第5話 破滅フラグを叩き折ります。 ④

【シエスタside】


 戦闘メイド……あまりにもチープ過ぎて、底辺作者ルシアンの小説を読んだ時には笑い飛ばしていましたが、自分に降りかかると成ると別問題です。

 このバーボン伯爵家に引き取られる前から騎士爵の娘として鍛えられていた私は、そのままアルフォンス様を護る盾、剣として訓練してきました。

 まあ、記憶を取り戻したのは訓練中の事故に寄るものでしたが、今は記憶を取り戻して良かったと思います。

 でなければ、私はアルフォンス様と共に……


 くわばら、くわばら、冗談ではありません !



 キャスバル様が、やって来ました。

 どうやら、護衛のガルーダ隊長は真面目に仕事をしているようですね。

 キャスバルは、単独でクマを狩って良い処をクッキーやイライザお嬢様に見せたいのでしょうね。

 現実問題として、元騎士爵の娘とは云え孤児であるクッキーはキャスバル様の奥様には成れ無いのです。

 ならば、イライザお嬢様を妻に娶り、お付きとして来たクッキーを愛人にすれば良いのです。


 ザワ ザワ ザワ ザワ ザワ


 別に、カ◌ジの効果音ではありません。

 クマ…………を装った、敵対勢力のライムラテ公爵の手の者が来たようです。


「誰だ !」


 暗殺者としては三流ですね。


 静かにしないと、ますよ !


 もちろん、声に出したりはしません。

 敵は三人、ウチ二人はクマの剥製を運んでいるようです。

 あの剥製で偽装するつもりなのでしょう。

 本来は風下に立ち気配を消すのですが、今回は理由があり風上に立っています。


「何だ、只のメイドじゃないか ! 」


「見られたからには帰す訳には行か無いな。

 運が悪かったな、お嬢ちゃん ! 」


「俺達の玩具にして大事にしてやるから安心しな ! 」


「「「ギャハハハハハハ ! 」」」


 まだ、冬だと云うのに、野太いオッサンボイスが暑苦しく感じるのは気のせいでは無いですね。

 いい年をしたオッサンの下品な発言は大変に不愉快です。

 動物園のゴリラの方が、よっぽど紳士的に見えます。

 精神的苦痛に対して損害賠償請求をしたいのですが、相手のライムラテ公爵が払うとは思えません。


 無駄な時間は嫌いなのですが、そろそろでしょうか。


「れ、れ、れ、しびれて身体が思うように動かないぞ 」


おみゃあーお前なにゅをした何をした ? 」


「只のメイドじゃ無いな、名を名乗れ ! 」


「嫌です、私の名前が汚れます !

 慰謝料を払ってくれたら考えても良いですよ 」


 いいように痺れ薬が効いたようですね。

 無味無臭の特製痺れ薬をご馳走してあげました。


 出来れば触れたくは無いのですが、三人を縛り上げてから仲間に合図をする為に通信魔法を入れました。

 ここから先は仲間の仕事です。


 さて、私はお屋敷に帰ってアルフォンス様のお守りをしましょうか。

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