キャラクター造形が変化する時

 3話で本多忠勝討死と報告がなされますが、2話で特別な関係を築いたように見えた二人なのに、家康は結局、妻と子供に会いたいとしか頭にありません。

 少し考えればわかる筈の戦死した者の妻や子供たち、生きているものや、領民たちのことには何故か思い至らないのです。

 結局家臣の二人が織田につくようにと頼み込むのですが、それをあんな領民が見ている前で、やっている意味がわかりませんし、領民がアップになるところも意味がわかりません。

 私が領民なら、あー、この国終わったーと思う所です。どうして家臣団は、こんな主人公についていくのでしょうか?

 そして此処ではどうする?の問いに家康は明確には回答していません。ただ流されているだけです。

 本多忠勝の討死、その誤報シーンを入れるなら、それによって家康が深く後悔し、自らの責任を痛感し、死んでいったもの、その縁者、生きているもの、領民に思いを馳せ、自らの行動を変化させる。そのようにキャラクター造形が変化するべきでした。ですがここでは、主人公のキャラクター造形に変化は無かったのです


 にもかかわらず序盤に非常に強い恐怖を感じていたはずの信長に対して、4話で会った時は普通に会話ができてしまっていました。過去のトラウマを塗り替えるほどの何かは起きていません。

 これは、キャラクターによって物語が進展しているのではなく、物語の必要に応じてキャラクターが変化していることを示しています。

 このシーンでは信長と会話をする必要があるから、トラウマはなりを潜めるのです。

 これは良くないと思います。完成したキャラクターは物語で体験したことによる成長や変化によってのみ、造形が変わるべきです。

 場面の必要に応じてキャラクター造形を変えるべきではありません。キャラクター造形というものは物語の展開による影響を受けた結果、変化すべきなのです。

 場面の変化だけで何の影響も受けていないのにキャラクター造形が変わるのは奇妙です、

 そんなものはもう、同じ顔をしただけの別人を描いているといってもいい。

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