第4話 人気上昇中

 最近、学校で視線を感じるようになった。探索者としてそれなりのレベルに達していると自負がある煉は、被害妄想ではなくしっかりと自身が見られている事がわかった。ただ憎しみや恨みの視線はほとんどなく、好意や興味の視線ばかりなので対応に窮していた。


「だから、順調に視聴者が増えてきてて、認知度が上がってるんでしょ。有名人が自分の学校にいたら見るでしょ? それと同じだよ」

「そんなものか? 意外と見られているんだな」

「そうそう。だからあんまり気にしなくていいんじゃない? ねぇ皆?」


 優弥がそう言ってクラスメイトに話し掛けると同意が得られる。


「ほらね。というか見られるだけで良かったじゃん。色んな人から声かけられたら煉、嫌だったでしょ?」「見られるのも良くはないが、まあ確かにそれよりは遥かにましだな」


  優弥の説明に納得し現状を受け入れる煉であった。


「そういえば煉。チャンネル広報用のSNSに幾つかのクランから勧誘が来てたよ」

「またか? 断っといてくれ。現状、気楽に攻略できるソロで満足している」

「了解。じゃあこのデータは編集して投稿しとくよ」

「ああ、頼む。…今から購買に行ってくるが何か買ってくるものあるか?」

「お弁当あるしいいよ」

「そうか」


 そう言って煉が教室から出ていく。教室は先ほどから静かであった。


「とまあこんな感じで煉はミーハー感情で近づくと結構危ないから気をつけてね」

「怖いよ優弥。動画みたいな動きできる奴の怒りが向けられたらおれ漏らす自信がある」

「ちょっと卓也。汚いからやめて」

「だ、だってよー」

「まあでも普通に接すると面白いし良い奴だから、普通の級友として接して上げて」

「「はーい」」


 優弥の尽力により煉の日常は守られていた。とはいえ煉を表舞台に引っ張り出したのも優弥であるためこれは彼自身が自分に課した仕事であった。


―――――――――――――――


 放課後、いつもならダンジョンに行くためとっとと帰る煉が珍しく残っていた。


「明日からの三連休、遠出して特級ダンジョンに行ってくるつもりだ」

「特級っていうと渋谷?」

「ああ。だから撮影はしなくていいか?」

「え、なんで?」

「いや、流石に特級ダンジョンで動画のネタを考えながら戦うのはめんどい」

「…なら無言でもいいから撮影だけしてきてくれない?」

「そんなんで何か動画になるのか? 前も言ったが攻略動画みたいにするのは止めてくれ」

「分かってるよ。折角の特級ダンジョンだし使えそうな部分があれば使いたいじゃん」

「わかった」


 煉曰く、趣味の範囲でやっている自分が教えられるのは小遣い稼ぎ感覚の初心者であり、生活を掛けて探索している人たちに向けて教えられることはないので、そう言ったコンセプトの動画を出すのは嫌だたのことであった。

 そのため特級ダンジョンでただただ煉が無言で攻略する映像の使いどころは無いように煉には思えた。とはいえ撮影するだけならば手間もないので、優弥のお願いを快く承諾するのだった。

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