第52話 神々が見捨てた世界


「怖い…怖いなんて物じゃ無い…」


温厚で優しい話し方をしていたから、少し図に乗ったらこれだ。


余は『首と骨だけ』になり、死ぬのか…そう思ったら…一瞬で体を元に戻された。


『神』その存在の怖さと強さを初めて知った。


仕方ないだろう…今迄は『神』との交流など精々が『神託』が降りてくる位だ。


しかも、幾ら祈ろうが…『魔族側の勇者』は現れなく、過去にあの人形を送り込まれた…それだけだったのだが…


あの時の判断も間違っていた。


あの見た目も中身も恐ろしい人形を受け入れたら…今頃世界は魔族の物だったかも知れぬ。


だが、余を含め怖かったのだ。


魔王である余ですらあれを見た瞬間…気持ち悪さと怖さで鳥肌が立ち、夢でうなされる程だったのだ。


だが、あれは最強の『毒』だったのかも知れぬ。


恐怖を我慢すれば…全てが手に入る猛毒だったのだ。


だが…邪神様が引き連れて今度は来た。


もう、あの悍しい存在を受け入れるしかないのだ。


今、天秤は『死』か『受け入れ』それしか無いのだから…


だが、あの恐怖は…余や魔族の幹部クラスにのみ感じるようだ。


それ以外の者には恐怖は無く『得体の知れない不気味な者』で留まっているようだ。


それは魔力が弱い者になれば成程、恐怖は薄れているようで、下級魔族は普通に会話をしている。


あの2体の人形以上に怖いのは勿論、邪神瞳様だ。


あの方は『本物の化け物』だ。


余は魔王。


皆から良く化け物扱いされるが、瞳様は桁が違う。


良く、強さの単位を『ドラゴンとトカゲ』『ドラゴンとアリ』という対比で比べるがあの方の強さは『星に生きる全ての生物とアリ』その位余との力の差がある…いやそれ以上かも知れぬ。


もし本気で怒らせたら…世界はおろかこの星すら壊しかねない。


本当の所は解らないが…そう思えてならない位の気が流れておる。


もう終わった。


この邪神様が魔族についた時点で『未来永劫、魔族の勝利が決まった』


これで、もう魔王なんて必要ない。


魔族の未来永劫の勝利が今決まったのだから。


◆◆◆


「ふざけるな! 我々に感謝の祈りが届かないから可笑しいと思っていたら、人界に『邪神』が誕生しただと! 創造神ティオス…これは明らかな違反では無いか?」


「神は下の世界に関与してはならない。そう言う筈じゃない?」


「邪神自らが降臨したら、もういかな勇者でも太刀打ちできないでは無いですか…もうこの世界は終わってしまいます」


「確かに沢山の祝福を与えてはいたが…それは1人しか居ないのだから仕方ないと言える。しかも、それは今回1回だけでの話だ。ここ暫くの間、誰も邪神側に味方した召喚者は居なかった。更に言うなら…元は召喚呪文に邪神側は参加していない…ゆえに不公平とは言えぬ…不公平と言うなら『邪神側の方が不利』なのだ」


「ですが…これでは…」


「邪神側はたった1回のチャンスをものにしたに過ぎぬ。しかも、召喚した時は『邪神では無かったのだ』これは不公平とは言えぬ」



「「「「「「「「「「そんな…」」」」」」」」」」


勝ち目のない事を悟った神々は『異世界ブリエール』を見捨てる事にした。


自分達が顕現出来ない以上は…この世界を救う手立ては無いのだから。



※ そろそろ終わりが近いです

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