閑話 退魔師一家の家庭の事情(2)
下の弟くん。
名前は
私が高校一年生のときに生まれた子で、お父さんと同じく「見えない人たち」に嫌われる体質。
だけど何故か妖怪変化には好かれているという、ワケの判らない体質だ。
ナマハゲペアがデレッデレになるのも頷ける。
この子が生まれたときはお姉ちゃんが大学受験を控えていたし、お母さんも職場から「早く仕事に復帰しろ」ってパワハラ受けてて例の日弁連の会長な住職さんに相談してたりしていたから、私がちょくちょく面倒をみてた。
そして例によってお約束のように「いつ生んだの?」ってニヤ笑いされながら言われたし。
まぁ、そういうのは黙殺して一切リアクションしてやらなかったけどね。
でもそんなことをすれば「ノリが悪い」とか「心配してやっているのに」とか、自称な「親切な人」や「正義の味方」どもが色々言うワケで、そういうのに限って止せば良いのにSNSにそれを晒しちゃっていた。
私はそんなのに興味ないし、SNSでなに言われたって一切気にしないから放っておいたけど、自分のことのように激怒したお姉ちゃんが逆襲して、それをしたヤツらを暫くSNS恐怖症にしちゃったりしていた。
そのときのお姉ちゃん、物凄く生き生きしてて、
「
とか、とんでもないコト言い出してた。流石にそれは止めて、受験勉強に集中しろって物理的に言ったけど。
とはいえ、お姉ちゃんも出来る女だから受験勉強なんてしなくても、余裕で某有名国立大学に合格していたけどね。
その下の弟くんは上の弟くんほどではないにせよ、全てを平均以上に熟す器用な子。
でもなんか、みていると意図的に平均で止めているような気がするんだよね。
なんでそう思うのかって? 私が中学のときにそうだったから、なんとなく判るんだよ。
私の場合は、仲良くしたくない、というか話し掛けられるのもイヤな、幼馴染で大親友を自称するヤツと一緒の高校に行きたくないし勉強を教えてとか突撃されるのも迷惑で虫唾が走るから、あえてそいつより成績を下げていたんだけどね。
シゲくん(ウチではそう呼んでる)がどういう理由でそうしているかは判らないし、それが判っている我が家ではあえて理由にまで突っ込まないようにしている。
常に目立たないように行動しているようにも見えるから、単に悪目立ちして面倒臭くなるのがイヤなのかも知れないし。
というかウチの両親って、勉強しろとか一切言わない。ただ、困るのは自分だから~と言って笑ってる。
とはいえ、言われるまでもなく何でも出来る姉と弟二人は色々卒なく熟しているワケで。
私はやっぱり世の不条理と資質の格差を嘆きつつ、大学受験のとき上の弟くんに家庭教師をして貰っていた。
お爺ちゃん。
名前は
でも〝世界統合〟の影響なのか、更に若々しくなっていたりする。
まぁ本人はあんまりその自覚はないようで、あるとすれば「腰と膝の調子が良い」とか言いながら、軽トラでウチの山へ「散歩」と称して出掛けて飼い犬と野山を駆け回り、山菜やらキノコやらを取ってきたり鹿や猪を獲って来たりしているんだけど……おかしいな、武器らしいのは鉈しか持ってないし、ほぼ無傷で獲って来ているんだけど。
お爺ちゃんは元々
その理由っていうのが、方術士は符を媒介にして式神を召喚するのが一般的なんだけど、お爺ちゃんは「符じゃなくてもいいだろ」と公言して木人形を使って召喚していたそうで、更には「金属もいける」とばかりに鉄製の式神も召喚しちゃって、しまいには何処から手に入れたのかタングステン製の式神まで召喚しちゃって、方術士協会から異端認定されたんだって。
でもそんなとき、名前は知らないけど火を吐く狐の妖怪の封印が解けちゃって、その再封印のために全国の方術士が召喚されたんだけど、そもそも能力が減衰している現代の方術士にそれが出来る筈もなく、あわや全滅となったときに、お爺ちゃんとお婆ちゃんが駆けつけたそうだ。
異端認定されたとしてもお爺ちゃんは優秀な方術士なわけで、協会のお偉いさんは再封印を依頼したんだけど、お爺ちゃんったら、
「別に、倒してしまっても構わないのだろう?」
と、イケボなキメ顔で言っちゃって、そのタングステン製の式神〝
そりゃあまぁ、そんな素材なんだから一般的な火しか吐かない妖怪のそれなんか効かないよね。融点が3500度を超えてるんだもん。
あととある理由から、その式神が派手に帯電していて
それがあってからますます異端視されちゃったお爺ちゃんなんだけど、当時のお爺ちゃんはそんなの一切気にせずに、粛々と真面目に仕事を
その分出世も出来なかったみたいだけどね。
ちなみにその〝
ああ、あと顔だけ白いけど全身金色に見える綺麗な野生の狐が何故か懐いていて、お爺ちゃんは「カレーが好きなんだー」って言いながらレトルトカレーをよくあげている。
野生動物にカレーあげて大丈夫なんだろうか?
というか、何故かお爺ちゃん以上に私が懐かれているんだけど。
お婆ちゃん。
名前は
あ、ちなみにお爺ちゃんもお婆ちゃんも、白髪なんて一切ない。
毎日20キロメートルのジョギングをしているパワフルなお婆ちゃん。
もっともそれは〝世界統合〟前の習慣で、最近はどんどん距離が伸びているのに経過時間が同じだという謎の事象が生じていたりする。
昔はお爺ちゃんと一緒に妖怪変化を退治してまわっていたそうで、なんでも
でもそれって、身体に良くないような気がするんだけど大丈夫なのかな。
あと庭でBBQするときに、なんか人型のなにかで着火するときがある。
〝
あと、「おはぎ」をあくまでも「ぼたもち」と言い張っている。春か秋かの時期が違うだけで一緒だから、別に構わないんだけどね。どっちも一緒で美味しいし。
飼い犬くん。
名前はアスター。真っ白い秋田犬。ちなみに読みは「あきたけん」ではなく「あきたいぬ」。知らない人が意外と多いから、参考までに。
そして命名はお父さんで、なんでも元ネタはゾロアスターだとか。各方面に怒られそうだよ。
それはさておき。
凄く賢い子で、空気は読めるし気遣いは出来るという、盲導犬も真っ青でその辺にいるデリカシー概念皆無なジジイババアに見習えと言いたくなるほど優秀。
ただあまりに優秀過ぎて、お手とか伏せとかのコマンドには反応しない。フツーに会話が通じるから、ぶっちゃけそんなのは必要ないし。
あと霊感があるみたいで、私が高校生のときに色々守ってくれていたっぽくて、たまーに
それから、実は年齢が二五歳なんだよね。フツーに一般的な犬の寿命を余裕で超えているんだけど、これはきっと突っ込んだら負けなヤツだと私は勝手に思っている。なにと戦っているのかは、我ながら不明だけど。
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