第11話 クッキー・ペパーミント=ウイスキー公爵令嬢の一日 ①

【クッキーside】


「クッキー様、まだ勉強は始まったばかりですよ !

 貴女は、これから公爵令嬢に成られるのですから、いつまでも平民のつもりでは困ります !

 良いですか、貴族令嬢と云う者は…………


 ローデンマイヤーさんの説教が続いているわ。

 好きで公爵令嬢に成った訳でも無いのに、昔の頃みたいにけっこやスキップをしたら怒られてしまうなんて、貴族なんて成りたくなかったわ !


 私が ウイスキー公爵の元に行く時に、教育係としてローデンマイヤーさんが付いて来た。

 なんでも、

『これから貴族の常識や礼儀作法を覚えるのにローデンマイヤーさん以外に考えられない』

 とのことで、イライザが強力に推して来たの。


 イライザ……友達に成ったと思っていたのにひどいわ !


「クッキーが、1人前の貴族令嬢に成って逢えるのを楽しみにしているわ ! 」


 なんて言っていたけど、私には判る!


 厄介払い出来たとローデンマイヤーをクッキーに押し付けたと喜んでいるに違いないわ !


 孤児院時代からの友達であるシエスタは、アルフォンスと一緒にアーレンバッハ学園に行ってしまうしメイド仲間だったパティとも別れて退屈で仕方がないわ。


 来年には学園に行って勉強をするなんて嫌だけど、新しい友達が出来るかも知れないのは魅力的だわ。

 孤児院時代に養子に行ってしまった、ベティ……今は、私と同じ貴族に成ったんだから逢えるよね。


 ベティの本当の名前は、ベアトリスだからベティと愛称を付けたのだけど、本人以外は呆れていたわ。

 孤児時代の名前は、ベアトリス=モスコミュール

 私と同じ騎士爵の娘だったけど、ウオッカ侯爵の養子に成ったから、ベアトリス・モスコミュール=ウオッカなのね。

 成人したら、私の『ペパーミント』やベティの『モスコミュール』は失くなってしまうのがさみしいけど、こんな時だからこそ、笑おうと思うの。

 泣きべそなんて、お母さんが亡くなった時に、サヨナラしたわ。



 ……クッキー様、クッキー様、私の言うことを聞いておられるのですか ?

 だいたい、貴女様は メイド時代から人の言う事を聞いていませんでしたね。

 私も貴女様が憎くて、こんな事を話しているのでは無いのですよ !

 貴女様の事を思えばこそ、…………」


 ウヘェ、ローデンマイヤーさんの説教の無限ループに入ってしまった。

 シエスタが居れば、上手く回避出来たのに私だけでは逃げられない。

 頭の中を空っぽにして、何とかやり過ごしたわ。



 ♟♞♝♜♛♚


 夜に成り、貴族の勉強を終えた私は、ぐったりしたわ。

 明日は、ダンスのレッスンに礼儀作法の勉強と、やることがいっぱいいっぱいある。

 孤児院時代には お貴族様って、美味しい食べ物を沢山食べて、綺麗な服を着て、威張り散らしているイメージだったけど、貴族って大変だったんだね。


 今度、シエスタに逢った時には教えてあげよう。

 したら大変だよ って !

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る