銀花の奇跡
panda de pon
第1話
私の時間はあの奇跡のような白銀の世界で止まったままだ。
全てを雪が覆い隠してしまった。
彼を初めて見たのは高校の入学式から1ヶ月後の5月連休明け、彼は少し青白い顔で教壇に立ち挨拶した。
前日、担任から退院後、初登校の同級生情報を貰っていたので、皆自然と彼を迎え入れた。
「乾 碧です。よろしくお願いします。」
発した言葉に抑揚はなく無愛想で、私は全然『よろしく』じゃないじゃんっと心で笑った。ただ乾君の金髪に陽にあたりキラキラと耀いてとても綺麗だった。
そんな最初の印象とは異なり、彼はあっという間にクラスに溶けこんでいった。
体育こそ見学することが多かったが、勉強はギャップを感じさせず優秀だった。特に理系教科は学年でもトップクラスだ。
とても入院して遅れて入学したようには見えなかった。
男子達の笑顔の中心にはいつも乾君がいた。彼の話は面白く、笑い声が絶えなかった。女の子のファンもいたが、何故か彼が女の子と話す姿はあまり見なかった。遠ざけているようにすら感じた。実際、女子の告白に彼が頷くことは無かった。
そんなあるとき席替えで彼の斜め後の席になった。私は一番後ろの席だったので、どこか開放的な気持ちになっていた。しばらくして、ふと目の端に写る違和感に気付いた。それはいつも笑顔の乾君からは、想像もできないくらい寂しそうな表情だった。窓の外に視線をやるときに一瞬見せる寂しそうな彼の横顔、何故そんなに悲しそうのだろう。そんな彼が気になり、気が付くと彼を目で追っていた。
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