第3話  メインウェポン

 この世には魔力があふれている。魔力は魔法の源であり通常人間はその力を有してはいないが


 時が経つにつれ魔力を持った人間が現れ魔法使いという職業をはじめ僧侶(アコライト)や魔術師(ウィザード)などの架空(フィクション)と思われていた様々な職業(ジョブ)が誕生し正に現代でファンタジーRPGのようなことが実現している。


 魔力適正のある人間は半々で魔力を持たない人間がいるのも事実。まあその一人が俺であり残念ながら特別とはいかなかった。だが

 魔力を持たない人間がウィザードになれないかと言われればそうではない。


 魔力に順応しアイテムが存在する時代。文明の利器たるコンピューターと魔道具を掛け合わせ魔石と術式演算機能を用いて開発された腕に装着するタイプの科学魔道具通称『MAG(マグ)』

 名称は魔導具の略称である『魔具』とマジックアームズガードナー(魔装甲)の頭文字を充てた代物だ。


 これはハンターに無料で提供されており魔力を持っていない人間が簡易な魔法を使うために造られたマジックアイテムであり

初期では大した魔法は使えないが高価なマジックアイテムをセットすることで容量(キャパ)が増設され使用できる魔法が増えて強く成るシステムとなっている。


ハンターならば誰でも持っているがハンターライセンスを持ちダンジョンへ行ける権利を持って初めて手に入れることのできる初期装備。


つまりまだゲームでくすぶっている俺の手元にはMAGは存在せずライセンスだってまだ持ってはいない。

それらを手に入れるためにはダンジョンへ行けるレベルとその試験がありそれをクリアしなければダンジョンに入る事すら許されない


 何故こんな制度ができたのか。答えは簡単だ。それほどダンジョンという場所は危険であり

 車や職人が免許を持つように『ライセンスを持たない人間がダンジョンに入ることを禁ずる』と新憲法にしるされている


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 ゲーム開始から4時間が経過しある程度ダンジョンの構造はつかめてきておりレベルも12と上がりその辺の雑魚程度なら簡単に倒せるほどのレベルとなった。


 俺の装備している武器は大剣であり本来なら大男でも苦労し振るえない武器ではあるがゲームやダンジョン内だけレベルの高さに応じ重量が大きい武器も俺でも振るうことができるシステムになっている。

俺が大剣を選んだのは趣味もあるが『武器適性が大剣であった』という事が要因である


 ゲートが現れレベルなどのゲームじみたことが起きてから人間の中で武器適正というスキルが覚醒していた。

それぞれにふさわしい武器が存在し逆に言えば適性の有無は自分で決められない。


弓を使いたくとも弓の適正ないし適正武器によっては装備ができない武器もまた存在し相性によって使えない武器がある。

なので自分の好きな武器であろうと武装できない人も多少存在し幸い俺は好きな武器の適性があった。


ちなみに大剣の場合遠距離武器が使えず最も相性が悪いのは銃であり魔法銃は俺には使えない仕様になっている。

魔法銃は使いたかったがそれはもうどうしようもない。

相性の有無は武器屋で適性検査が行われゲームを始める前に受けた結果が大剣だったという訳だ。


もっとも適性の高い武器は武器店『ギャリックス』にて売られており店長の真崎 雄二によってハンターは見定められそれに適したお眼鏡にかなう武器が提供される。というわけで


「店長ちわすー!」


「おお雄一君。こんにちわ。今日はどういったご用件かな?」


 武器店ギャリックスの扉を開き真崎さんに俺に合った武器を目利きを頼むことにした。

ギャリックスは魔力に満ちたいわゆる霊脈があるところに建っている。なので店内限定で魔法やスキル。

レベルが適応され常人より強い状態でいられる。

ギャリックスは初めて武器適正を見てもらった店でなじみ深い。


というか新宿で一番有名なのが好みでで初心者ハンターや熟練ハンターも行きつけの店として重宝されている


「いやーレベルも12になったんで俺に合う武器とか見繕ってもらえる時期かなーっと思ったんスよ~」


「ほう、もうレベル12とは早いねぇ…普通なら3ヵ月はかかるというのにねぇ」


 大して驚いた様子もなく何となく「君ならやるだろうな」みたいな納得を含めたおっとりとした返答。

三か月…そういやネットにそう書いてあったな…。

まだ俺は半日も経ってない。

といってもレベル20を5時間でこなした化け物もいるがそれにしたって俺SUGEEEEのかもしれない。

ちなみにその人の名は笠井 隆吾というプロハンターで現行ハンター1位の人なので比べるのはおこがましいが。

まあそれはそれとして


「てなわけで俺の武器作ってもらえませんかね!今日中にレベル20頑張るんで!!」


「はいはい、雄一君がそういうなら大丈夫そうだね。ちょっと待ってね、フーム…」


 マジックアイテム鑑定眼鏡をポケットから取り出し俺を覗き込み凝視する

 結構緊張するな…。一応こうされるのは事前に聞いていたが。採寸を図るようにくまなく俺の周囲を回り見定めている。そして1分たらずで


「ナルホドナルホド。君の適性は確か大剣だったね。だから必要なのは…」


 顎に手を当てながら店の奥へ歩いてゆき棚に置いてある大きな包みを手に持ち、それを俺の前に持ってきて包みを開ける。

その中身は漆黒の大剣で長さ4メートル。特殊な装飾はなく柄と刀身のみで構成されている単純構造の剣は驚くほどに壮観だ。


「これはどうかな?竜骨を芯に万古鋼を刀身に柄はアカシアの木を用いた大剣『愛染』」


 そういって超重量の大剣を軽々と持っている真崎さんは俺に大剣を手渡す。ちなみに真崎さんのレベルは50。

本人曰く『これが自分の限界』らしくハンターを退役し今の職に落ち着いたらしい。手渡された大剣を受け止める形で持ってみると


「おっと…」


 驚いた。重すぎて持てないことではない。

あまりに『軽すぎて』力加減のバランスがくるってしまい落としそうになる。・・・うん、まるで俺の手足のようだ。これが良い


「これを下さい。いくらでしょうか?」


「お金は要らないよ。若き冒険者へのサービスさ」


 と言ってもこんな高価そうなものタダで受け取れるはずはない。『俺には国からの給付金がある』から金には困っていないのだが…


「これは国の規約でね。誰に対しても無料で提供しているのさ。ハンターはいくらいてもいいからね」


 実際ハンターの功績は大きい。

20XX年の文明はマジックアイテムやモンスターによる産業革命の発展に貢献し今ではダンジョンなしでは社会やライフラインは維持できないほどの恩恵を得ている。紙幣価値とかどうなってんだとかまあよくわからんが。

つまり現在はハンターの収益で経済が成り立っている為にハンター激減を避けるための措置だろう


「ではありがたく頂戴します。今日はありがとうございました」


「じゃあ大剣はダンジョン運営に送っておくよ。」


「お願いします」


 流石に持って帰ることはできない。

この店を出た瞬間俺のレベルは1に下がり元の身体能力に戻ってしまうからだ。

なのでこれらの武器はダンジョン運営が預かることになっている。


現実世界に入った場合重くて持てないのもあるがレベルに分不相応の場合生体エネルギーを吸われ死亡してしまう為直接接触しない無機物に包んで運ぶかもしくは今みたいにワープ装置において装備を転移させるという方法が使われている。


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 店から出て深呼吸。防具については後日にしてもらった。というのも今回の件は俺の我ままだからだ。いち早く自分の専用武器が欲しいと少年なら誰しも思う事だろう。


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