第9話 チャンネル登録者10万人突破記念②

 我が思いっ切り剣を振り落とすと、膨大な魔性を持った魔力が剣から全方位に向かって放たれる。

 そしてその魔力に少しでも触れたものは途端にパッと灰も残らず消滅していく。

 この剣技のお陰で数百体いたモンスターが僅か1、2秒足らずで綺麗サッパリ居なくなった。


「ふぅ……スッキリした。やはり大技ブッパなすのが1番爽快であるな」


《え?》

《ん?》

《はい?》

《ほわい?》

《えーと、うん?》

《何があったですと?》

《理解不能》

《優真様……かっこいい……!!》

《ヤバい……完全に惚れたんだけど》

《いやそんな事言う前に何だよこれえええええええ!?》

《幾ら何でもこれはおかしいよなあああああ!?》


「むっ、おかしいとは何だおかしいとは。これは我が勇者から教わった剣技を我独自のものに作り変えた、言わば前世の我の集大成の技の1つであるぞ!」


《だからそれがおかしいって言ってんだよおおおおおおお!!》

《なんでこんな雑魚ダンジョンでそんあ大技ブッパなすの!?》

《どう考えてもオーバキルでは!?》

《お姉ちゃんもやりすぎだと思うの。モンスターに八つ当たりなんて可哀想じゃない!!》


 こ、このブラコンが……誰のせいでこれほど怒りが溜まっているのか分かっておらぬのか!?


「――姉は黙っているのだ。取り敢えず今日はもうコメントするでない。次したら1ヶ月は口を聞いてやらん」


《えええええええええ!? そんな横暴な!!》

《いや、今回はお姉様の負けだな》

《うん》

《だって完全に原因はお姉様だし》

《まぁBANされなかっただけマシだよな》

《どんまいお姉様》

《どんまいお姉様》

《どんまいお姉様》


 ふっ、どうやら今回は我の味方をしてくれるそうだ。

 今にも悔しそうな顔が目に浮かぶ。

 

「では姉の邪魔も入らなくなった事だ。これからオークエンペラーを探してゆこうと思う。何、魔術を使えば僅かな時間で見つけられる」


《おお!!》

《やっぱり闇雲じゃないんだね》

《大体の配信者って闇雲だよね?》

《まぁ探知系のスキルってレアだしな》

《その分探す時間が暇になることが殆ど》

《暇じゃないのってそれこそ超人気配信者達だけだよな》

《でも社畜魔王はそれを全てすっ飛ばす》

《正に神!!》

《社畜には時短が必須なんだよ!!》

《社畜魔王なだけあるな》


 我は瞬時に【精密探知】を発動してオークエンペラーの位置を特定する。

  

 ふむ……どうやらこのダンジョンには3体のオークエンペラーが居るようだ。

 これは非常にラッキーであるな。


「――見つけたぞ。ここから我の足で5秒ほどか……近いな」


《いや見つけるの早!?》

《有言実行》

《社畜魔王の5秒……一般人の20分説》

《全然あるww》

《なんならもっと遅いかもしれんww》

《因みにどのくらい離れているのですか?》


「大体10キロメートルであるな。どうだ? 本当に近いであろう?」


《うんよく分かった》

《社畜魔王が如何に規格外だってことがな》

《一体どんな足してんだよww》

《えっと……秒速2キロ?》

《ん??》

《いやおかしくね? 走るんだよな?》

《1秒でどうやって2キロ進むんだよ》

《流石優真様!!》

《いや流石だけど流石じゃないんだよ!?》

《これは再び神パッドの登場だな》

《あー全く揺れずに物凄い速度でも撮れる社畜魔王専用機材な》

《もうその文字の羅列だけで凄そうに見えるww》

《売ったら一体どれくらいになるのかな?》


「別に売った所で5万円になるかすら怪しいぞ? 我が【浮遊魔術】で操作しているだけで本体はただのタブレットであるからな」


 そのため勿論我が居なければ何処にでもあるただのタブレットだ。

 こんなものに値打ちなど付くはずもない。

 

《あ、そうなんだ》

《何となくそんな気はしてた》

《もう驚かないぞ》

《まだ行かなくて大丈夫なのですか? 逃げられるかも……》


「む。それもそうであるな。では―――行くぞ」


 我は全力で地面を蹴った。


《……地面が爆発した件について》

《原因―――社畜魔王の踏み込み》

《もう全てがおかしいww》

《流石優真様!! そこらの者とは次元が違いますね!!》

《……俺A級探索者辞めよう……地元に帰って楽しく農作業をするんだ》

《まさかの上位プレイヤーの辞職》

《才能の差を見せつけられたか》

《まぁ落ち込むなって。社畜魔王がおかしいだけだから》


 その数日後、とあるA級探索者が皆に惜しまれながら引退し、長く付き合っていた恋人と晴れて結婚したとか。






「―――見つけた」


 我がピッタリ5秒で着いた場所には、大量のオーク、オークジェネラル、オーククイーン、オークキングが待ち構えていた。

 そして1番後方には、巨大なオーガのような筋肉をもった一体のオークエンペラーがふんぞり返っている。


「ふむ……これは少々面倒であるな」


 流石に千体程の相手をするのは嫌なので、少しリミッター・・・・・・・外すことにする。

 すると可視化出来る強大で恐怖すら感じる魔力が我の体から一瞬だけ吹き出したかと思うと直ぐに己の体へと呑まれてゆく。

 しかし我の周りはどんどんと黒く侵食される。


《何だこれ……俺は夢でも見てんのか?》

《真っ黒なオーラみたいなのが見えるんですけど》

《これは……イギリスのSS級探索者のスキルの【魔力掌握】!?》

《?? 何だよ魔力掌握って》


「それには我が応えてやろう。魔力掌握は己の魔力に振れた自然の魔力を瞬時に己のものとする技術である。その魔力空間内では好きなように魔術が使え、減っても無限に増えてゆくのだ」


《……無敵すぎじゃん》

《社畜魔王が無限魔力を手に入れたらもはやどんなモンスターも相手にならんだろ》

《それな》

《はい日本初のSS級キタアアアアアア!!》

《でも社畜魔王ってスキル使えないんだよな? 実際技術って言ってるし》

《もしかして修練で習得可能?》


「うむ。1000年に1人の天才と呼ばれた勇者が5年掛けて習得していたな。まぁ我もそれくらいは掛かったが」


《はい絶対に無理ー》

《スキルって偉大だよな》

《社畜魔王とか勇者で5年なら俺達じゃ何千年修練すれば良いんだよww》

《やっぱり現実は甘くねぇな》

《そう言えばめちゃくちゃオークが襲いかかって来そうだけど大丈夫なのか?》


 コメント欄の心配する声を聞いてふとオーク達の方を見てみると、確かに今にも襲いかかってきそうだった。

 と言うか既に何体かは襲いかかってきた。

 

 まぁそれがどうしたと言った感じだが。


「【多重結界】【接触爆破付与】」


 我はオークが近付いて来れないように何重もの薄い丸形の下級結界を張る。

 更にその結界の全てに付与魔術の爆破属性を付与する。

 そんな結界にオークが突撃してくるとどうなるかと言うと……


 ドドドドドドガアアアアアアンンン!!


 ―――ただひたすらに大爆発を起こす。


《うおおおおおおおお!!》

《ファイアあああああああああ!!》

《すげええええええええ!!》

《これだよこれ!! 俺はこれが見たかったんだよ!!》

《ふはははははははは!! まじもんのエ◯スプロー◯ョンだ!!》

《今日も楽しく爆破だあああああ!!》


「ふっふっふっ……ふはははははははは!! 物凄くスッキリするぞ! 我が姉よ! 

もう幾らでもコメント打って良いぞ!!」


《ほんと!?》

《いや出てくるの早くて草》

《流石ブラコン》

《優真!! こんな大爆発起こしたらオークエンペラーが死んじゃうとお姉ちゃんは思うな!!》

《…………あ》

《乙ww》

《おつかれ社畜魔王ww》

《又もやらかしたなww》

《wwww》


「あああああああああああああ!! また我はやってしまったのかあああああ!! もう今日は何時ものテンションじゃない気がするのであるッッ!! ―――がもう知らん!! それにまだ後2体居るからな! 今度こそ肉にしてやる!!」


 我は全速力で次のオークエンペラーの下に向かった。


《開き直ったww》

《頑張れ!!》

《これはマンネリコースか?》

《やっぱり社畜魔王の配信は全く怖くないなww》

《何か漫才見てる気分ww》

《それなww》

《そう言えば10万人突破おめでとう》

《おめでとう。まぁ既に25万人突破してるんだがww》

《同接もいつの間にか8万超えてる》

《おめでとう》

《おめでとう》

《おめでとう》

《はよスパチャ出来るようにして欲しい》

《それなww》



 結局その後20分かけて残り2匹はしっかりと肉になった。

 そしてその夜に親友とその家族を呼んだが食べきれなかったのは言うまでもないだろう。

 更に次の20万人突破記念に頭を悩ませたことも言うまでもない。


—————————————————————————

 フォローと☆よろしくお願いします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る