第2話 進藤竜二

「システム技術課の人って、難しそうですよね」


完全に奈津美の勝手なイメージ。


「あいつら、本当に嫌いよ。美味しい仕事だけとって、メールの文章は長いし、小うるさいのよね」


「わかる!」




同期のよしみで、はじめてなのに、奈津美に気軽に話してしまう。


奈津美も、珍しく女友達が出来たようで楽しかった。


(サーバー、ね。いい情報かも)




そして、遠くから、きゃーっと黄色い悲鳴が聞こえた。


振り向くと、女子の固まりが出来ていた。




なんだろう・・?




そこには、進藤竜二がいた。


奈津美は固まる。


絶対に見つかりたくない。


少しでも動けば見つかる気がして、頭を向けて動かないようにする。




「進藤さんって、一途!」


「結婚するのは初恋の人がいいんですって!」




お願いだから、同姓同名の別人であってほしい。


このまま、騒いでるのを煙幕にして、一刻も早く立ち去ろうと思い、


「由美さん、ごめん今日はありがとう、また社内で会ったらよろしくね」




そう言って、足早に会場を去り、トイレに行く。


そして、トイレから出た狭い廊下で、ばったり進藤竜二ウィズ取り巻きと出くわす。




竜二と奈津美はばっちり目が合う。


奈津美は息が止まった。




竜二は奈津美を見て、大きく目を見開く。




(そうだ、向こうは私の名前を知らない)




「山下・・?」


「っ人違いです」


地面を見て、さっさとすれ違い、通り抜ける。




「待て」


手首を捕まれる。




思いっきり手を振りきり、顔を出来るだけそらして、走って去った。


(これじゃ、山下奈津美です、と言ってるようなもの。最悪だ)




その日は、奈津美はあまり眠ることが出来なかった。




そして、次の日、奈津美には、もっと最悪なことが起こる。




「監査部に配属になった進藤竜二くんだ。


情報漏えいの件で、私のところの人事部から応援に来てくれた。


しばらくは山下さんの相方になるからよろしく。」




行成さんと進藤竜二が、総務第三課にあいさつに来た。




進藤は、ニイッと笑って一礼した。


「山下さん、よろしく」




(ああ、また私、いじめられるんだ)


奈津美は、心の中で、つーっと一筋、涙を流した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る