第32話 明生クン奪還

あんな事があった次の日だから、優子は会社に来るだろうか?と心配していたのだが、私が出社して部屋に入ると優子が両手に一杯の雑誌やら写真集を抱えてこちらに歩いてきた。


「あ、優子、おはよう」


「凛子ちゃん、おはよう」


「どうしたの?その荷物」


「これね、あけぼの飲料の広告でちょっと煮詰まっちゃってね、参考にしようと思って」


「そうなんだ。あー、あのさ、今日お昼一緒にどうかな?」


「うん、いいよ、どこ行く?」


「そうだなあ・・・歩くの面倒くさいから会社から近いとこがいいなあ・・・魚浜の昼定食とかでいい?」


「うん、じゃあお昼にね」


よし、昼食の時にハゲとメルティーが病院に現れて、子供の病気を治すハナシをしよう。

信じてもらえるといいけどなあ。

いや、信じないだろうなあ、こんな事言われたって信じるハズが無いよね。



そして昼休み。

私と優子は会社近くの居酒屋”魚浜”に居た。

この店は夕方からは居酒屋として営業しているが、11時から15時までは近くで働くサラリーマンやOL相手にランチ営業をしている。

小さい店だが安くて美味しい物を出すので結構人気がある店だ。

12時を過ぎると行列が出来てしまう時もあるので、私達は11時ちょっと過ぎに入店した。


「優子、ちょっと聞いて欲しい事があるんだ」


「何?相沢さんの件?」


「うん、まあちょっとは関係してるんだけど、相沢の事じゃなくて優子の子供、明生クンの件」


「え?明生の話?何?」


「昨日、ハゲの神様の話したよね?それでね・・・」


私はハゲに優子の子供の治療を頼んだ事や、ハゲとメルティーが病気を治すために深夜に病院へ現れる事を話した。

優子は運ばれて来たサバ味噌定食に箸も付けずに黙って聞いてくれていた。


「というワケなんだ。だから優子はもう子供の病気の心配をしなくていいんだよ」


「凛子ちゃん、ありがとね、私のために・・・でもね、もういいの。凛子ちゃんがそう言って一生懸命物語を想像して作ってくれて、私を慰めてくれようとしてるのは分かったから・・・本当に凛子ちゃんて優しいね」


あああ・・・

やぱり信じてもらえないか・・・

まあ仕方ないよね。

神様がいきなり病室に現れて、絶対に治らない病気をチャチャッと治してくれる・・・

今まで子供の病気のためにあんなにツラい思いをしてきたんだ、それがそんなに簡単に解決するなんて信じられるワケが無いよね。


「優子、私が今話した事って、空想や妄想じゃないんだよ、ほんっとのホントなんだよ、信じてもらえないのは分かるけどさ、私の頭が変になったとかじゃないから。ホントなんだよ!信じて!」


「う、うん・・・じゃあね、凛子ちゃんの言うように、深夜に神様?が明生の病気を治してくれたら、明日の朝には明生は普通に歩いたり話したり出来るってことだよね?」


「そうだね、そう言う事になるね」


「じゃあ明日にでも退院できるって事?」


「うん。でもね、いきなり明生クンが起き上がって歩き出したり、ペラペラ喋り出したりしたら大騒ぎになって、やれ検査だの何だのって事にるよね?そしたらあの病院からしばらくは出られなくなっちゃうでしょ?だからね、朝の回診とかが始まる前に病院を抜け出すのがいいと思うんだ。私も手伝うからさ、相沢の耳に入る前にあの病院から明生クンを連れて逃げ出そう!」


「凛子ちゃん、本気で言ってるの?本当に明生の病気が治ると思ってるの?」


「本気だよ。優子、もう一回言うけどさ、これは私の妄想や空想話じゃないから。本当の事なんだってば!」


「う、うん・・・」


「じゃあさ、明日の朝5時に病院の前で待ち合わせね、絶対に来てよ!もし優子が来なくても私一人で明生クンを連れて帰るから」


午後からは昨日やり残した仕事がてんこ盛りで、お茶を飲む暇さえない忙しさ。

と言うか、あのマグカップに毒を盛られたせいで給湯室へ行くのが心なしかちょっと怖くって、喉が渇いても我慢してたのだが・・・

そんなこんなで会社を出たのは19時過ぎ。

またいつもよりちょっと遅くなってしまった。

珍之助と美咲ちゃんは、今日も夕飯を食べないで私の帰りを待ってるのだろうか?


「ただいまー」


「りんこー、お帰りー」


いつものように美咲ちゃんがバタバタとリビングから走って来て出迎えてくれる。


「今日もちょっと遅くなっちゃった。あ、遅くなる時は連絡するって言ったのに忘れちゃったよ、ゴメン!もうお夕飯食べた?」


「うん、今日はねー、お客さんが来てるからねー、ネットでピザ注文して一緒に食べてるの」


「え?お客さん?」


玄関の隅にごついブーツが置いてある。ああ、この靴はたぶん岡島激斗の靴だ。


「お客さんって、ひょっとして岡島さん?」


「うん、岡島さんだよー」


リビングのカウンターで岡島激斗と珍之助がピザを頬張りながらタブレットを見ている。

はは~ん。岡島さん、美咲ちゃんに会いたくて来たんだな。

絶対そうに違いない。


「岡島さん、いらっしゃい!すいません、今日は仕事で遅くなっちゃって」


「あっ、い、いえいえ、俺の方こそ勝手に遊びに来ちゃってすいません」


「全然構わないですよー!岡島さんは珍之助君の友達ですから」


今日はアイパッチもしてないし、左手に包帯も巻いてない。

良かった、中二病の発作が起きてなくて。



私もピザを二切れほどつまみ、冷蔵庫にあった残り物のお惣菜とかを食べたらそれで満腹になってしまった。

岡島さんと珍之助、美咲ちゃんは相変わらずタブレットでアニメを見ている。君らホントにアニメが好きだよね。よく飽きないねぇ。


私はソファーの上で寝転びながら、明日の事を考えていた。

優子の子供を病院から連れ出すとしたら、私と優子だけじゃ不安だよなあ。

珍之助に手伝ってもらうか。あいつだったら子供を背負って歩くくらい何とも無いだろうし。


あ!

今日の夜って、珍之助の最終メンテじゃん!

夜12時から明日の正午までの12時間、EKMジェネレーターに珍之助を繋いでおかなくてはならない。

今回の作業で、珍之助は成長が止まって完全体となる。

その日が今日だったのだ。


ってコトは、明日は病院に珍之助を連れて行けないよな。

うわ~・・・困ったぞ!私と優子だけって、ちょっと心細いよ。

またまた面倒な事になってしまった。

こうなったら美咲ちゃんを連れてくか?

いや、万が一美咲ちゃんに何かあったら山下新之助に会わせる顔が無い。

どうしよっか・・・誰か居ないかなあ、子供をおぶって走ったりできそうなガタイのイイヤツ。



って、居るじゃん!

私の目の前で子供みたいにアニメ見てるK-1王者が居るじゃんか!

よし!岡島激斗に頼んでみよう!


「あの~、岡島さん」


「はい、何すか?」


「三人でお楽しみ中に申し訳ないんですけど、明日の午前中って言うか、早朝って空いてません?」


「明日ですか?午前中だったら空いてますけど、何か?」


「実は・・・・・」


私は岡島激斗に優子と優子の子供の事をざっくりと話した。相沢亮太の件は色々とヤバイので省いたのだが、『あの病院は相沢製薬の臨床実験場みたいになっていて、珍しい病気の優子の子供は被検体のような扱いを受けており、そのために病院側が子供の退院を許可しない。だから明日の早朝に無理やりにでも病院を抜け出す』と言う事にした。そしてそのために岡島激斗の助けが必要だと。


「さ、坂口さん、それって・・・大丈夫なんすか?お母さんと一緒とは言え、勝手に病院から連れ出しちゃったらマズイんじゃ・・・う~ん」


岡島激斗はどうやら「ヤバい事に首を突っ込みたくない」と言った感じだ。

まあ、そりゃそうだよね。何かあって事が大ぴらになったら、もはや結構な有名人の岡島激斗としては死活問題だ。

でももう時間が無い。

当てにしていた珍之助が行けなくなってしまった今、岡島激斗しか頼める相手が居ないのだ。

こうなったら仕方がない、ちょっと卑怯な手を使うか・・・


「ねえ、美咲ちゃん」


「なにー?」


「この前さ、私と珍之助と美咲ちゃんの三人でアニメ見たじゃん、何だっけアレ?えっと・・・あ、そうそう、”転生ネクロマンサー、異世界を救う”ってアニメ、覚えてる?」


「うん、面白かったねー」


「あのアニメでさ、ネクロマンサーが魔王にさらわれたエルフの子供を助けに行ったじゃん、あの時のネクロマンサー、カッコ良かったよね!」


「うん!カッコ良かった!」


「明日ね、岡島さんが悪い奴らにさらわれた子供を助けに行くんだって!ネクロマンサーみたいに」


「え~っ!ほんとぉ?岡島さん、かっこいいー!」


「さささ、坂口さん、ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいよ、俺はまだ何も言ってないっすよぉ!えぇ~、そんなぁ・・・」


いきなり振られて慌てる岡島激斗。でも明日はアンタの助けが必要なんだ。


「でもね、その子供が捕まってるトコは悪い奴がいっぱい居てね、とっても危険なんだ。それでも岡島さんは子供を助けに行くんだって!すごいよね~!だからさ、もし岡島さんが無事に子供を助けることが出来たらね、美咲ちゃんが岡島さんにご褒美のキスしてあげてくれないかなぁ~?」


「うん、いいよ!美咲、いーっぱいキスしてあげるっ!」


「えっ!?キ、キス?美咲ちゃんが?俺に?マジで?マジですか?」


はい、釣られたー。

岡島さん、アンタ顔が真っ赤だよ。

初めてラブレターをもらった小学生じゃないんだからさ、そんなに分かりやすい反応しなくても・・・

でもなんか、ちょっとカワイイよ。


「わっかりましたあ!俺で良ければ喜んで手伝いますよ!しっかしその病院ってひでぇなあ、マジでムカつくじゃないスか!よっしゃあ!久々に燃えて来たァ~っ!」


岡島激斗の正義感と単純な性格につけこんで手伝わせるのはちょっと気が引けたが、この際そんなこと気にしてられない。


「じゃあ明日の朝5時に京英女子大附属病院の前で待ち合わせですねっ!そんじゃ、俺は帰って明日のためにバッチリ眠っておきますんで!よっしゃああああ!やったるわ~!」


と、暑苦しい体育会系のテイストと、微妙な下心をまき散らしながら、岡島激斗は帰って行った。

マジ単純だけどイイ人だよな、岡島さんって。




そして翌朝の早朝・・・


私が京英女子大附属病院の前に到着すると、歩道脇に停まっていたSUVの窓が開き、運転席に座っている人から「坂口さん」と声を掛けられた。

声の主は岡島激斗。

やっぱり来てくれたんだ、良かった・・・


私は岡島激斗に勧められて助手席に座り、優子が来るのを待っていた。

そして約5分後、病院の角を曲がってこちらに歩いて来る見覚えのある人影・・・優子だ。

私の話を聞いても半信半疑な様子だったので、ひょっとしたら来ないかもと思っていたが、来てくれた。


私と岡島激斗はSUVを降り、優子の元へ駆け寄った。


「優子、来てくれたんだね、良かったぁ、もしかしたら来ないかもって心配しちゃったよ。それから、こちらが岡島激斗さん。今日、手伝ってもらえるように私が無理やり頼んだの」


「はじめましてっ、岡島ですっ!よろしくです」


「えっ!?岡島・・・激斗さん?え?何で?あ、あの、岡田優子です。今日はありがとうございます・・・」


そう言えば優子と岡島激斗は初対面だったな。でもいずれ”あけぼのエナジーZ”の広告の仕事で会うんだし・・・まあその件は後でゆっくり話せばいいか。


「じゃ、三人揃ったし、さっさと明生クンを連れて帰ろう!」


まだ夜明け前で人通りも無く、辺りは静まり返っている。

真っ暗な中、病院の救急外来入口の明かりだけが煌々と光っていた。


「優子、どこから小児病棟の中に入れるの?」


「正面玄関は閉まってて、救急外来は人が居るからちょっと入りにくいんだけどね、小児病棟の裏に非常用の出入口があるんだ。そこはいつも開いてるから、そこから入れるはずなんだけど・・・」


私達は駐車場の脇を抜けて中庭を通り、小児病棟の裏へ向かった。

恐らく監視カメラに私達の映像が捉えられていると思うが、ハゲがダミー映像を流しているから問題無いはず。


小児病棟の裏に周ると優子が言っていた通り、非常階段の下に金属製のドアがあった。

そのドアから建物の中に入ると病院独特の消毒液のような匂いが鼻をついた。


エレベーターに乗って8階へ行き、優子の子供が入院している810号室を目指す・・・が、その前にナースセンターの前を通らなければならない。

柱の陰からナースセンターを伺うと、当直と思われる若い女性の看護師がカウンターのPCの前で何か作業をしている。

私達三人が気づかれずに通るのは難しそうだ。マズいな・・・


「凛子ちゃん、岡島さん、あの看護師さん、私と顔見知りだから、私が看護師さんと話をして気を引いている間に二人はカウンターの下を姿勢を低くして通って」


「うん、分かった」


優子がナースセンターのカウンターへ向かうと、それに気づいた看護師が優子を呼び止めた。


「あれ?岡田さん、どうしたんですか?こんな時間に。今日って明生クンの病室に泊ったんですか?」


「うん、明生が寂しいって駄々をこねちゃってねー、仕方ないから今晩は一緒に居てあげたんだー。最近またワガママになってきちゃってねー」


私と岡島激斗は床を這うようにして優子の足元を通り過ぎる。

まるでメタルギアソリッドみたいだ。


「今日は院長先生が回診するので、7時頃検温に行きますねー」


「はーい、わかりました。夜勤大変ですよね、頑張ってくださいねー」


ちょっとヒヤヒヤしたが、見つからずに済んだみたいだ。優子、グッジョブ!


廊下の突き当りにある病室が、優子の子供が入院している810号室だ。

静かにドアを開けて中へ入る。

部屋の明かりをつけると個室の中央にあるベッドの中で、明生クンはすやすやと寝息をたてて眠っている。

ハゲとメルティーは本当に病気を治せたのだろうか?

もしも病気が治ってなかったら、私は優子と岡島激斗になんて言い訳したらいいのか・・・お願い、治っててくれ!


「明生、明生」


優子が声を掛けると、明生クンはゆっくりと目を開けた。


「明生?分かる?母さんよ、起きて」


明生クンはちょっと寝ぼけている様子で、優子の顔と病室の中をキョロキョロ見回している。


「お母さん・・・どうしたの?あれ?お母さん?」


「あ、明生・・・喋れるの?もう一回言ってみて、お母さんって、お母さんって言ってみて」


「お母さん・・・お、お母さん・・・あれ?僕、喋れるの?ちゃんと喋れる?お母さん・・・」


優子は思わず明生クンの身体を抱きしめた。

明生クンはまだ状況が理解できない様子で、キョトンとした表情のままボーっとしている。

そして優子は明生クンを抱きしめたまま、肩を震わせながら泣きだした。


ふと岡島激斗を見ると、仁王立ちの姿勢で顔を天井に向け、両手をギュッと握っている。そして両頬からボタボタと涙が滴り落ちている。

この人、メッチャ泣いてるじゃん。

そんな私も、思わず目から涙がポロポロこぼれた。


でもここでグズグズしているワケには行かない。

6時には監視カメラが正常な状態に戻ってしまう。その前にここを出なくてはならない。


「岡島さん、明生クンをおぶってもらえます?」


「了解!」


岡島激斗に明生クンをおぶってもらい、私達三人は病室を出た。

エレベーターに乗る前に、またあのナースセンターの前を通らなければならない。


「あのー、すいません、息子の投薬スケジュールを確認したいんですけどー」


「明生君の投薬スケジュールですねー。ちょっと待っててくださいね、今確認しますから」


優子がナースセンターの看護師に話しかけると、看護師はPCの画面を確認しはじめた。その隙に、私と明生クンを背負った岡島激斗がコソコソとカウンターの下を通り抜ける。


「明生君の投薬は・・・えー、今週は明日と明後日の二回ですねー」


「そうですか、分かりました。投薬の点滴、あの子嫌がるんですよねー」


「あ~、点滴って子供は嫌がりますよね、お母さん大変ですけど頑張ってくださいね、お大事に」


「はーい」


既にナースセンターの前をやり過ごして柱の陰に隠れていた私達の所に優子が合流した。

優子ってイザとなると結構機転が利くのね。

いつもはポワーンとしていて、天然入ってるの?って感じなのに。ちょっと意外だ。


私達はエレベーターで1階に下り、来た時のように裏口のドアから外に出た。

駐車場の脇を通って病院前の通りに出た時に時計を確認してみた。

時間は5時45分。

よし、監視カメラは問題無い。私達の姿は記録されていないはずだ。

優子がナースセンターで看護師と話している時の映像も残されていないはずだから、いくら看護師が「あの時優子と会話した」と言い張っても、その映像が無いので証拠にならない。


私達は路上駐車してある岡島激斗のSUVに乗り込んだ。

すぐに岡島が車を発進させ、武蔵小杉の優子の部屋へ向かう。


私は助手席の窓から明け方の東京の街並みを眺めていた。

カラス、いっぱい居るなあ…

後部座席では、優子が明生クンを愛おしそうに抱きしめていて、明生クンは優子の膝の上で眠っている。


良かった・・・

これで相沢亮太に対して負い目が無くなった。

何より明生クンの病気が治って本当に良かった。ハゲとメルティーにもお礼のメッセージを送っておこう。


Rinko-----

メルティー、明生君の病気を治してくれてありがとう。

ハゲにもお礼を言っておいてね。

二人は幸せそうです。


後部座席の優子と明生クンをこっそりとスマホのカメラで撮影して、それをLINEのメッセージに添付した。


まだ朝の渋滞前の時間なので道はかなり空いている。私達が乗った岡島激斗のSUVは、40分ほどで武蔵小杉の優子の家に到着した。

明生クンは、普段からリハビリ訓練をしているとは言え、全身の筋肉が衰えてしまっている。

岡島激斗に身体を支えてもらいながらゆっくりと車を降り、一歩一歩地面を確かめるように歩き出した。


「あの子、支えてもらってるけど自分で歩いてる。病院のリハビリ訓練ではあんなふうにゆっくりと足を動かす事もできなかったのに・・・それに、ちゃんと岡島さんの腕を掴んでる」


優子は目に涙を溜めながら、明生クンが一生懸命歩く姿を見ている。

私もまたもらい泣きしそうになった。


「ねえ、お母さん、僕はもう病院に居なくてもいいの?何でちゃんと喋れるのかなあ?変なの。足も手も背中も痛くないし、首も動くし・・・変なの!」


「明生、もう病気が悪くなる事はないの、もう病院で寝てなくてもいいし、車椅子を使わなくてもいいのよ、これから一生懸命訓練すれば、自分で走ったり、ジャンプしたり、何でも出来るようになるよ!」


「本当?僕、走れるようになる?もう点滴もしないの?寝てなくてもいいの?病院に居なくていい?」


「うん、明生は今日からお母さんと一緒に居るんだよ、もう病院に行かなくてもいいのよ」


「本当?ホントに本当?絶対?」


「本当だよ!」


嬉しそうな明生クンと優子を見ていると、また涙腺が崩壊しそうになる。と思っていると、すでに大崩壊してしまった岡島激斗はまたまた目を真っ赤にして涙をダラダラ流していた。


「明生クン、昨日の夜ね、何か変な事とか無かった?」


私はハゲとメルティーの事が気になって、明生クンに聞いてみた。何か覚えてるのだろうか?


「あのね、変な夢を見たよ」


「どんな夢?」


「ちっちゃいおじさんとね、キレイなお姉さんが僕の頭に手を当ててね、そしたらおじさんとお姉さんが光ってね、すごく眩しかったんだけど、ス~ッて身体が浮くみたいになって、気持ちよくなってまた寝ちゃったんだけど・・・そしたらお母さんが起こしてくれた」


やっぱりハゲとメルティー、来てくれたんだ!

それにしてもあいつらスゲェなあ。人間の力じゃ治せない病気をこんなに簡単に治しちゃうなんて。

天上人ってのは一体何なんだ?

でもハゲもメルティーも会社がどうとか、クビになっちゃうとか、妙に世知辛いコト言ってたよね。


まあ良く分からんが、取り合えず明生クンの病気が治って優子の元へ帰って来れたんだ。

ハゲ、メルティー、あんたら、マジ最高だよ!


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物語に登場するキャラクターをイメージして、AIを使用してキャラクター画像を作成いたしました。本編と併せてお楽しみいただければ幸いです。

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※あくまでも、作者の主観&好みです!


■坂口凛子

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■メルティー

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■岡田優子

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■美咲ちゃん

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■神様

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■珍之助

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■山下新之助

作成中


■岡島激斗

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