第5話 スライムでマッサージをします

「はぁ~……ご主人。とってもいいお湯でしたね」


「出てからもぽかぽかしてとても気持ちがいいです」


「体がほっとしていますね」


「頭もふわーっとして、いい心地です」


「あれ? ご主人?」



//SE ベッドに飛び込む音。ぼすん、という感じ。



「あ、ご主人……もうベッドに入っちゃったんですか?」


「もし眠りたいのでしたら止めないですが……」


「今から寝て、夜に起きて、お腹が空いてても何もないですからね?」


「あ……そうだ。ちょうどいいかもしれません」


「ご主人。体が温まっているうちに、マッサージをしてもいいでしょうか?」


「ぽかぽかしていると、きっとコリもほぐれやすいと思うんです」


「……ふふ、ありがとうございます♪」


「ではご主人はそちらでうつぶせのまま、ごろーんとしていてください」


「実は私、マッサージには自信があります」


「ご主人はご存じですか? 近頃では疲れを癒すため、スライムの素材を使ったマッサージグッズが流行っているんです」


「柔らかくて、肌触りも意外といい、なんて人気なんですよ」


「私がいなかったらご主人にもおすすめしていましたね」


「仲間の素材……ですか? いえ、全然気にしてないですよ」


「別に私たちの間で特別に仲間意識のようなものはありませんし、そもそもスライムは意思が薄いですから」


「私みたいにちゃんとはっきりものを考える個体はとても特殊です」


「つまり……気持ちいいものはどんどん使っちゃっていいんです」


「……えっと、何の話でしたっけ」


「そうだ。スライムはとてもマッサージに向いています、ということです」


「街にあるスライムマッサージグッズは自分で使うように作られています。ですが……」


「私はなんとスライムですから。そんなグッズなんて無くてもご主人のことを気持ちよくマッサージできちゃうんです」


「ご主人、準備はいいですか? ベッドの上にお邪魔しますね。失礼します……」



//SE ベッドへと上がる音。(布の擦れる感じの音)



「ご主人。背中の上を跨いで座っても平気ですか?」


「……ありがとうございます。では、そーっと……」


「…………ん」


「……お、重たくないですか……?」


「よ、余裕ですか。良かったです」


「ではもう少し体重をかけちゃいますね……えい、しょ……」


「……これで気持ちいいくらいですか。わかりました。では、これでやっちゃいます」


「肩の方からやっていきますね」


「スライムの手でぐーっと揉んでいきます」


「ぐー……っ もみ……もみ……えいしょ……」


「さっき体を洗っている時も思いましたけど、やっぱりすごい体が硬くなってますね……がちがちです」


「もみ……もみ。よいしょ……。肩の周りの筋肉をほぐして……」


「次に肩甲骨のあたりから背筋の筋肉を……手のひらで押していきます……」


「強張っているところを外に流すように……上から下に……」


「この、背中の真ん中あたりにある筋肉、右と左でありますよね」


「この辺りをほぐすと肩こりにいいみたいなので、ほぐしていきますね……」


「ぐぐー……っと。下……上も……えいしょ。えいしょ」


「どこで知ったのか……ですか。えっとこれは……いつかご主人にできたらいいなと思って、書店で調べていました」


「グッズにご主人を取られるのは嫌ですので……」


「……ご主人。にやにやしないでください」


「マッサージ止めちゃいますよ?」


「……はい、わかればいいんです」


「次は腰回りをやりましょうか。腰というより、お尻ですね」


「お尻のあたりもけっこう凝っていたりするんですよ」


「腰の痛みはお尻の凝りから来ていたり……ということで、手のひらで押していきます」


「ぐーーっ……っと。くすぐったいですか?」


「ぐりぐりぐりぐり……ふふ♪」


「足の方もやっていきますね」


「太ももからふくらはぎまで」


「コリを流すような感じで……えいしょ……えいしょ」


「体の筋肉をほぐして……ご主人の体をすっきりさせていきます……。えいしょ……。んー……っ」


「ほぐれましたか……? 足先も少し揉んでいきますね」


「ふふ♪ くすぐったいですね」


「慣れたらくすぐったさも無くなりますよ」


「ぐーっと押して……離して……ぐーっ、ぐっ、ぐっ……っと」


「……ふぅ。全体的にやりましたね」


「あ、ご主人……」


「寝ちゃってもいいですけど、ご飯の時は起きてくださいね……?」


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