MISSION:69 弱肉強食

 夕方近くになったので集合した僕たち。軽く報告会を開きながらクラサムに帰還するよ。


≪みんなどうだった? 僕、ハズレェ。マッスルバブーンと戦いたかった≫

「ウチもハズレじゃったぁ。ダイアウルフ群れちょらんのじゃもん」

「ゴブリン、コボルト、群、したぁ」

「それがしはオークとマッスルバブーンの群れでしたので当たりですな!」

≪いいなー!≫


 もちろんフーちゃんもワワンパァも羨ましがってるね。とはいっても、今日の獲物くらいだと、星なしの冒険者パーティでも倒せる魔物だからなあ。数が多くなければ問題はなさそう。


 多いから問題になってんだけど。コレはメンドクサイ案件なんじゃないかなあ?


 僕らは冒険者ギルドに魔物を卸して、小銭をゲットした。

 ゴブは角、コボは牙。錬金術の素材になるそうだよ。

 オークは魔石以外を丸っとお渡し。肉とか食べられるし骨も肥料になるそうだし。

 ダイアスパイダーも魔石以外をそのまま。外皮は硬いから農具とかに使えるみたい。中身は美味しいんだって。

 他の魔物は毛皮だけだね。肉は食べられなくはないって味みたいだし。


 合計で銅貨41枚、小銅貨62枚だった。魔石なしでの価格だからお安いんですって。エェ、99匹も倒して持って来たのにぃ……。

 僕らはホテルに戻ってお疲れさま会を開くことにしたよ。お風呂入って、晩ご飯食べて、オヤツをモグモグ。


≪なんかオイシクナイ魔物ばっかりだし、僕が間引きしておこうかなって思ってるんだけど≫

「うん、それいこと~」

「オイシイ匂いとは、いったいなんだったのでありましょうか」

「そりゃあ分からんのじゃけど。ウチぁねえ、ちょっと気になることがあるんよ」


 ワワンパァが言うには、ダイアウルフがソロ活動してるのが不自然なんだって。


「確かにそうでありますな……」

「だいたい下位クラスの魔物を、引き連れちょるはずなんじゃけどね」

「そうあるする、ね。魔狼、いないしたあ?」

「おらんかったよ」


 誰かがなにかを意図して、連れて来てるってことなんだろうか? 答えなんて出るはずもなく夜が明けた。


 明けたら答えが出てた。


<こちらAWACSエーワックスヘヴンアイズ。夜間のみダンジョンが出現した。繰り返す、ダンジョンの出現は夜間のみ! 魔物の増加はダンジョンからだね。放出してるのが原因みたい>


 そんなのアリなのかYO!


「オイシイ匂いでありますな? それがオイシイ匂いでありますな!」

「ダンジョンの中は強い魔物が、あふれちょるかもね」

「おー、パチパチパチィ~。望むするある!」


 AWACSが夜間にマジック・ディテクションで魔物探してたら、ダンジョンを発見したみたい。ダンジョンって24時間営業だと思い込んでたなあ。夜間だけとか飲み屋じゃん?


≪当然僕らが全部もらうよね?≫

「え!? 報告しないのですか?」

「もらうする~」

「ゥヒッ、このダンジョンも傘下に入れりゃあ儲かるけぇねぇヒヒヒ」

「おおっ、儲かるのでありますか! 御意に従いましょゥヌフフフ」


 お主ら悪よのぉ……。っていうか、なんてカワイイ悪い笑み。僕ぁ聞いたことないよ? カワイイ悪い笑みとかー。

 まあ仕方ないよね。この世は弱肉強食なんだから。


≪ジアッロ1よりAWACS。昼間にダンジョンへの出入りは可能?≫

<入口が閉ざされてるから分からないよ。壊してもいいなら試すけど>


 うーん、ダンジョンのステージ間の扉なんかは異空間への区切り。だから壊すと修繕されるまで通行不可になるって、ワワンパァから前に聞いた。


「ただの偽装じゃったら平気なんじゃけど、ダンジョンマスターの設定次第じゃしねえ」

「壊すない。正解」

「ですな。入口が開いたとしても、他冒険者に気取られる可能性が増えるでありますし」

≪じゃあマッピングを頼もう。僕らは食材の買い出しかな。ダンジョンの中で活動する必要があるよね≫

<OK。でもマッピングは時間欲しいかも。入口が12個もあるんだよね。それぞれが中で繋がってるかどうかも謎だしなあ。コアルームに行けないハズレステージ、って可能性もあったりしない?>


 しかしワワンパァが言うには、全ての場所からコアルームへ辿り着けるそうだ。遠いとか近いとかはあるけど、繋がってないとコアで操作不可能なんだって。

 とは言ってもなー、途中で合流しないで、コアルームへのルートが12個って可能性もある。1つずつ踏破していくほうが良さそうだね。


<了解。じゃあマッピングしつつ、ザコは処理しておくよ>


 今のところダンジョンの中は迷宮タイプと山岳タイプが半分ずつ。ステージがどれくらいあるかも分からないから、食料は余裕をもって購入しておこう。


 僕の形も貨物車型を作っておくべきかな。迷宮だと飛べないし、AWACSもエアタンカーも使い辛いからね。

 積載量の問題もあるし、フーちゃんには連結天道虫号を諦めてもらう方向で。


 ンー……迷宮の通路のサイズは分からないけど、ダイア系の魔物を放出してたんだから狭くはないと思う。だからといってバスとかトラックみたいな、長い車じゃあ曲がり角が苦しいかもだし──軽のSUVをいっぱい作ればいいかな。


「買い物行く、する~」

「調味料とフライパンと鍋と~、ナイフは必要ですな」

「肉や野菜も美味しいのを食べるなら必要じゃね」

≪フーちゃんとルァッコルォの分だけでいいし、たいした量でもないから何日か持つ分を買っちゃえばいいよね≫


 買い出しにシュッパーツ。感覚的には10時辺り。そのくらいに鳴る鐘の時間までは朝市が開かれてるので、新鮮な野菜とかも出てるはず。僕は知っているのだ。朝採れトウモロコシは美味いっていうことを。フッフッフ。


 軽SUVになった僕に、フーちゃんは文句がありそうだったけど、荷物運びに必要ということは分かってるみたいで、ワガママは言わなかった。それはいこと~。


 調味料は後回しにして、先に食材を求めて徘徊するよ。いい物なんて早い者勝ちだからね。いい物が分かるかどうかは別なんだけど。僕、ワカラナイ。僕、オマカセスル。

 迷いなく購入していくワワンパァとルァッコルォに、全部お任せです。


 ジャガイモ、トマト、トウモロコシ、キュウリっぽいの、キャベツっぽいのと、なんかいい匂いの葉っぱとキノコ類。魚介類は乾燥したもののみ。そして肉ブロック各種。主食はパン以外に、米とパスタもチョイスしたみたい。


「色々、食べる、嬉しいなるする~。グラタン、美味しそうあるした!」

「お待ちくだされフーちゃん。ダンジョンでグラタンは作りませんよ?」


 ガァァァンって顔になるフーちゃん。


「ありゃあ時間かかるけんねえ。宿で食べんさい」

「分かるしたぁ」

≪グラタンはロマンだもの≫

「食材はこんなものでいいでしょう」


 調味料はマヨがあったのでビックリした。やはり人類はどうしてもマヨに到達するのかもしれない。さすが人類の至宝。


≪そういえば調理器具は僕が変身すればいいのでは?≫

「火、弱いポーちゃん?」

≪料理するくらいの温度なら平気ー。だって飛んでる時は、結構熱くなってるはずだしさ≫

「じゃったらポーちゃんおったら火もいらんね」

「鍋はかさばりますからな。ポーちゃんが平気であるなら、それでいいかもしれませぬ」

「私、水出すするー」

「実はそれがしも出せます」


 でも水遁は苦手で生活用水しか出せないであります。ってしょげてるルァッコルォ。水遁のバフはどんなのか聞いてみたら、体力とか病気や毒の抵抗力を上げるんだって。体力と免疫力ってことか。


「なので素の体力を上げ申した」

「魔術には合う合わんがあるけんねえ」

「んっ。仕方ないあるする」


 おぅ……マナとオーラを混ぜられる人だけが魔法を使えるってのは知ってたけど、属性的にかな? 合うとか合わないとかもあるんだねえ。


「お昼はどうする? 屋台で食べるんか?」

「んーんっ、グラタン!」

「であるなら宿のレストランですな」

≪じゃあ戻ろっか。買い物も終わったしね≫


 フーちゃんは「あちゅいあちゅい」言いながらも、とても満足そうでした。

 かわいいいきものだった。

 僕たちPWR連合も、とても満足です!

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次回≪MISSION:70 良き明日のために≫に、ヘッドオン!


ダイアラットx7 銅貨7枚

ダイアスパイダーx4 銅貨8枚

ダイアウルフx6 銅貨6枚

ゴブリンx25 小銅貨25枚

コボルトx37 小銅貨37枚

オークx12 銅貨12枚

マッスルバブーンx8 銅貨8枚


食料+調味料=銀貨1枚、銅貨2枚

ランチ銅貨2枚


PWR連合

ポー、ワワンパァ、ルァッコルォ

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