「――26 どっかそこらへんの適当なところにて」



【主な出演者】                                             

 わらわ




「くそっ、くそくそくそぉっ。ここに一斗缶があったら蹴っ飛ばしてやりたいキブンぢゃぞい。わらわに魔法が使えたなら無限の一斗缶を召喚して錬成して投影して創造して、片っ端からベキベキのボコボコのバキバキに蹴っ飛ばしてやるところを。駄目か、無理か。わらわにできるのは待つことと忘れることだけなのか? おとなしくしていれば、いつか白馬に乗った勇者サマが訪れて、わらわにとわの眠りを与えてくれるとでも? おいっ、聞こえているんぢゃろ。わらわの問いに応えよ。おまえのカアチャンでべそと一〇〇回ゆえばええのンか? それともごめんなさいを一〇〇〇〇回? まさか愛の告白が欲しいとほざきやがるのではあるまいなっ。よかるろ、わらわの愛を、そんなものがあるとすれば、だがッ、残らずすべて持ってゆくがよみ、魂ごとくれてやるっ、だから、こい! そんなところからふんぞりかえって高みの見物キメこんどらんで、わらわの前に、そのくたびれてみじめったらしい貧相な肢体を現しやがれ。きさまがどんなにくたびれてみじめったらしく貧相で底意地が悪く汚泥と悪徳と嘘にまみれていたとしてもわらわが愛してやる、わらわが祝福してやる、わらわが笑って認めてやる、そんなことできるわけないだろーって? できるとも。なぜならわらわは魔王だから、この身にできないことなど何もない。さあ、いでよ――」


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