御伽話

ブラックマンバのやり方

大昔に浮袋を吐き出して準備をした

胃の底で泳ぐ金目鯛 打ち揚げられても美しいまま

死化粧なんて要らない 私の美しさはそのままで

誰も指図できない 興味がないから

棺ではなく鍋の中に 大きな目はもうすっかり白く濁っていて

まな板の上に散らばった鱗を眺めて

せっかく綺麗に生まれたのにと 恨めしげに

試験管の中に愛情は生まれないんだから

そっぽを向いている

頭上で笑っている声は私のことを一言二言褒めるとすぐに別の話をはじめてしまった

だったら同じくらい退屈な話をしてやろうと故郷の海底には重しを詰めた無数の浮袋が転がっているはずだ

と話したかったのだけれど

私の頭は胴体と切り離されていて もう思考するのは難しいよう


それはとてもシニカルで残酷な話だ

翌朝に彼らのお腹から吐き出されて水に流された先で彼女の体は他の誰かの体と混ざり合って溶け合いながら一緒くたにされて

その他大勢として簡単に片付けられて再び海へと流されてしまうだろうに

一昨日彼女を流したばかりの渦巻きの中を見つめながら

水溜りの中にすり潰された苺が浮かんでいる

あまりいい匂いはしない もう海に還ることはできない

蛇に両胸を噛ませて死ぬような勇気は私にはない 塩辛い真冬の水の底がお似合い

本当に? 頭痛のせいにして適当なことを言ってるんじゃない

読書をすれば頭が良くなると言われたけれど結局難しい言葉ばかりを使うようになるから人と話が合わなくなるのが正解

字が上手いことは恥ではないがあまりに達筆すぎるとそれは読まれることがなくなるし挙げ句書き直せと言われるだろう


あれ、教えてもらったこと全部uuuuuuuuuuuu嘘だったんじゃない?


あれれ


レバーを引くとジャーッと音を立てて消える

何もない白い陶器の底

辰砂の欠片は一片も残っていない

まだ大丈夫


それも全部uuuuuuuuuuuu嘘なんじゃない?

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