第7話 バズった影響
我は初配信を終えた後、空間魔術の【指定座標転移】でダンジョンの入り口に戻ったのだが……外には物凄い数のマスコミが押し寄せており、そこらのお祭りよりもぎゅうぎゅうだった気がする。
運良くダンジョン協会の職員が我を見つけて助けてくれたので良かったが、マスコミに見つかっていたとなるとゾッとするな。
その後はF級ライセンスを一気にB級ライセンスに昇格させてもらった。
何でも此処まで速い昇格は史上初だとか。
まぁ史上初とか言う肩書きには興味がないのだが、より高いランクのダンジョンに入れるのは良いことだ。
これで次の配信に悩まなくて済むからな。
ついでに言えば初配信から1日が経ったわけだが……現在チャンネル登録者が17万人まで爆上がりしていた。
それだけでなく、我がこの配信者となるために作ったツイッターのアカウントのフォロワーもいつの間にか15万人を突破していた。
朝チラッと見た時に驚いて魔力が漏れ出たのは仕方のないことだと思う。
かく言う我は現在、姉の
高校生にもなって姉と登校と言うのはどうかと思うのだが……
「どうしたの優真? もしかしてお姉ちゃんと手を繋ぎたくなったの?」
「繋ぐわけなかろうが! もう我は子供ではない!!」
「もうっ優真ったらひどいわ。お姉ちゃんの純情を弄ぶなんて……」
「弄んでなどおらぬわ!! いい加減我をからかうのは止めろ!」
「嫌よ。だって私優真の事大好きだもの。貴方は私の天使なの!」
「我は天使などではないッッ!!」
肝心の姉が世間で言う『ブラコン』と言った一種の性癖?なのだ。
別に
これが彼女なら良いのだが。
「ならお姉ちゃんをカノジョにする?」
「血の繋がった姉弟は結婚出来ないので却下だ。後しれっと我の心を読むでない」
我は付き合うなら結婚までしたいからな。
「むぅ……いけずー」
そう言ってジト目を向けてくる姉だが無視無視。
ここで突っ込んでも余計にからかわれるだけだからな。
「それにしても優真凄いわねぇ……一躍有名人じゃない」
「むっ……真由も見ていたのか?」
「だからお姉ちゃんと――」
「却下だ」
「……見ていたもん。だって可愛い弟の初配信だもの。見逃すなんてお姉ちゃんの名が廃るわ。開始1時間前からスタンバイしていたのよ」
「……何故我が配信者をすると知っているのだ……」
「勿論盗聴―――機なんて設置してないからね!」
「今日帰ったら部屋を隈無く掃除するとしよう」
全く何と言うものを我の部屋に設置しているのだ。
これ程ゾッとしたのは前世で魔神が求婚してきた時くらいだぞ。
我が恐ろしくなって腕を擦っていると、何時も以上に視線を集めていることに気付いた。
一体どうしたのだろうと思い、意識を集中させて、我に視線を向けている女子高生達の会話を盗み聞きしてみると……
「ねぇ……あれってウルガ様よね?」
「うん絶対にそう。あの制服も顔も昨日の配信と全く同じだもん」
「実物もやっぱり可愛いね」
「チャンネル登録した?」
「勿論よ。見た瞬間にしたわ」
「私も」
「だいたい、ビジュも良くてS級探索者並に強くてちょっとドジとか……ズルいわ」
「「うんほんとそれ」」
何が一体ズルいのだろうか?
我が言葉の意味が分からず首を傾げていると、今度は我の隣に居る姉に話題が移った。
「でもさ、ウルガ様の隣にいる女って……誰?」
「うーん……姉じゃない? だって顔似てるじゃん」
「あー確かに。顔立ちが結構似てるわね」
「でも近くない? あの女絶対にウルガ様の事好きよね。それも異性として」
「でもウルガ様が弟だったらって考えると仕方のないことだと思うよ」
「詳しいことは今日の配信で聞いてみましょう」
「そうね」
「出来れば自然にね」
……我が聞いている時点で自然を装って聞くことなど不可能なのであるが。
しかしこれからは姉との登校は避けたほうが良いかもしれぬな。
別に我が炎上するのは全然いいのだが、その矛先が姉に向かってはならない。
我はペラペラと中身のない話をしている姉を見ながら心に決めた。
学校に近付くと同じ学校の生徒が増えてくるのは必然的で、自分で言うのも何だが一躍有名人となってしまった我への視線が更に露骨なものに変わる。
更にはヒソヒソと我の事を話す人がたくさん居るので非常に居たたまれない。
我は視線の針のむしろとなりながらも教室に向かう。
姉と別れる時には、
「何かあったらお姉ちゃんに言うのよ? 例え授業中でも駆けつけるわ」
なんて言う頼もしい言葉を貰った。
我が呼べば本気で来そうなので絶対に呼ばないことを誓ったが。
我は深呼吸をして教室のドアを開ける。
「おは―――」
「おっ来たぞ!! 俺らのクラスの有名人が!!」
「ホントだ! 昨日の配信見たよ! めちゃくちゃ凄かったね!」
「う、うむ、ありが―――」
「俺も見た! めちゃくちゃ強いんだな優真って! どうやったらあんなに強くなれるんだ!?」
「それは私も思った」
「めちゃくちゃ楽しかったぞ! 思わずチャンネル登録とツイッターのフォローしてしまうくらいに」
「俺もした!」
「私も!」
朝の挨拶を言い終わる前にクラスメイトの友達に捕まってしまった。
これでも我は友達が多い方なので余計話しかけられてしまったのかもしれない。
有り難いことに、皆我の配信を見ていたようだ。
「み、皆一体どうやって我の配信を知ったのだ?」
我は何処の事務所又はクランにも所属していない個人勢として始めたので、初配信ともなると99%の者が知らないはずなのだが……。
「俺はツイッターの切り抜きから知ったぞ。勿論ちゃんとアーカイブも見たからな!」
「私はyourtubeのオススメで知ったよ。あの時は日本のダンジョン配信者の中で1番同接は多かったらしいから」
全体の意見を聞いてみると、比較的切り抜きから知ったと言う者が多かった。
「前から面白いやつだなぁと思っていたけど、思ったより凄い奴だったな!」
「今度一緒にパーティーしようぜ! お金は俺達が出すからよ!」
「勿論俺も出すぞ」
我の友達の中でも特に仲の良い、
彼等は我の親友と呼べる者達なのだが、何方も憎たらしいほどにイケメンなのだ。
それは見た目だけでなく中身も。
前世魔王だった我ですら警戒心が薄れてしまうほどに。
文也は名前によらずめちゃくちゃ活発的で運動神経抜群、その代わりに頭は悪くはないが良くはない。
一方で壮馬は運動も平均以上出来て頭もいい完璧人間だ。
そんな2人にお金を出すと言われるが、流石に申し訳ない。
「い、いやお金は我が―――」
「良いんだよ。いつかモンスターの肉を食わせてくれたら」
「そうだな。どうせならオークキングの肉が食いたいな」
「ふっ……結局それか。まぁいいぞ。我が食いきれないほど食わせてやる」
我がそう言うと2人はまるで子供のように飛び跳ねて喜んでいた。
ホント……この世界は幸せなことばかりだ。
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