第5話 冒険者登録

 最上階の待合室に案内され、そこの椅子に座らされた。

 アンティーク調の部屋の中には、古びた時計や蔦と絡まった机と椅子がある。自然豊かな場所であった。


「諸君、待たせたかね」


コツコツという足音ともに部屋の中に入ってきたのは…髭を生やし、褐色の肌に彩色豊かな服装をした人がやってきた。俺達は立ち上がると、その爺さんはこちらを見つめ。


「なあに、立つこともないわい。まあ初めての挨拶じゃから言うがわしの名は、ムーナム世界樹を守るフェル族の長でありつつ、この街では冒険者の長をやっておる」

(やっぱり思ってたけど、フェル族の長…長寿だと数百は超えてるとか聞いてるけど…年齢は聞かないでおこう)

「初めましてアーシュです」

「ブラストっす~」


 ブラストは、ちょっとおちょくるような感じで話す。

ムーナムは笑いつつ2人を座らせるように促す。

座るときにブラストに対して、小声で


「こっちでやるから、ブラストはちょっと黙っててね」

「人と話すの苦手だからな、頼んだわ」


というやり取りをした後座りムーナムを話し始める。


「さて、ミズガルズからの冒険者か」

「はい」

「ミズガルズから人が来るまであと1か月は掛かると思っていたが」

「えっと、もう少し遅かった方が? 」

「なあに、早く来てもらわんことには構わん」


ムーナムは笑いつつ真顔になり


「そなたらか。伝承を見つけた冒険者は」

(今はまだ正式な冒険者じゃないんだけど、世界樹を旅する人たちの総称を冒険者というんだったな)

「……、はい。とある世界樹の奥地にありました」


と答えるとムーナムはふむと


「……ふむ。世界樹マニアか。もしくは形象文字を読めたか」

「いや……、ミズガルズのおっさんにここにいけといわれて」


ムーナムは、一瞬大きく顎を開けて茫然としたがすぐに平然をと戻し


「なるほど、伝承は読めたのか」

「はい、伝承というより実際に現実にますけどね」

「ふぉふぉふぉ、その通りじゃよ……」


ムーナムは驚くような素振りはせず冷静になっている。

だが、目をぱちくりさせていることから驚いていることには変わりない。

(冷や汗かな、冒険者登録をしに来ただけなんだけど)


「では、本題に入るとしよう。君たちが伝承を見つけた件はおいといて。冒険者の長として……。そなたらの冒険者登録をする前にギルド名を決めてもらいたい」

「ギルド名……」

「そうギルドを決めぬ限り冒険者登録は完了せぬ」


俺は、思考を巡らせる。

(ギルド名…黄昏の幻想、新たなる旅路……。これは一種のステータスになる…。変な名前を付けないように気を付けないと)

ブラストは、ムーナムに告げた。


「ムーナムのおっさん、冒険者登録だけしてギルド名は一旦保留にしてくれないか」

「ふむ……、どうしてだ? 」

「大事だし、今は到着したばかりで疲れてるんだ。しっかり休んでギルドメンバーを集めた後に決めるってのは」


(ナイス、ブラスト)

ムーナムは後ろの翼を羽ばたかさせ、


「では、数日以内に来なさい。はじめのミッションを考えておく」

「あっはい」


 部屋の外に出て、そして俺達も続き出口へと向かう。

その後、その日は何処かの一般宿に泊まり夜を明かした。次の日の朝、宿屋を抜けメンバーを探すことに。広く複雑な道を通りながら、街の探索をもかねてだ。


 圧倒的な宿屋の数に冒険に出るであろう冒険者の数々。

 加えて、人々の移動が常に盛んであり、近くに魚が取れる湖や、何処かから移動してきたと思われる放牧場予定地等、1つの街にしては様々な要素溢れる場所へとなるらしく。

 中には、来客用のための準備なのか。遠方からの冒険者向けの飛空艇の発着場もあったりする。


「人の多さに街の広さ。こりゃあ、迷宮を探索してるより時間かかりそうだな」

「まあ、広すぎるもんね」


(街を探索し始めて3時間ほど、全体図が入ってこないのは仕方ないか)

「こりゃあ、人探すの……」


というときに、悲鳴が唐突に聞こえてきた。


「キャーーーーー」


さっと、聞くよりも早く足が出る。

(場所は、…声の場所からして近そうだな)


「先に行ってる」

「おい、アーシュ……はあ」


ブラスト自身は…、彼の事を誰よりもよく知っていた。

(あいつは悲鳴が聞こえたら誰よりも真っ先に辿りつくヒーロみたいなものだよな。罠だとしても、それ以外のものだとしても、それが誰かの救いになるならばと…。俺も見習わないとな)


 ブラストは、ため息をつきつつ悲鳴のあった場所を推定しアーシュとは違う道を通り始める。


 アーシュは、人々が多い道を通っていた。その際人が多いところは壁を走り抜け飛び人があまりいない場所に着地し再度走り始める。ブラストはというと、狭い道を止まることなくそして迷うことなく純粋に走っていた。

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