキを突き、中立派や元第二王子派閥やハーレムメンバーの派閥にこちら側に付かないかと手紙を出しました」
淡々とセリカはマリアンヌに告げた。まるで、それが成功して当たり前のように。
「そう、上出来よ。じゃあ第二計画を始めましょうか。愚かで矮小な父上、いや愚物、首を洗って待っててくださいね。うふ。うふふ」
そう言うと、マリアンヌはニヤリと悪い笑みを浮かべた。
「はい、分かりました。マリアンヌ様。というわけで旦那様もとい哀れで愚かな愚者の元に向かいましょうか」
主人であるマリアンヌと同じように、セリカもまた、メイドとは思えないほど悪い笑みを浮かべた。
「そうね、行きましょう」
かくして二人は第二計画の為、現公爵でありマリアンヌの父がいる書斎に向かった。
―――――――――――
マリアンヌとセリカは現公爵であり、マリアンヌの父がいる書斎の目の前についた。
周りには誰も居なかった。
否、あらかじめ近くに人が来ないようにマリアンヌの手の者が動いていた。
「さて、一応の最終確認ね。セリカあの特別なお茶はしっかり飲ませた」
「はい、もちろんです」
「そう。じゃあ後は計画通りに」
マリアンヌはそう小声で言った後、スイッチを切り替えた。今から自分の父親を騙し、殺すために、ひたすらに父親の神経を逆なでする自分へとスイッチを切り替えた。
コンコンコン
セリカがドアをノックする。
「セリカです。マリアンヌ様をお連れしました」
「そうか、入れ」
怒気の混ざった声がドア越しだがしっかりと聞こえる。完璧に公爵は怒っていた。
「失礼します」
セリカがそう言い、ドアを開ける。
「お父様、ごめんなさい、婚約破棄されてしまいました。私に魅力が無いせいで、本当にごめんなさい」
ドアを開けてから入ってそうそうマリアンヌは父親に泣きついた。その姿はまるで頭の足りない子供のようであった。
それを見た公爵はキレた。それはもう盛大にキレた。
「ふざけるな!何がごめんなさいだ、何が私に魅力が無いだ。ふざけているのか。今回の婚約破棄が我が家にどれだけの損害をもたらすか知っているのか。そして、どれだけ事後処理に時間がお金がかかるか知っているのか?」
現公爵は娘に対して全力で怒鳴り声を上げた。それこそ頭に血管が浮き出るくらいブちぎれて怒鳴った。
「えっと、あの、どれくらいですかね?」
全力で現公爵の神経を逆なでするように、少しもじもじっとした感じで、下を向きながらマリアンヌは言った。敢えてそう言った。
「は?は?は?は?は?何だ、そのふざけた態度は、このクソ娘が~~~~~~」
現公爵はそう怒鳴ってマリアンヌに殴りかかろうとした。その時だった。
バタン
急に倒れたのだ。
なんで、倒れたかというと答えは凄く簡単だ。
高血圧だ。
ようは怒り過ぎたのだ。
何に?
もちろん自分の娘、マリアンヌに対してだ。
まあ、もちろん、普通はその程度で倒れはしない。
しかし、マリアンヌはメイドであるセリカに命令して予めストレスを軽減させるお茶と偽って低血圧の人の為によく使用される、飲むと血圧が跳ね上がる薬という名前の毒のお茶を飲ませていたのだ。
「さてと、仕上げとしますか。お父様、いえクソ無能聞こえていますか?」
マリアンヌは倒れている現公爵であり父親を足蹴りしながらそう罵った。
「てめ、マリアンヌ。早く・・医者を・・・よ、べ」
高血圧で倒れてもなお、その傲慢で強靭な精神は意識を保たせていた。
「嫌ですわ、お父様、なんで私が医者を呼ばなければならないのですか、だって私はお父様の事が心の底から大嫌いですもの、本当に死ねばいいですわ」
父親の頭に足をのせてマリアンヌは言い放った。
「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、誰が育ててやったと思ってる・・・ん・・・だ・・・」
バタン
マリアンヌの言葉を聞き激怒し、起き上がってマリアンヌを殴ろうとしたが、ストレスと薬のせいで脳に急激な負担がかかり脳の血管が詰まった。
そして、公爵であるマリアンヌの父親は死んだ。
あっけなく簡単に無慈悲に死んだ。否、マリアンヌの手によって殺された。
「ハハハハハハハ、上手く行きましたわ、ええ、本当に上手くいきましたわ、ああ。敵は討ちましたよお母さん」
(マリアンヌのお母さんは既に死んでいます。理由は夫(マリアンヌに毒殺された公爵)がストレスが溜まっていた時の情事で首を絞めて殺したからです。
不幸というべきか、幸いというべきかマリアンヌのお母さんの身分は貴族の中でも低いほうであり。公爵という権力でゴリ押してなかったことにしました。だけど、噂は流れてしまい、貴族で彼と結婚したいと望む人はいなくなりました。)
「そうですね。マリアンヌ様。きっとマリアンヌ様のお母様も天国で喜んでいます。ではこの公爵家をマリアンヌ様のものにしましょう」
計画が終わったのに気が付いたセリカはマリアンヌを慰めるようにそう言うと、涙を流す為にセリカが発明した目薬という商品をマリアンヌに手渡す。
「そうね」
目薬を受け取ったマリアンヌの顔は恐ろしいくらい晴れやかで歪んでいた。
―――――――――――
「誰か、医者を医者を呼んでください。お父様がお父様が、倒れましたわ」
マリアンヌは涙を流しながらドアを開けるとそう叫んだ。もちろん演技である。心の中では大喜びしていた。
「どうしたのですか、マリアンヌ様」
その声を聴き一人のメイドが駆け付ける。
「お父様が倒れたの。急にお話をしていたら、倒れたんです。早く早く医者を医者を」
メイドにわざと縋りつくマリアンヌ。その姿は心の底から父を心配する娘そのものであった。その演技を見たメイドはすっかりそれに騙される。
「お父様ということは公爵様がですか。それは大変です。今すぐに医者を呼んで参ります」
メイドは慌てて医務室に医者を呼びに走った。
それを眺めながらマリアンヌはまたニヤリと笑った。
――――――――――――
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