第5話 王女ルナの恋 ④

 目の前にいるその人は、まるで別人だった。

 いつものどこか視線の定まらない、奇妙な表情と視線でルナを見て、

「僕の妹ルナだよね?」

と言う青年とは、別人だった。

 一心不乱に難解な本を読むその姿は、まるで瞑想をしている高僧の姿を思わせ、ルナは声をかけることをためらった。

  ルナは大尉から、

「今、診療室に行けば、おもしろいものが見れる」

と言われ、来たのだが、兄だと名乗るその青年のあまりに違う姿に驚いたのだった。


 青年が人の気配に気づき、顔をあげた。

 そしてルナと目が合った。

 しばらく頭をかしげ、不思議そうにルナを見ていたのだが、

「あなたは誰ですか?

 初めて会う方だと思うのですが・・・」

と、青年はルナに言った。

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