未来の夢を見た。選ぶのは……

しろねこ。

第1話 婚約破棄

「ディアナ=マクライン、あなたとの婚約は破棄する!」

大声で宣言をしたのはこの国の王子シリウスだ。


(なんの話しかしら?)

ぼんやりとした意識がはっきりしていく。


今日は王立学園の卒業式だ。


式典も終わり、今は卒業パーティの最中である。


縁もたけなわという所で王子からの挨拶となり、開口一番でそんな事を言われる。


ディアナは何が何だか分からず、ただシリウスを見つめるばかりだ。


「そして俺はこのアリス=オルタナと結婚する。君の王太子妃に相応しくない態度、そして意地悪な性格にはほとほと愛想が尽きた」

シリウスはそう言って、隣りにいた女性の肩を抱き寄せる。


「わたくしが何故婚約者の座を降りなくてはならないのです? その女と結婚? 馬鹿げているわ」

声を荒げてそんな事をいう自分にディアナ自身驚いた。


これまでこんな怒鳴り声を上げた事もないし、そんな言葉を言うつもりはなかった。


口が勝手に動いたのだ。


アリスが怯えてしまいそれを見た彼の目が鋭くなる。


「彼女の魅力がわからないとは、君は本当に愚かだな」

シリウスはディアナを嘲笑う。


「あなたがシリウス様を誑かしたのね! 渡さないわ、彼はわたくしの物よ!」

激情に駆られ、ディアナはどこぞに隠し持っていた短剣を取り出してアリスに向かっていく。


(駄目よ、やめて!)

そう願うも体は止まらない。


「きゃあぁぁ!」

アリスを守ろうとシリウスが魔法を放った、鋭い風の刃がディアナを切り刻む。


痛みで意識が朦朧としてきた。


(わたくし、死んじゃうのね)

悲しく切なくなりながら、目を閉じる。


せめて、幸せになりたかった……。






「お嬢様、大丈夫ですか?!」

侍女のケイトの声にディアナは目を開けた。


「ケイト……」


「大丈夫ですか? 悲鳴が聞こえたので」

おろおろと言われ、ディアナは自分がベッドにいることに気づく。


「わたくし、生きているの?」

頬に伝う涙はあるが、傷はない。


「何かあったのでしょうか? まさか賊?!」

辺りをきょろきょろするケイトに声を掛ける。


「違うの、怖い夢を見たのよ」

少し時間が経ち落ち着いてくると、先程の光景は夢なのだと気づいた。


夢にしては妙にリアルだけど、あんなことが現実にあるわけない。


だって王子様と話をしたこともないし、学校にも通っていない。



自分はまだ十歳の子どもなのだから。











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